MAGAZINE &
SALON MEMBERMAGAZINE &
SALON MEMBER
仕事が楽しければ
人生も愉しい

PERSON

2021.03.04

大坂なおみが見据える東京五輪と、その先にある偉業とは?

約1年の延期が決まった東京五輪。本連載「コロナ禍のアスリート」では、まだまだ先行きが見えないなかでメダルを目指すアスリートの思考や、大会開催に向けての舞台裏を追う。

ZUMA Press/アフロ

ハードコートでの強さに疑いの余地はない。2月の全豪オープンで2年ぶりの優勝を果たした大坂なおみ(23=日清食品)は英スカイスポーツで「ハードコートでは間違いなく世界最強」と報じられた。4大大会4勝を含む過去7度のツアー優勝はすべてハードコートの大会。メルボルン市内の公園で開催された全豪決勝翌日の優勝記念撮影会では、結果を出せていないサーフェス(コートの種類)の攻略を目標に掲げた。

「今年の最大の目標は1年を通じてコンスタントに結果を出すこと。ハードコート以外のサーフェスでも心地よくプレーできるようになりたい」

視線の先には史上2人目の偉業がある。同年に全豪、全仏、ウィンブルドン、全米の4大大会に加え、五輪も優勝する"年間ゴールデンスラム"。4年に1度しかチャンスのない5冠は、プロ参加が解禁となったソウル五輪が開催された'88年にシュテフィ・グラフ(ドイツ)が達成したのが最初で最後だ。1年間の枠を外した"生涯ゴールデンスラム"の達成者も、セリーナ・ウィリアムズ(米国)、アンドレ・アガシ(米国)、ラファエル・ナダル(スペイン)を加えた4人しかいない。

全米と東京五輪は全豪と同じハードコートで実施される。大坂にとってはクレーの全仏、芝のウィンブルドンが高いハードルとなる。球足の遅い赤土はサービスエースの確率が減り、ストローク勝負になる傾向が強い。芝はバウンドが低く球が加速する特徴があり、体を沈めてボールを打つなどの対応に迫られる。

シャラポワ指導のトレーナーもチーム入り

両コートともに重要になるのがフットワーク。大坂は昨夏からマリア・シャラポワ(ロシア)を指導した経験を持つ中村豊トレーナー(48)をチームに招き、肉体改造に着手。体幹を徹底的に強化して、走らされてもバランスを崩さずに強く正確な球を打てるようになった。全豪では長いラリーでも安定した足の運びを見せており、赤土と芝に適応できる可能性は十分にある。

リターンの成長も目覚ましい。全豪の1回戦から決勝までの7試合のリターン成功率は75%を記録し、相手の第2サーブでの得点率は62%と出色の数字を残した。返球は深くエリアも散らし、相手に十分な体勢で次の球を打たせずにポイントを奪うパターンを確立。試合前に確認した情報や戦術を的確にプレーに反映する力も備わった。高速サーブに頼りがちだった従来のテニスから完成度は上がっており、ハードコート以外でも戦える下地は整いつつある。

昨夏にはクレーコートでの練習も実施。2019年末から指導するウィム・フィセッテ・コーチ(40=ベルギー)は「数週間クレーで練習したが、いいプレーをできる資質はある」と赤土への適応に太鼓判を押した。一方で芝については「コートで滑って転倒することを怖がっている。試合数をこなすことと自信が必要」と経験不足を指摘。その上で「なおみはとても吸収力がある」と短期間でフィットする可能性に期待を寄せている。

セリーナは4大大会23勝

最高のロールモデルもある。大坂が憧れ、プレースタイルも似ているセリーナ・ウィリアムズは4大大会通算23勝を誇る。マーガレット・コート(オーストラリア)の24勝に次ぐ歴代2位の記録で、全豪7勝、全仏3勝、ウィンブルドン7勝、全米6勝とサーフェスを問わずに優勝を重ねてきた。背中を追い続けてきた大坂がクレーと芝で勝てない理由はない。

今年の残る4大大会の開幕日は全仏が5月23日、ウィンブルドンが6月28日、全米が8月30日の予定だ。東京五輪の開幕は7月23日。大坂は「私にとって初めての五輪が東京で開催されるのは夢のよう」と東京五輪への特別な思いを口にし「自分がまだ成し遂げていない何かを完成させたい気持ちはある」と年間ゴールデンスラムにも意欲を見せる。

東京五輪の1年延期により巡ってきたチャンス。心身ともに充実の時を迎えており、33年ぶりの偉業は決して夢物語ではない。

TEXT=木本新也

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2024年5月号

身体を整えるゴッドハンド

ゲーテ5月号表紙

最新号を見る

定期購読はこちら

MAGAZINE 最新号

2024年5月号

身体を整えるゴッドハンド

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ5月号』が3月25日に発売となる。成功者たちを支える“神の一手”を総力取材。すべてのパフォーマンスを上げるために必要な究極の技がここに。ファッション特集は、“刺激のある服”にフォーカス。トレンドに左右されない、アートのようなアイテムが登場。表紙は、俳優・山下智久。

最新号を購入する

電子版も発売中!

定期購読はこちら

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる