毎度お騒がせしております。キングコング西野です。(こちらは、オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』に投稿した記事を加筆修正したものです)
今日は『VIPサービスの本質』というテーマでお話ししたいと思います。
ちょっとしたことですが、とっても大事なことです。
【連載「革命のファンファーレ2~現代の労働と報酬」】
第42回 『プレミアムな体験(最上級のサービス)』と『ラグジュアリーな体験(唯一無二のサービス)』の違いをきちんと知る
貧しくなる国
いろんな国や文化に触れていると、「バブルの頃の日本を海外の人達が見た時は、きっとこんな気持ちだったんだろうなぁ」と思う景色に遭遇します。
大型ショッピングモールの建物デザインや、ライブのステージセットなどは、その国の“勢い”をそこそこ正確に表現していて、「あ、この国は、お金が回っているんだな」「ああ、この国は経済成長してないんだな…」を1秒で伝えてくれます。
日本は間違いなく後者で、厄介なのは、ずっと日本に住んでいると「経済成長していない」ということに気づける機会が無いということです。
変わっていないんだから、(まわりを見るまでは)気づけない。
海外に行って、昼ご飯でも一発食べれば、「え? 世界の昼ご飯って、今、こんなに高いの?」と目が覚めるかもしれませんが、海外に行く体力も無くなってきているのが今の日本です。
「いやいや、私は別に海外に行ったりする生活をするつもりがないので、関係ないわ」とウチの母ちゃんあたりは言いそうですが、僕の手元にある商品が僕らの手元に届くまでには海外から仕入れている原材料や石油などがゴリゴリに絡んでいるわけで、現代において、「海外と1ミリも接触しない」ということはほぼ不可能です。
「原価が上がっているのに、商品の値段が変わっていない」ということはつまり、お店の方が無理をしている(お店の利益は減っている)わけで、お店の方が使えるお金が減るので、あなたの商品が(お店の方に)売れにくくなります。
誰かが無理をしたら、そのシワ寄せは必ず自分にきます。
抜け駆けなどできません。経済というのは、すべて密接に絡んでいるわけですね。
このことを受けて、「日本の経済対策ガー」と政治家さんを叩く風潮があります。
たしかに、「もっと上手くやろうよ」と思う場面はありますが、責任は政治家さんだけにあるわけじゃなくて、「こういう選択肢があるよ〜」「こういう進め方もあるよ〜」という新しい提案を、国を挙げて潰してきた(バッシングすることで、自分達の選択肢を減らしてきた)日本人を僕はよく知っています。
しかしながら、とっくに終わりが始まっているようなこの国に、僕の友達はたくさん住んでいて、「それでも、何とかできないかなぁ」と考えます。
意外と郷土愛の深い男なんです。
そんな中で、3年前ぐらいから西野が仕切りに言っているのが「VIPデザインの重要性」です。
言うまでもありませんが、ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の全編無料公開(2022年7⽉3⽇19時より、こちらから)は、VIP客がいたから実現できたわけで、VIPを踏まえたビジネスモデル設計になっていなければ、ミュージカル『えんとつ町のプペル』は(映像であろうと)やっぱり有料で、お金に余裕が無い人は見ることができません。
繰り返しますが、僕らは「お金に余裕が無い人が増える国」に住んでいます。
どこを押さえなきゃいけないかは明白です。
VIP客はどんなサービスを受けた瞬間に「いいねポイント」を追加するのか?
さて。
これからは「自分のサービスの中に、いかにVIP枠を織り込むか?(VIP客に気に入ってもらうか?)」が重要になってくるわけですが、VIP枠をデザインする中で、一つ、大きな道徳(考え方)があることに気がついたので、今日は、そちらを共有します。
「VIP向けのサービス」と聞くと、すぐに「ふかふかの椅子」とか「シャンパンが出る」といったことを考えてしまいますが、それは『プレミアムな体験(最上級のサービス)』であって、『ラグジュアリーな体験(唯一無二のサービス)』ではありません。
僕は、贅沢の類には本当に興味がなくて、食事は1日1食、コンビニの蕎麦で十分幸せなヤツです。が、VIP向けのサービスを作るのであれば、勉強として、VIP向けのサービスを受ける必要があると思って、ときどき、ビックリするぐらいの高級宿に泊まったりもします。
正直、「眺めが最高の広い部屋」に通されても、自分の中では「プレミアム」の域を超えていなくて、「まぁ、他の宿よりも○○円ぐらい高いし、妥当だな」という感想に落ち着きます。
ところが、ある一つのサービスで、それが「ラグジュアリー」に変わる瞬間があります。
そのサービスとは、一体何か?
答えは「スタッフが、なんとかする」あるいは、「スタッフが、なんとかしようとしているところを見せる」です。
たとえば、うっかり寝坊して、ホテルの朝食の時間が過ぎたとします。
「すみません…もう、朝食終わってますよね?」とフロントに電話をした時に、通常宿は「はい。10時までで終わってます」と返しますが、VIP客のハートをガッツリ押さえる宿は、「朝食の時間は終わっちゃったんですが…すみません。10分だけ時間を貰えますか?なんとかします!」と返すんです。
まもなく朝食が手配されるわけですが、ありあわせのモノでなんとかした朝食なので、ぶっちゃけ、事前に用意されていた朝食よりもグレードは下がるんです。
それでも、まったく構わない。
VIP客からすると、食のグレードよりも「なんとかしてくれた」「頑張ってくれた」という感動の方が完全に勝っていて、この瞬間に、この宿に惚れる。
要するに、VIP客をつかまえるには「惚れさせる」「恋をさせる」ことが重要なので、『マニュアル』なんてウンコ中のウンコなんです。
「あなたの為にどれだけやったか?」が大切です。
「恋」は落ちるものなので、マニュアルなんてないんです。
このままだとスピードワゴン小沢さんになってしまうので(大好き!)、もう少しだけ解像度を上げると、、
「なんとかする」には値段がついてない(相場がない)から、ラグジュアリーになる
…ということだと思います。
今回、ドバイ発のバブリーな飛行機(機内にBARがあったよ)に乗って、僕は今回「高い席」を利用させていただいたのですが、コロナの影響か「機内スリッパ」がなかったんですね。
そこでCAさんをお呼びして、「すみません。ちなみにスリッパとかってありますか?」と、お尋ねしたところ、
「…すみません、西野様。ただいま、機内スリッパはお出ししていなくて…でも、ちょっと3分だけ待ってください!すぐに戻ります!」
と奥に行かれて、まもなくCAさんが手にスリッパ(封が開いていない)を持って戻って来られたんです。
「それは?」と訊くと、CAさんからこんな言葉が返ってきました。
「私が昨日、泊まったホテルから、調達してきたヤツです(※持ち帰っていいもの)。『何処かで使える』と思っていたのですが、すぐに出番がきました。どうぞ、お使いください」
VIP客を掴む(ラグジュアリー)って、こういうことだよなぁと思った出来事です。
現場からは以上です。
お知らせ! 5月21日開催!『【教えて西野先生】親子で学ぶ!とっても大切なお金の話2022』
5月21日の20時から開催するオンライン勉強会『【教えて西野先生】親子で学ぶ!とっても大切なお金の話2022』の参加者が「3100名」を突破しました。
僕は、自分で会社を起こして、資金繰りをして、作品や商品を作って、売って、従業員を雇って…という活動をしているのですが、この活動は「お金」の問題と常に隣合わせなんです。
そして、そこでは「お金の勉強をしていない人の弱さ」を見る。
お金の勉強をしていない人が、自分や、まわりの人達を不幸にしていく様を、まざまざと見るんです。
やっぱりこのあたりの心配は拭えないので、今回、久しぶりに手を挙げてみました。
こちらはFacebookグループを使った勉強会になるので、参加者の方の声を拾いながら、授業を進めて行きたいと思います。
アーカイブは6月30日まで残りますので、当日参加できない人でもお楽しみいただけます。
チケットは「800円」です。
参加ご希望の方は『BASE 煙突屋』で検索してください。
【教えて西野先生】親子で学ぶ!とっても大切なお金の話2022(5月21日20時~) | 煙突屋 powered by BASE
よろしくお願いします。
西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。
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