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2023.03.16

東急歌舞伎町タワーなどを手がける、今注目の建築家のアートを選ぶ基準

「アート」とひと口に言ってもその幅は広く、過去、現在、未来と続く、非常に奥深い世界だ。各界で活躍する仕事人たちはアートとともに生きることでいったい何を感じ、何を得ているのか。今回は、建築家・永山祐子氏の想いに迫る。【特集 アート2023】

建築家・永山祐子さんとアート作品(藤元明『Idolatry』)

光溢れるリビングに飾られるのは藤元明の作品『Idolatry』。都市の空きスペースをアート制作、発表の場にする「ソノ アイダ」プロジェクトでも活躍する作家は、永山氏の夫でもある。彼を通しアーティストの友人も増え、さまざまな作品に触れることでより購入意欲も上がったという。

「アートを湯水のように浴び、新たな表現を紡ぎ直す」建築家・永山祐子

「選ぶ時は、とにかく直感で好きかどうか。ひと目惚れも多いですね」

ドバイ国際展覧会日本館や、まもなくオープンする東急歌舞伎町タワーなどを手がけ、国内外で活躍する建築家の永山祐子氏。彼女がアートを選ぶ基準は至極明快だ。

約10年前に初めて購入したのが、ミルク色の光の中に鳥居が浮かぶ幻想的な川久保ジョイの写真作品。以来、角度を変えるごとに異なる表情をみせるレンチキュラー印刷を用いたラファエル・ローゼンダールや、2次元の写真表現の可能性を広げるNerhol(ネルホル)、樹脂の流れる一瞬を切り取る三塚新司、松宮硝子(しょうこ)の繊細なガラス作品など、ジャンルにこだわらず自分の直感を信じて作品を選んでいる。

ラファエル・ローゼンダール『Into Time 15 05 04(2015)』

ラファエル・ローゼンダールの作品に魅せられ、個展で出会ったのがこの作品『Into Time 15 05 04(2015)』(H165×W124.5㎝)だ。レンチキュラーという印刷技術を使い、見る角度によって絵柄が異なって見える。淡い色の重なりが移ろい変化し、多彩な表情に。©Rafaël Rozendaal Photo by Ken Kato Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art

Nerhol(ネルホル)の作品

飯田竜太と田中義久のふたりのユニット「Nerhol(ネルホル)」の作品。地形図のように薄いプリントが何層にも重ねられている。

自らリノベーションした自邸では、階段室は作品を飾るスペースにするためガラス張りにデザイン。現在は、福島の地中に埋めて残留放射能を受けたフィルムを現像し、現れる色をそのまま形にしたという川久保ジョイの作品が、モダンな室内に彩りを与えている。アートはインスピレーションの源だという。

「アイデアを練る段階では、建築関係よりアートの作品集などを見ます。アートを湯水のように浴び、触れたことによる新たな表現を私自身のなかで紡ぎ直すことで、建築にも新たな表情を与えられると思っています」

川久保ジョイの作品

アートを飾るためにガラス張りにした階段室。現在は川久保ジョイの作品を飾っているが、近々上で紹介したラファエル・ローゼンダールに取り替える予定。

束芋のリトグラフ作品『湯船に虎』

束芋(たばいも)のリトグラフ作品『湯船に虎』。

さまざまな作品を購入し、気づいたのは「アートを手に入れることは、表現する作家の考えを共有すること」という。

「だからこそ、アートを購入する意味がある。異なる視点を持つアートが、自分のリズムで暮らす日常にパラレルワールドを感じさせてくれる。アートという別世界と日常の共存が、生活に奥行きや豊かさを与えてくれるんです」

松宮硝子『DuquossomとDuqpore-small』

松宮硝子『DuquossomとDuqpore-small』。アートフェアで出会ったのが、この松宮硝子のガラス作品。「ナウシカの部屋にありそうな、不思議な植物のようなフォルムにひと目惚れしました」。リビングに差しこむ光が、繊細な触手に複雑なきらめきを与える。

鈴木隆志の連作

鈴木隆志の連作は、写真に透明樹脂を落とし、その隙間を消していく手法でつくられている。

そしてコレクターも、何を選ぶかがひとつの自己表現となっていると永山氏は言う。

「アーティストである夫の言葉を借りれば、“コレクターもアーティスト”。私の建築は光と反射をテーマにすることが多いんですが、コレクションを改めて見直せば、レンチキュラーやガラス作品、独特の手法でフィルムを感光する写真作品など、その多くが“光”につながっているんです。やはり自分らしい選び方だと思いました」

純粋な直感が作家の想いと結びつき、仕事に新たな表情を与えていく。アートは光を操る建築家に、これからも大きな刺激を与えるに違いない。

三塚新司の作品

三塚新司の作品はウレタンフォームに樹脂を流しかけコーティングと削りを繰り返し、滑らかな光沢をつくりだす。その他、事務所にも数々の作品が飾られる。

永山さんが幼少期に描いた絵

この作品は、なんと永山氏の娘さんが5歳の頃描いたもの。作家である父の手ほどきは受けず、自由に描いたそうだ。

 
【Collector’s File】
最近購入した美術品
ラファエル・ローゼンダールのレンチキュラー作品
現在注目しているアーティスト
佐々木類さん
アート購入の決め手
直感で好きだと感じること
一番最初に買ったアート
川久保ジョイさんの写真作品
アート作品の購入先
アートフェアや知り合いのギャラリー

建築家
永山祐子/Yuko Nagayama

1975年東京都生まれ。昭和女子大学生活科学部生活環境学科卒業後、青木淳建築計画事務所勤務。2002年に永山祐子建築設計を設立。2023年4月にオープンする東急歌舞伎町タワーや東京駅前に進行中のTorch Tower(低層部)も手がける。

▶︎▶︎画像だけをまとめて見る【建築家・永山祐子氏の貴重なアートコレクションを一挙公開!】

【特集 アート2023】

TEXT=牛丸由紀子

PHOTOGRAPH=古谷利幸

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