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2022.03.26

【DI西山知義・後編】父親から教わった最短で最善の結果を出す思考──連載「イノベーターの子育て論」Vol.4

日本のビジネス界やエンタメ界を牽引するイノベータ―たちがいかにして育ち、自身の子をふくめた次の世代の才能を育てているのか、その“子育て論”に迫る本連載。第3回目はダイニングイノベーション ファウンダー西山知義氏の子育て論・後編。常識をくつがえす発想で、飲食業界に数多くのイノベーションを起こしてきた西山氏。敏腕起業家の一方、「子供たちが小さい頃は毎週末公園に連れて行っていた」という良きパパという顔も持つが、その子育てには、自身が父親から受けた影響も反映されているという。【前編はこちら

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いっしょに過ごす時間が親子の絆を深める

西山氏の父は、不動産会社を経営していて、幼少期は裕福な暮らしをしていた。

「平日は出張や何やらで忙しくて顔を合わせる時間もなかったくらいですが、週末は必ず家族と過ごしていましたね。月に1回は六本木のステーキハウスに行き、夏休みは茅ケ崎にあったパシフィックホテルに泊まりに行くなど、子供にしては贅沢な経験も、いろいろさせてもらいました。その一方で、屋台のラーメンを食べに行ったことも。その時、『食事というのは、値段じゃない。安くても心豊かになれるものなんだ』と、教わった気がします」

西山氏自身、子供が生まれてからは家族との時間を最優先にしてきた。平日は多忙を極めていたものの、週末は仕事を入れず、毎週のように息子ふたりを近所の公園に連れていき、いっしょになって身体を動かす。その習慣は、子供たちが大きくなるまで続いた。業界では、「西山氏は、週末ゴルフに誘っても絶対に来ない」が定説になっていたほどだ。

「平日は妻に任せっきりなので、週末は僕が子供の相手をして、妻にはゆっくり休んでもらう。それも、家族円満の秘訣ですから(笑)。雨が降ってもカッパを着て、三人で出かけていましたよ。そのおかげで、息子たちとは今でも仲がいい。子供と一緒に過ごすというのは、やはり大切。今も、記念日は必ず家族四人そろって過ごします」

父子で過ごす時間は、西山氏の人生に彩も与えてくれた。

「小学生の頃、息子は野球をやっていたんですけど、最初はうまくいかなくてね。『こうなりたいという目標を持って、努力することで結果は変わってくるんじゃないかな』なんて話しながら、いっしょにキャッチボールをして。『お前ならできる』という言葉も、よく言っていましたよ。できると思わなければ、前に進めませんからね。おかげで6年生になった時に、息子はチームのエースナンバーをもらえました。その時はもう、泣いて喜びましたよ。……僕がね(笑)」

目的を達成するために、最短&最善の策を選ぶ

「父は豪快なところもあった人で、僕が小学校低学年の時だったかな、水泳の進級テストに合格したお祝いに何が欲しいか聞かれて、野球カードのアルバムをねだったんですよ。当時、スナック菓子のおまけについてくるカードを集めていて、それを入れるアルバムです。それで、父といっしょに近所の駄菓子屋さんに買いに行ったら、アルバムはスナック菓子を買って、当たりが出ないともらえないと言われた。実は僕、知っていたんですけどね(笑)。そうしたら父が、『スナック菓子はダンボール箱単位で仕入れていますよね。ダンボール1箱につき、少なくてもひとつは当たりが入っているはずだから、ダンボール2箱分買います』って。アタリが出るまで買い続ける…ではなくて、確実に手に入る方法を選んだわけです。子供ながらに、『なるほどな』と思いました」

 目的を達成するのに、最短で最善の策を選ぶ。西山氏は、「息子たちには、やりたくないことに時間を費やすのではなく、好きなことに力を注いでほしい」というが、それもまた、この時の教えが根底にあるのかもしれない。

「その後、父の会社は倒産し、生活は一変しましたが、その時の悔しさが、僕の経営者としての原動力の一つになったのは間違いありません。父からは、本当に多くのことを学びました」

プライドは、“立場”にではなく“目標”に対して持つ

最短最善の道を選んだつもりでも、目的を達成できず、失敗することはもちろんある。その時に、「何が悪かったのか、矢印を自分に向けなければ、次に進めない」と、西山氏。

「うまくいかなかった原因を外に向けているようでは、改善も、成長もありません。失敗を認め、問題点はどこにあるのかを内省すれば、次にどう行動すればいいか見えてきます。それを繰り返しているうちに、『できない』が『できる』に変わる。それは、人生でも、経営でも同様です」

ところが、プライドがじゃまをするのか、失敗を認められずにいる経営者は少なくない。

「あるゴルファーの話なんですが、調子が悪くて結果が出なかった時、ファンから『いつものスイングとここが違う』と指摘され、それをきっかけに復調したそうです。トップ選手なのに、アマチュアのアドバイスに、素直に耳を傾けたんですね。つまり、彼は、プロという“自分のポジション”にこだわるのではなく、“勝つためにどうすべきか”にこだわった。プライドを持つことは悪いことではないけれど、それをどこに持つか、なのでしょう。僕自身も心がけていることですが、息子たちにも、自分の立場ではなく、目標に対してプライドを持ってほしい」

それぞれに我が道を行くふたりの息子。西山氏は、最大級のエールを送りながら、その背中を見守っている。

【前編はこちら

Tomoyoshi Nishiyama
1966年東京都生まれ。1996年に外食産業に参入し、「炭火焼肉酒家 牛角」などを展開するレインズインターナショナルを創業。2012年、同社を売却し、13年、ダイニングイノベーションを設立。「焼肉ライク」、「BLUE STAR BURGER」、「やきとり家すみれ」、「Italian Kitchen VANSAN」をはじめ、さまざまなブランドの飲食店を、国内外に展開。

TEXT=村上早苗

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