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2022.09.26

酒テロ動画「世界一のゆっけ」にハマる人続出! 「酒村ゆっけ、」を知ってるか?

YouTuber・酒村ゆっけ、が“ネオ無職”を名乗って発信するのは、酒を浴び、メシを食らう自らの日常を独自のワードセンスで語る動画の数々。チャンネル名は「世界一のゆっけ」。チャンネル登録者数は80.4万人(2022年9月現在)。自身の動画にとどまらず、書籍や音楽にまでそのフィールドを広げている彼女の実態に迫りたい。【特集 仕事に効くYouTube】

YouTuber・酒村ゆっけ、

滲んだ絵の具のような頭の中から、集中力を発揮するのが得意

“ネオ無職”を掲げる酒村ゆっけ、の動画がとにかく面白い。内容については、まずご覧いただくのが手っ取り早いかもしれない。ひたすらに酒や、ハイカロリーな食べ物を胃袋に流し込んでいくのだが、そこに自作の原稿をテロップ表示し、それをアテレコで読み上げるという独自のスタイル。

しかしながら、いわゆる“やさぐれ”独身女性というのではなく、「おっはモーニング」というゆるい挨拶から始まり、新手の食レポはポエトリーリーディングのような風情で、個性的なワードセンスも光る。それぞれの企画も多彩なうえ、BGMには、スーパーマーケットなどで耳にする「呼び込みくん」のサウンドを重ねており、そうしたジャンル不明の諸々が渾然一体となって生み出す独創性が人気のひとつとなっているようだ。

とにかく動画を見るだけでも、酒村ゆっけ、の日常は、気になることだらけである。

「新卒で就職した会社をわずか半年で辞めて無職になった私が、日記をつけるような感覚で始めたのが、この動画づくりでした。最初は、他者に何か伝えたいというよりも、自分のエゴというか、今のこの状態を記録として残しておこうという感じです。もともと文章を書くことが好きだったので、大好きなお酒との日々を動画とともに綴っていこうと始めました」

“ネオ無職”は、どのような想いから名乗り始めたのだろうか。

「就職していないけれど、文章を書いて動画を上げている。一概に無職とは言い切れないけれど、働いてるぞ、とも言えない。この状態をなんと表現したらいいか。悩んだ挙句、“ポスト◯◯”の意味を込めて“ネオ無職”と名付けました。活動の幅が広がるにつれ、ネオ無職のカバー範囲も広がっている気がします」

言語センスのキャッチーさも酒村ゆっけ、を彩るひとつの要素だろう。なんの気なしにTikTokから始めた動画制作も2022年現在で2年半を超える。驚くのは、その頻度。2日に1度は本編ないしはショート動画を上げるというハイペースぶりだ。

「自分のなかでは、これがやりたい、あれがやりたい、やらなくちゃいけない、間に合わないかもしれない、というような漠然とした“to do”があるんですが、ビジネスマンのようにアプリなどで管理しているわけではないので。その境界線が滲んだ絵の具のようになっています(笑)。何に追われているのかはわからないんですが、日々追われている感じですね。大体最初にやらなくちゃいけないものを最後に温存していて、どうでもいいことから着手してしまうんです」

混沌とした日常のなかで、それでも高頻度で動画をアップしているその原動力はどこにあるのか。いよいよ不思議になってくる。

「追い込まれたほうが集中力を発揮できるタイプですね。前日に動画制作を手伝ってくれている妹が予告を出すので、最後の一線は守ると。なんとか投稿の締め切りだけは間に合わせます。強制的に有言実行するシステムですね。手伝ってくれている妹や友達、乾杯してくれる仲間(視聴者)を裏切らないように。そして感謝を込めて」

彼女の動画には、「イッモ」と呼ばれる妹や「ぴえん」と呼ばれる従姉妹、そして実父「酒村かっぱ」などの家族が登場し、その手弁当感もまた和やかな雰囲気を醸し出している。

YouTuber・酒村ゆっけ、

クリエーションに不可欠なもの

動画をじっくり見ていると、そのゆるさとは別に、非常に手間がかかっているとも感じる。とりわけアテレコされているコメントパートは、酒村ゆっけ、のセンスが光るポイント。この原稿をハイペースでまとめるのは、至難の業ではなかろうか。

「撮影している時には、どんな原稿を書くかはまったく思い浮かばないんです。撮影を終えたあと、最後に原稿を書いています。やはり書くことが好きなので、言葉の創作には最も力を注いでいます。100%好きだという気持ちが十分に伝わるように、言葉の工夫を意識して。自分の表現を磨いています。続けてきた結果、私の中にある辞書にも自分の言葉が増えてきているように思えているので、さまざまな“好き”を伝えていきたいです」

また、冒頭に触れたBGMマシーン「呼び込みくん」のサウンドや、ロケ場所となることの多い自宅の部屋の細かな小道具たちが、“酒村ゆっけ、ワールド”をユニークなものにしているのは間違いない。スーパーファミコンのゲーム画面がTVに映るさまなどは、ゲーテ世代も思わずニヤリとしてしまうことだろう。

「好きなものをとにかく詰め込んでいます。動画ではあまり生でしゃべらないので、私の人となりが、少しでも伝わるように、背景やBGMに手伝ってもらっています」

ポイントは、自分が「好き」「面白い」と思うことを、まっすぐに表現している点と見る。

「モットーは、視聴者に受けそうなものを企てる、というよりは、自分が面白いと思ったことを実践することです。今、動画の世界では、過激でショッキングな内容は伸びやすいと思いますが、それって瞬間的には数を稼げるかもしれませんが、長期的に見ると違うと思うんです。自分の世界観を壊してまで数を稼ぎたくはない。“逃げ”だと思ってしまうから」

自分の「好き」や「面白い」にまっすぐ向き合う姿勢が、世界観をつくり上げ、視聴者の共感を呼んでいるのだろう。

■新卒半年で会社を辞めた「酒村ゆっけ、」に見る、これからの時代を生きるヒント(後編)

酒村ゆっけ、イチオシ酒テロ動画3選

1.塩の塊の上で肉を焼く、真夜中の焼肉飯【岩塩プレート】【酒村ゆっけ、】

「岩塩プレートで夜中に肉を焼いた動画。とにかく岩塩プレートが美味しかった。美味しかったからこそ、その魅力が伝わったのかな」

2.姉の本気のモーニングルーティンに妹が密着してみた【酒村ゆっけ、】

「妹が撮影した動画。普段はアフレコで生の会話が少ないですが、この回は、妹との掛け合いによって自分らしさが出ていたと思います。結構自分の“汚(お)”な部分が出ていた。素の部分を受け入れたもらえた喜びも」

3.【検証】一週間マクドナルドを食べ続けて悪夢を見る酒飲み独身女【酒村ゆっけ、】

「マクドナルド一週間ドカ食いの後に見る悪夢を、シャボン玉マシーンで打ち消すというドキュメンタリーです(笑)。大変な思いをした検証動画。かの有名な『スーパーサイズ・ミー』とまではいきませんでしたが、力作です」

YouTuber・酒村ゆっけ、

Yukke Sakamura
作家兼酒テロクリエーター。“ネオ無職”を掲げて2020年2月に、YouTube内の「世界一のゆっけ」チャンネルにて動画投稿を開始。酒や食をテーマにした独自路線の動画で人気を獲得。チャンネル登録者数80.4万人(2022年9月現在)。YouTuberのSUSURUや井口真緒とのコラボなども多数。

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TEXT=髙村将司

PHOTOGRAPH=斎藤大嗣

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