「会えるクリエーター」として、独自のASMR動画が小中学生を中心に人気を博す「しなこちゃん」。動画配信が成功するに至ったきっかけや、クリエーターとして大事にしている、仕事人としてのマインドを伺った。前編はこちら。 【特集 仕事に効くYouTube】
しなこちゃんとASMRとの出会いは偶然に
現在YouTubeで開設している「しなこ Shinako / ASMR」チャンネルは、登録者数64.3万人(2022年9月現在)という人気コンテンツだ。前編でも触れたように、自身が原宿から感じた自由さを発信すべく、固定観念に縛られない動画投稿が持ち味になっている。
「ASMRについては、狙ったわけではないんです。最初に友人のクリエーターとコラボレーションしたときに、“私ならこうするな”とか、“こういうお菓子を使ったらいいかもな”という、私なりのアイデアが頭に浮かんで。だったら自分でもやりたいな、と思ったのがASMRに着手したきっかけです。当初は、まさかこれがコンテンツの軸になるとは、想像もしてませんでした(笑)」
偶然の産物だったそうだが、自分流のアレンジによって、ビジュアルに特化した奇抜なスイーツたちを口に入れる異様なさまが注目を集めた。結果、かねてより人気のあった「会えるクリエーター」という部分と相乗効果をなして、「しなこちゃんのASMR」が一躍バズることとなったのだ。
「実際には聞き取りにくい小さな音量を大きく聞かせるASMRというコンテンツの特性上、咀嚼音以外は、なるべく小さく録音しないといけません。ですから、空調などはオフ。夏や冬は、暑かったり寒かったりで、大変なこともあります。けれど、ASMR以前のマルチコンテンツをアップしていた時代よりも楽しみながらやれています」
その理由は、ユーザーのリアクションだという。
「原宿の店舗で働いたことをきっかけに、みんなが私を求めてくれた。みんなが求めるものを私ができる力のなかで最大限発揮しようというモチベーションでやっています。ASMRは、やっていても楽しいですし、視聴者のリアクションも大きいので、やりがいを感じています」
こうしたモチベーションのもと、多彩なアウトプットをもつしなこちゃん。そうした自身のインターフェイスとしても、TikTokとYouTubeもきちんと使い分けている。
「本チャンネルのASMR動画は、私の作品です。世界観をしっかり構築して発信していますので、年月が経ってから見ても長く楽しめるように制作しています。一方で、TikTokやInstagramは、一時的な情報をアップするツール。私の日常や人となりが滲み出るようなものを心がけています」
なんでも「やってみる精神」で挑戦!
しなこちゃんが、仕事として大事にしていることが3つあるという。
1、視聴者、消費者の声ファーストで
「求められることに最大限応じるという私のスタンスにも通じていますが、コメント欄などもチェックしながら、日々アップデートを心がけています。インフルエンサーというのは、見てくださる人がいなければ、なりたたない存在。自分の欲求だけを表現してもダメだと思います。実際、視聴者の声を無視して数が落ちて行っている人も見ていますので、そこは一番大事にしています」
2、自分も楽しむ
「自分が楽しくなくては続かないと思っています。右も左もわからずに始めたASMRですが、やり始めるといろいろと楽しめるポイントも増えますし、スイーツづくりにフィードバックさせることもできます。他のクリエーターさんとのコラボレーションもあるので、自分も視聴者も飽きさせないように、というのは注意しています」
3、信念を忘れずに
「ときには、めげそうになることもあります。それでもブレずにいられるのは、信念があるから。自分がなぜ頑張るのかということを振り返ると、やっぱり、伝えたいことがあるんです。自分の好きな原宿で培った、自由でいいというマインド。これをブレずに伝え続けていきたいです」
インフルエンサーになるべく活動を開始した当初は、ストレートにファッション系の発信を手がけていたそうだが、スイーツに方向転換したのちに、ASMRというジャンルにたどり着いたしなこちゃん。
確かに望むとおりの道筋ではなかったと思うが、それでも続けるインフルエンサーとしての芯の強さは、言葉の端々から滲んでくる。
「人生において、私みたいに第一希望ばかりを選べなかった人も多いと思うんですよ。でも、その選択が正しかったかどうかは、そのあとの行動、どう頑張るかで変わってくると思うんです。第一希望が選べなかった瞬間は落ち込みますが、その決断を私は意味のあるものにしたい。自分は正しい選択をしたんだと、その後の行動で証明したいんです」
見た目からは想像できないほどのしなこちゃんのもつ芯の強さの秘密はこうした部分にあったのだ。成功を手繰り寄せるまで、次から次へとさまざまなことに挑戦し続ける姿勢にも表れている。
「挑戦こそが人生じゃないですか。挑戦しないなんてつまらなくないですか? 私、現状維持は退化と同じと思うんです。自分が同じ場所にいたら、周りから取り残されてしまうので、時代のスピードに負けないように進化していきたいです」
原宿との出合いで変わったしなこちゃんの人生。とにかくなんでもやってみるという精神が、今の彼女を作っているようだ。
「今、私の動画を見てくれているキッズたちにも、固定観念に縛られることなく、自分の好きを追求していってほしいと思っています。“みんなと同じ”じゃなくても全然OK。それぞれのペースで幸せになってほしいです」
■しなこちゃんのおすすめコンテンツ3選
1、【ASMR】青色のスイーツの咀嚼音
「最初にバズったASMR動画です。青い食べ物というところがよかったんでしょうか。今も“青い”シリーズは人気です」(しなこちゃん)
2、【ASMR】スポンジと洗剤を食べる
「まずは、閲覧注意で(笑)。スポンジや洗剤の見た目をしたスイーツを食べる動画で、バズりました。シリーズも人気で、作り方の動画も上げています」(しなこちゃん)
3、今世紀最大の発見をしてしまった【タピオカ】
「これは、ASMRをアップする前に初めてバズった動画。お菓子のポイフルをタピオカにする方法です。今でも見てくれる人がいる人気の一本です」(しなこちゃん)
しなこちゃん/Shinako
東京都生まれ。バズるスイーツを作る原宿系クリエーター。大学在学中よりTikTokなどで動画投稿をスタート。YouTubeでは本チャンネル「しなこ Shinako/ASMR」のほか、美容などのコンテンツをあげるセカンドチャンネル「しなこんちゃ」も開設。より彼女のパーソナルな部分に触れられる。原宿竹下通りでは、「SweetXOGoodGrief原宿」「ベビタピトーキョー」の2店舗でスイーツのプロデュースをおこない、実際に店頭に立つことも。
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