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2022.03.25

【DI西山知義・前編】親が子供にすべきは"材料と機会”を与えることのみ──連載「イノベーターの子育て論」Vol.3

日本のビジネス界やエンタメ界を牽引するイノベータ―たちがいかにして育ち、自身の子をふくめた次の世代の才能を育てているのか、その“子育て論”に迫る本連載。第3回目はダイニングイノベーション ファウンダー西山知義氏の子育て論。常識をくつがえす発想で、飲食業界に数多くのイノベーションを起こしてきた西山氏。敏腕起業家の一方、「子供たちが小さい頃は毎週末公園に連れて行っていた」という良きパパという顔も持つ。そんな西山氏が子育てでモットーとしているものとは? 連載「イノベーターの子育て論」はこちら

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「練習」より「実践」の方が得るものは大きい

焼肉の価格破壊を生んだ「炭火焼肉 牛角」から、ひとり焼肉のスタイルを定着させた「焼肉ライク」まで、飲食業界に旋風を巻き起こしてきたチャレンジャー。そんな西山知義氏が率いるダイニングイノベーションに、2020年、新たな業態が誕生した。グルメバーガーのクオリティとファストフード店の価格帯を両立し、DXを駆使した「BLUE STAR BURGER」である。そして、同社の代表取締役を任されているのが、西山氏の長男、西山泰生氏だ。

「長男は、大学入学あたりから起業に関心を抱くようになったみたいで、僕が知らないうちに、大学の起業家サークルで活動したり、複数のIT企業でインターンを経験するなど、準備を始めていたようです。で、いくつか起業プランをつくって、僕のところにプレゼンしに来たんですよ。なかには、『宇宙で野菜をつくる』なんてぶっ飛んだものもありましたが(笑)」

泰生氏は、生まれながらにしてデジタルに親しんできた、いわゆるZ世代。IT企業でインターンを経験するなど、DXへの関心も高かった。ちょうど、ダイニングイノベーションも、DXを取り入れたハンバーガーショップの立ち上げを模索していた頃。そこで、代表取締役として、泰生氏に白羽の矢を立てたのだ。

「日本では、後継者には、まず外の世界で経験を積ませるという考えが根強いですが、僕はそうは思いません。ゴルフにしても、打ちっぱなしで膨大な練習を積むよりも、ゴルフ場でラウンドを重ねた方が、ずっと早く上達するというのが、僕の考え。実際にやってみて初めてわかることが、たくさんありますから」

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西山知義氏(右)と、ブルースターバーガージャパン代表取締役社長・西山泰生氏(左)。

一番身に着けてほしいのはコミュニケーション能力

材料を与え、自分で考え、選ばせ、体験させる。それが、西山氏の子育てのモットーだ。

「親が子供にすべきは、材料や機会を与えることだけ。僕はそう思っています。親の敷いたレールの上を歩いて成功しても手応えはないだろうし、失敗したらしたで、親のせいにするかもしれない。でも、自分で選んで行動したことなら、うまくいけば嬉しいし、失敗したら、必死で原因を追究し、改善策を探すはず。だから、息子たちに、ああしろ、こうしろと言ったことはありません。たまたま長男が起業に関心を抱いた時期と、当社がやりたいことが合致したので、働いてもらうことにしましたけど、会社を息子たちに継がせたいと思ったことは一度もないし、今後もないですね。

だって、親子であっても、人間はひとりひとり違うので、幸せの形は違って当然です。やりたいのなら応援はするけれど、彼らの意思に反して強要することだけは、絶対にしたくない。それは、親子どちらにとっても、とても不幸なことだから」

泰生氏は、シンガポールとアメリカで高校時代を過ごしている。留学は、本人の意思で、学校選びにしても、西山氏夫妻は見学の同行はしたものの、本人主導だったという。

「シンガポールに1年いて、その後アメリカに移ったのも、長男の意向。そこで、いろいろな出会いがあり、体験して、起業に関心を抱くようになったのでしょうね。

次男ですか? 今20歳ですが、コンビニでバイトしたり、ネットでゲーム配信したり、いろんなことに興味があるみたいです。この先どうなるのか、まったく予想がつかない(笑)。でも、彼の人生だから、僕も妻も一切口を出しません。人としての基本は教え込んだつもりだし、けっこうおもしろいヤツで、友達もたくさんいるようなので、心配もしていないですね。

彼らに財産を残すつもりもありません。息子たちが生まれたときから金銭的に余裕のある環境にあったことは、親=僕の責任であって、決して勘違いさせてはいけないと思ってきたので。それを小さい頃から繰り返し言っていたせいか、息子たちは金銭的なことに関しては無頓着ですね」

「嘘をつくな」「人の陰口は言うな」「思いやりを持て」など、人との接し方だけは、子供たちが幼い頃から口を酸っぱくして言い続けてきた。

「子育てって、子供がしっかり生きていける力を身に着けさせることだと思うんですよ。そのカギを握るのは、コミュニケーション能力。社会は、人との関りの中で回っていますからね。自分だけ良ければいいとか、人を騙したり、足を引っ張るといった性根の悪い人間にだけはなってほしくない。そう思ってきました。

そう言えば、僕自身、親に同じようなことを言われてきましたね。父親が自分にしてくれたことを、なぞっているのかもしれません」

飲食業界の風雲児を生み出した、西山氏の父の子育てとはいったいどんなものだったのだろう。

後編へ続く

Tomoyoshi Nishiyama
1966年東京都生まれ。1996年に外食産業に参入し、「炭火焼肉酒家 牛角」などを展開するレインズインターナショナルを創業。2012年、同社を売却し、13年、ダイニングイノベーションを設立。「焼肉ライク」、「BLUE STAR BURGER」、「やきとり家すみれ」、「Italian Kitchen VANSAN」をはじめ、さまざまなブランドの飲食店を、国内外に展開。

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連載
イノベーターの子育て論

ニューノーマル時代をむかえ、価値観の大転換が起きている今。時代の流れをよみ、革新的なビジネスを生み出してきたイノベーターたちは、次世代の才能を育てることについてどう考えているのか!? 日本のビジネス界やエンタメ界を牽引する者たちの"子育て論"に迫る。

TEXT=村上早苗

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