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2022.04.06

大阪なおみが苦しみながらも戦い続けた日々──連載「コロナ禍のアスリート」

まだまだ先行きが見えない日々のなかでアスリートはどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う連載「コロナ禍のアスリート」から、大阪なおみの戦いをまとめて振り返る。※2020年、'21年掲載記事を再編

人種差別への抗議という使命を自らに課した大坂なおみの覚悟

ボイコット表明後は携帯電話の電源をオフにした。想像を超える反響に「少し怖くなった」のが本音。テニス全米オープン(8月31日開幕、ニューヨーク)の前哨戦ウエスタン・アンド・サザン・オープンで、大坂なおみ(22=日清食品)が起こした大胆な行動が世界から注目を浴びた。

コロナ禍でツアーが中断していたため、ウエスタン・アンド・サザン・オープンは大坂にとって半年ぶりの公式戦だった。第4シードとして順調に勝ち上がり、4強入り。2019年10月の中国オープン以来のツアー制覇が視野に入ってきた準々決勝後に、周囲を驚かせる決断を下した。黒人男性銃撃事件への抗議を目的に、準決勝を棄権する意思を表明。自身のツイッターで「私はアスリートである前に黒人女性です。今はテニスを観るよりも、重要なことがあると思う」と発信した。

大坂の意思表明を受け、男女のツアーを統括するATPとWTA、全米協会も人種差別への抗議を示すため、27日は試合を実施せず、28日に再開すると発表。その上で大坂に大会参加の続行を要請した。大坂は自ら行動することで注目を集め、人種差別への議論が深まることを目的としていたため、大会中断で飛躍的に注目度が上がる中、ボイコットにこだわる理由はなくなった。棄権を撤回して、準決勝のコートに立った。

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「7枚のマスク」で頂点に駆け上がった大坂なおみが伝えたかったこと

無観客のスタジアム。静寂の18秒。 優勝を決めたコートで仰向けになり、見つめた空には不当な暴力で命を落とした数々の黒人犠牲者の顔が浮かんでいたのかもしれない。2018年全米、2019年全豪に続く、4大大会3勝目。世界が注目した2週間の戦いを終えた大坂なおみ(22=日清食品)は「多くの偉大な選手が倒れ込んで空を見上げていたので、どんな景色が見えるのかと思った。信じられないくらい素晴らしい瞬間だった」と実感を込めた。

人種差別へ抗議を示す使命を自らに課し、決勝までの試合数に合わせ7枚の黒人被害者の名前入りマスクを用意。初戦後に「皆に全てを見てもらいたい」と宣言し、有言実行した。優勝インタビューで「どんなメッセージを伝えたかったか?」と問われると「どんなメッセージを受け取りましたか?」と逆質問。最後まで議論の活発化を願った。

心は折れなかった。元世界1位のアザレンカとの決勝。第1セットは絶好調の相手に為す術なく、1-6。第2セットも第2ゲームで先にブレークを許したが、諦めなかった。第3ゲームも先行を許しながらジュースの末にブレークバック。一気に流れを変えて、白星を引き寄せた。全米の女子シングルス決勝で第1セットを失っての逆転は1994年以来26年ぶり。大会中に被害者家族から受け取った感謝のメッセージも力となった。

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大坂なおみが見据える東京五輪と、その先にある偉業とは?

ZUMA Press/アフロ

ハードコートでの強さに疑いの余地はない。2月の全豪オープンで2年ぶりの優勝を果たした大坂なおみ(23=日清食品)は英スカイスポーツで「ハードコートでは間違いなく世界最強」と報じられた。4大大会4勝を含む過去7度のツアー優勝はすべてハードコートの大会。メルボルン市内の公園で開催された全豪決勝翌日の優勝記念撮影会では、結果を出せていないサーフェス(コートの種類)の攻略を目標に掲げた。

「今年の最大の目標は1年を通じてコンスタントに結果を出すこと。ハードコート以外のサーフェスでも心地よくプレーできるようになりたい」

視線の先には史上2人目の偉業がある。同年に全豪、全仏、ウィンブルドン、全米の4大大会に加え、五輪も優勝する"年間ゴールデンスラム"。4年に1度しかチャンスのない5冠は、プロ参加が解禁となったソウル五輪が開催された'88年にシュテフィ・グラフ(ドイツ)が達成したのが最初で最後だ。1年間の枠を外した"生涯ゴールデンスラム"の達成者も、セリーナ・ウィリアムズ(米国)、アンドレ・アガシ(米国)、ラファエル・ナダル(スペイン)を加えた4人しかいない。

全米と東京五輪は全豪と同じハードコートで実施される。大坂にとってはクレーの全仏、芝のウィンブルドンが高いハードルとなる。球足の遅い赤土はサービスエースの確率が減り、ストローク勝負になる傾向が強い。芝はバウンドが低く球が加速する特徴があり、体を沈めてボールを打つなどの対応に迫られる。

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うつを告白した大坂なおみがもたらしたもの

(c)Abaca/アフロ

テニス4大大会の全仏オープン(パリ・ローランギャロス)に出場していた大坂なおみ(23=日清食品)が2日に予定されていた女子シングルス2回戦を棄権。2020年全米、2021年2月の全豪に続くグラウンドスラム3連勝が懸かっていたが、戦わずしてコートを去った。

5月31日に自身のインスタグラムで「大会や他の選手、自分の健康にとっての最善は、私が棄権することだと思います。邪魔になりたいとは思っていません」と表明。さらに「2018年の全米オープン以降、長い間うつに悩まされてきたことが真実です。対処にとても苦しんできました」と告白した。

開幕前の5月28日に「アスリートの心の健康状態が無視されていると感じていた。自分を疑うような人の前には出たくない」と大会中の取材に応じない方針を示した。30日の1回戦勝利後は予告通り会見を拒否。4大大会の主催者が違反が続けば全仏で失格、他の4大大会で出場停止となる可能性を通告する中、長期に及ぶ心の病が打ち明けられた。

夢を叶えた歓喜の瞬間が苦悩の始まりだった。'18年9月に全米で優勝し、4大大会を初制覇。決勝で憧れの存在であるS・ウィリアムズ(米国)を破って頂点に立った。当時20歳。ニューヒロイン誕生にテニス界が沸き、メディアも殺到した。注目を浴びる中、'19年全豪も制し、2大会連続のグランドスラム制覇を達成。アジア人として初めて世界ランキング1位に就いた。

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