PERSON

2022.09.27

新卒半年で会社を辞めたYouTuber「酒村ゆっけ、」に見る、これからの時代を生きるヒント

酒を浴び、メシを食らう自らの日常を独自のワードセンスで語る酒テロ動画にハマる人が続出している。そのYouTubeチャンネル名は「世界一のゆっけ」。自身の動画にとどまらず、書籍や音楽にまでそのフィールドを広げている“ネオ無職”YouTuber・酒村ゆっけ、の生き方とは。 【前編はこちら】 【特集 仕事に効くYouTube】

YouTuber・酒村ゆっけ、

酒村ゆっけ、を魅了してやまないお酒のチカラ

「酒村ゆっけ、」は、もちろん本名ではなく、YouTuberネームである。名前に「酒」の文字を入れるほどに酒をこよなく愛しているのは言わずもがな。動画内では“酒彼氏”と称して、角ハイボールや缶チューハイ、ビールに焼酎などを擬人化し、その愛情をならではの目線で表現している。

「酒村ゆっけ、を名乗ってから、酒彼氏と名付けているんですが、実は、お酒が好きになった時から、私のなかでは、酒=彼氏という認識でした。

大学時代は、みんなと仲よくコミュニケーションをとるために、お酒を飲んでいたので、当時は、“恋”みたいな軽い感覚でした。けれど、今は、飲み会のためではなく、自分のために変化。創作活動のための酒彼氏になっているので、恋から愛に昇格したように感じています」

彼女が、それぞれの酒とどのように向き合っているかは、ぜひ動画でチェックしてみていただきたい。なかでも気をつかっているのはビールなのだとか。

「私のなかで“ヨリを戻した”存在がビールです。飲めなくなった時期もありましたが、また今はおいしくいただいています。けれど、“ビールっ腹”という言葉があるとおり、飲みすぎると太るのがネック。末長く付き合っていきたいと思っているので、その分、運動とかサプリで補っていこうと思っています」

本気かジョークか、個性的なダイエット動画なども上がっているのが、酒村ゆっけ、動画の面白いところ。さて、酒自体は、彼女にとってどのような存在なのだろうか。

「どんな時もそばにいてくれる家族のような存在。苦しい時も、楽しい時も、いかなる時も黙って寄り添ってくれる心強い相棒です」

そんなお酒は、今や彼女にとってのビジネスパートナーともなっているのだからわからない。

YouTuber・酒村ゆっけ、のマストアイテム

酒テロクリエーターの“三種の神器”。左上:iPhone。「撮影は基本iPhoneのみ。一人だと外カメは見えないのでインカメラで撮っています。案外きれいに撮れますよ。基本は自分で撮影します。目立ちたくないので、スマートフォンが一番安パイですね」。左下:呼び込みくん。「酒村ゆっけ、の誕生から寄り添ってくれているBGMデバイス。お酒と一緒で、愛用品というより相棒に近いです。大きいタイプは1台持っていて、最近発売されたミニは、多数我が家にお迎えしています。敬意を込めて」。右:アウトドアタイプのリュック。「これじゃなきゃ、というものではないですが、紙の本やコンビニで買ったお酒を入れるのには、耐久性のあるアウトドアタイプが理想的。撮影には欠かせない存在です」。

幅広く活動するなかで見えてきたこと

YouTubeやTikTok動画での活躍をきっかけに、アルバム『ほろよいミッドナイト』をリリースし、アーティストしてもデビュー。自身の作詞に、ゆるいラップによるヴァースと、キャッチーなサビでなんともほっこりした気分にさせてくれる。

「音楽も自分が好きなものなので、携わってみたいという思いはありました。ただ、お話があった時は、音楽的知識や技術に自信があるわけではないので、不安はありましたね。それでも正解はないわけで。動画を上げてみて感じたのは、ど素人ながらも見てくれる人はいるんだということを知れたのが大きかった。ですので、とりあえずトライしたら、何かにつながるかもしれない。そういう経験が私を動かしてくれました」

「好き」に対してトライし続けていくことが、自身のフィールドを広げることになる。これは、これからの時代を生きるビジネスパーソンにも参考になりそうなマインドセットだろう。これを、酒村ゆっけ、の流儀で続けているというだけだ。

活躍する分、誹謗中傷にさらされる機会も少なくないという。そんな時に自分を保つ方法も持ち合わせている。

「嫌だな、と思ったら、自然のあるところに逃亡することにしています。1泊2日くらいだと、単なる旅行気分になってしまうので、3泊4日以上の長旅が好ましいです。偽りのない景色を見ながら、すっぴんと寝巻きで過ごす。継続的におこなうことで心の平和を保っています。

ただ、お風呂と食事がしっかりしていることが重要。以前、妹(イッモ)と従姉妹(ぴえん)と3人で、食事がない古民家のようなところに泊まったことがあるんですが、普段、外食や出前が多いので、4日分の食事の量というのが皆目見当がつかなかったんです。全然足りなかったんでしょうね。本当に田舎で、気軽に買い出しにも行けず、食料の量を間違えて、最終日にはコーラ1本しか残りませんでした(笑)。なので、食事が用意されている田舎がいいですね」

オンとオフのバランスを自分なりにとりながら、いつしか「好き」を仕事にすることに成功した酒村ゆっけ、。ここまでの自分をどう見ているのだろう。

「新卒の就職先を半年で辞めてしまった私が、2年半続いたというのは、自信になっています。続けられることがあるんだという発見。また、リアルな場面では人と接触はしないんですが、画面越しにならば、こんなに人とつながることができるんだ、ということに、文明の素晴らしさとともに感動しました。一人だと思っていても意外と一人じゃないんだなと。動画を見てくれている方々が、誇りに値するなと」

「好き」を続けてきた今、エッセイ『無職、ときどきハイボール』、小説『酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす』を上梓。作家としての肩書きも手に入れた。ネオ無職を謳った彼女の肩書きは、作家兼酒テロクリエーター。新たなフィールドをさらに増やしていくかもしれない。

「やる時はやる、追い込まれたらやり切るという長所と、整理整頓ができないズボラで汚いという短所。このふたつがいい感じに噛み合っているのが私かなと。この感覚の元にある、“なせばなる”と“なんくるないさ”のコラボレーションは、時に状況を詰ませるんですけど(笑)。今後についてよく聞かれますが、メラメラと野望に満ちて生きているわけではないので、コツコツと投稿を維持していきたいです。これを続けることが目標ですね」

【前編】酒テロ動画にハマる人続出! ネオ無職YouTuber「酒村ゆっけ、」を知ってるか?

酒村ゆっけ、を刺激するおすすめコンテンツ3選

1.しもふりチューブ

「私のお笑い歴は、小学生の頃に観たテレビ番組『エンタの神様』で止まっているのですが、この動画で芸人さんってめちゃくちゃ面白いということを再認識させてくれました。動画が見やすくて、差し込みのインサートや演出には、クリエーター気質を感じます」

2.あこがれホテル@akogare_hotel

「きっと誰もが泊まりたくなるようなホテルを紹介しているツイッターアカウント。紹介されるホテルは、ちょっとお高いんですが。見ていると理想だけが高くなってしまいます。いつか、“あこがれホテル”が似合う大人になりたいなと」

3.オモコロ

「記事サイト。そのなかでもライターの雨穴さんが独特な世界観で好き。最近YouTubeもやられていて、動画でも楽しめます。作り込まれてないようで、作り込まれている。アイデンティティを保った世界観を構築されていて、自分の勉強にもなっています」

YouTuber・酒村ゆっけ、

Yukke Sakamura
作家兼酒テロクリエーター。“ネオ無職”を掲げて2020年2月に、YouTube内の「世界一のゆっけ」チャンネルにて動画投稿を開始。酒や食をテーマにした独自路線の動画で人気を獲得。チャンネル登録者数80.4万人(2022年9月現在)。YouTuberのSUSURUや井口真緒とのコラボなども多数。

【特集 仕事に効くYouTube】

TEXT=髙村将司

PHOTOGRAPH=斎藤大嗣

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