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2022.09.28

キッズに人気のYouTuber「しなこちゃん」が、ASMRを通じて発信する“原宿イズム”とは

キャンディポップな画面の中で、食べ物かどうかも不明なものをむしゃむしゃと頬張るキュートな女性。今、若者の間で流行するASMR動画において、小中学生や未就学児を中心にバズっている人気クリエーターのひとりが、「しなこちゃん」だ。なんでも、彼女がプロデュースするスイーツを販売する原宿の店頭に実際に立ち、そこには、彼女を「推し」とする小中学生が連日集うというのだから驚きだ。ASMR界に君臨する「しなこちゃん」とは、どんな人物なのだろうか。もしかすると、「我が子」もチェックしているかもしれない!? 【特集 仕事に効くYouTube】

YouTuberしなこちゃん。

ASMRのブレイク前夜、スイーツ店のスタッフとしてバズっていた

さて、YouTubeを中心に頻繁に見かける「ASMR」という単語は何を意味するか。自律感覚絶頂反応「Autonomous Sensory Meridian Response」の略語なのだが、これだけ聞いたところでピンとは来ないかもしれない。

このASMRを掲げた動画の内容は、咀嚼音や流水音といったちょっと風変わりなものが多い。実際、脳をリラックスした状態に導くトリガーとして機能する視聴覚的要因として、若者を中心にブームを呼んでいるのだ。

そんななか「しなこちゃん」が食べるのは、目玉や地球、ときに昆虫や洗剤などを模したキテレツなビジュアルのスイーツたちだ。

こうした独特なクリエーションを発信するに至った道のりをご本人に深堀りしてみた。

彼女が注目されるきっかけは、会えるクリエーターという触れ込みから。原宿のスイーツ店「SweetXOGoodGrief原宿(略称 SweetXO)」のスタッフとして働いていた彼女とスイーツの動画が配信されたことだという。

「とにかく“インフルエンサーになりたい”という強い気持ちがありました。大学在学中からあらゆるジャンルのSNSやツールを使って、TikTokを中心に自分なりの配信を始めていたんです。当初はもちろんまだ泣かず飛ばずでした。

最初のターニングポイントは、スイーツ店で働けるようになったこと。大学時代は、周囲が就職活動をするなか、私はあまり手応えのある活動もできないまま、卒業する3月を迎えてしまって。まったく方向性が見えないなかで、高校時代に原宿に通っていた頃から知り合いだった当時の店長から、たまたま3月31日に“働かないか”という誘いがあり、スタッフとして店頭に立つようになったんです」

ショップに来店した顧客が、スタッフであるしなこちゃんとそのキャッチーなビジュアルのスイーツを撮影してアップし、さらに本人のキュートさも相まって、ジワジワと知名度を高めていく。

その当時、ブレイクのきっかけとなったのが、哺乳瓶ソーダと呼ばれる彼女が考案したドリンクだ。文字どおり、哺乳瓶に色とりどりのソーダを複数ミックスしてつくるカスタマイズドリンク。容器とのギャップから、いわゆる「映え」人気も手伝った。

「その頃、私が感じていた使命は、TikTok上で商品をバズらせること。2018年くらいの話ですが、当時はまだビジネスツールとしてTikTokを活用している人がほとんどいなかったと記憶しているので、そのぶん目立っていたんだと思います。まだASMR動画も上げていない頃の話です」

しなこちゃんがバズりつつあるなか、さらに、大阪に出店していた別のスイーツショップの原宿店店長を任されることに。この「ベビタピトーキョー」という名のショップは、人気YouTuber「フォーエイト」がプロデュースする店舗。sweetXOや、YouTubeでの活躍が見込まれて、2店舗のスイーツを担当する活躍ぶりを見せていく。

カラフルな衣装に「映え」るスイーツ。現在の「ASMR系YouTuber」で名を馳せるしなこちゃんは、「会える」スイーツクリエーターの側面を持っていたのだ。

「ファン層の小中学生にとっては、画面の中の私に直接会えるのが新鮮だったんでしょうね。私というフリー素材が、バズっていったような感覚があります」

しなこちゃん

そもそもクリエーターになりたかった理由

TikTok上のスイーツ投稿以外にも、YouTubeでの動画投稿を始めていたしなこちゃん。2017年にはMonaca monacaというチャンネルをグループで立ち上げ、原宿系ファッション&カルチャーを紹介する動画も上げつつ、1年後には、個人チャンネルを開設している。

「原宿のファッションやカルチャーを発信したかったんです。言い換えるならば、自分が好きなものやことを堂々と発信していく姿勢ですね。高校時代にこの場所で知った、けみおくんやきゃりーぱみゅぱみゅさんみたいな存在に、私もなりたいと」

というのも、小中学時代は「前にならえ」の生活に馴染めず、苦しんでいたという。

「友達も少なかったし、馴染めない自分を肯定できずにいました。中学までの自分が嫌いで、とにかく高校では違う自分になりたいと、1年間自分を探していたんです。何が正しいんだろうって」

そんなときにしなこちゃんが出会ったのが、原宿カルチャーなのだ。

「とにかく衝撃を受けました。当時、雑誌できゃりーさんなどがしている独特なファッションをした人が堂々と楽しそうにしている。考えてみれば、正解なんてなかったんです。探しても見つかるわけがないんですよね、ないんですから。

そして、とにかく自分は自由でいいんだ。ありのままでいいんだという気持ちにさせてくれたのが原宿です。え? そんな服着てもいいの? そんなメイクしてもいいの? という感じ。

それまでの自分だったら、好きな服を着る勇気が出なかったのですが、その気持ちを変えてくれました。この場所からワクワクをもらって以来、私と同じような気持ちを持っている人にも、私が受け取った“原宿イズム”を広く発信したいと思ったんです」

自分の道を進むこととなったのが、現在のしなこちゃん。SNS上で「バズるスイーツを作る原宿系スイーツクリエーター」を自称している彼女の原点は、こうしたマインドセットの変革があったというわけなのだ。

後編に続く。

しなこちゃん

Shinako
東京都生まれ。バズるスイーツを作る原宿系クリエーター。大学在学中よりTikTokなどで動画投稿をスタート。YouTubeでは本チャンネル「しなこ Shinako/ASMR」のほか、美容などのコンテンツをあげるセカンドチャンネル「しなこんちゃ」も開設。より彼女のパーソナルな部分に触れられる。原宿竹下通りでは、「SweetXOGoodGrief原宿」「ベビタピトーキョー」の2店舗でスイーツのプロデュースを行い、実際に店頭に立つことも。

【特集 仕事に効くYouTube】

TEXT=高村将司

PHOTOGRAPH=彦坂栄治

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