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2021.09.05

【佐藤可士和×内田篤人】常にプレッシャーと対峙するメンタルの共通点とは?

現役引退後、五輪キャスターやCM出演など別フィールドの仕事を的確にこなす、内田篤人。生きづらい現代社会でも心のメーターを常時一定に活動を続けるメンタルの秘密を、新刊『ウチダメンタル 心の幹を太くする術』から抜粋、一部編集して紹介する。

佐藤可士和×内田篤人

内田篤人が積み上げてきた、試合のプレッシャーに打ち勝つメンタル術

内田 可士和さんのレベルまで行くと、きついなとか、メンタル的にしんどいなって思われたりしないですか。

佐藤 もちろんありますよ。失敗できないプレッシャーを感じます。アスリートの方も同じなんじゃないですか?

内田 はい、でもそのレベルは選手によって大きく変わります。やっぱり海外でプレーしている選手たちは根性があるし、プレッシャーにも強いなと思います。

佐藤 内田さんは?

内田 僕は、人とはちょっと違うのかな、と感じています。

佐藤 そうなんだ。どんなふうに?

内田 よく「メンタルが強いですね」「どうすれば強くなれますか」って聞かれるんですが、僕はメンタルを強弱で考えたことがないんです。イメージでいうと上下です。うまくいっても喜びすぎない、うまくいかなくても凹みすぎない。

佐藤 ゴールを決めたり、チームが優勝しても喜びすぎない?

内田 そうですね。上下動をなくそう、と決めてから勝ってもあんまりうれしくないな、って感じるようになりました。サッカー選手として生きるには悲しいなあ、と思ったこともあるくらい、その感覚は強いです。

ATSUTO UCHIDA

内田篤人/ATSUTO UCHIDA
元プロサッカー選手。1988 年3月27日生まれ。静岡県田方郡函南町出身。清水東高等学校から鹿島アントラーズに加入。1年目の開幕戦から右サイドバックのレギュラーに定着し、Jリーグ3連覇を達成した。10代からサッカー日本代表にも選出される。2010年にドイツ・ブンデスリーガのシャルケ04へ移籍し、チャンピオンズリーグベスト4、ドイツカップ優勝など、数々の実績を残す。著書に『僕は自分が見たことしか信じない』『淡々黙々。』『2 ATSUTOUCHIDA FROM 29.06.2010 Photographs selected by 内田篤人』などがある。引退後は、JFA ロールモデルコーチを務める。また、『報道ステーション』水曜日のレギュラーキャスターや、SAPPOROやユニクロのCM出演、LIXILのSDGsアンバサダーなど、多方面で活躍中。

佐藤 それはマインドをわざとそっちに持っていくのか、それとも本当にうれしくなくなったのか、でいうとどっちなんですか?

内田 持っていくほうですね。ですからうれしいことはうれしいんです。表現が難しいですけど、「スー」っていうイメージです。

佐藤 チームメイトは違うでしょう? 同じ?

内田 同じではないですね。サッカーでは、例えば大一番とかに「頑張ろうぜ!」「ワールドカップ行こうぜ!」みたいなことを言い合って鼓舞することがあるんですけど、僕は心の中で「行こうぜって言って勝てるわけじゃないでしょ」「普通に、いつも通りにやればいいじゃん」って思っちゃうんです。力みすぎているのが合わないのかもしれないです。

佐藤 確かにあまりアスリートにはいなそうなタイプですね。

内田 ただ、最初からこうだったわけではなかったんです。むしろ19、20歳くらいのときはストレスで吐きながらプレーしていましたから。

佐藤 本当に吐いてしまうわけですか。

内田 はい、ピッチで。家でもあったんですけど。鹿島アントラーズは当時、日本ではもっとも強いクラブでしたから、チームが不調とかものすごくパフォーマンスが悪いみたいな経験が多いわけではなかった。その点でいえばむしろポジティブなことが多かったはずです。それでもストレスを感じる、ということは、「いいことであっても心身にはストレスになるんだ」と思ったわけです。つまり、良くても悪くてもストレスになるんだから、試合に勝とうが負けようが、上下の振れ幅を少なくしたほうが生き残っていけるんじゃないかな、と考えるようにしました。

デザイナー佐藤可士和の“カシワメンタル”とは?

佐藤 僕はそこまでではないかもしれないですけど、アスリート的な感覚はあるんですよ。仕事の量も多いし、結果を出さなきゃいけないといつも思っている。でも自分一人で全部はできないし、協働していくチームを良い状態にしなきゃいけないとも思っています。メンタル、という感覚ではないけど、結果にコミットしていくという意味で、アスリートのような気持ちはあります。

内田 勝ち負けに責任を持つみたいな感覚ですね。

佐藤 昔は特に一喜一憂していましたけど、最近はだいぶ感じなくなったかもしれないです。その安定は大事だな、と常に意識してはいます。僕はプレイヤーでもありながら、今はマネージャー的でもあるので冷静な判断が求められます。安定させることができなくて判断がブレてはいけない立場なわけです。結局、どうすれば冷静な判断ができるかにかかっています

内田 選択をミスしないように。

佐藤 絶対にミスできないですからね。プレッシャーを感じすぎても判断を間違えてしまいますから。

内田 そのために何か意識していることはありますか。

佐藤 僕の場合は身体を動かすことで落ち着くんですよ。パーソナルトレーニングに通っていて、体幹を整える感覚でやっていくとスーッと心も頭もすっきりします。若いころは、それこそずいぶん徹夜をするとかコンディションがめちゃくちゃだったんですけど、今はきちんと寝る時間を確保するとか、身体の部分で安定させています。ちょっと疲れていたら、身体を動かしてから、とか、寝てから判断をする。そこにはかなり気を使っています。

大企業を牽引する一流経営者にも共通するクリエイターの精神性

内田 なるほど。可士和さんのクライアントには一流の経営者も多いですが、そういう方はどうですか。

佐藤 みんな強いですよ、経営者の方は。

内田 (ユニクロの)柳井さんとか。

佐藤 強いです。強くないとトップになれないんだろうな、と思っています。

内田 トップになる方って、どこかぶっ飛んだところが必要だっていうイメージがあるんですけど、それはどうですか。

佐藤 そうですね。経営者といってもみなさん違いますから一概にはいえないですけど、創業者の人は特にすごいですね。ちょっと語弊があるかもしれないですけどやっぱり普通じゃないですね。

KASHIWA SATO

佐藤可士和/KASHIWA SATO
日本を代表するクリエイティブディレクター。博報堂から2000年に独立し、「SAMURAI」を設立。「ファーストリテイリング」「楽天」「セブン-イレブン」「日清食品」「HONDA」など、名だたる企業のブランドコミュニケーション戦略、ロゴデザインなどを手がけている。

内田 普通じゃないですよね。普通のことをしていたら普通の結果しか出ない。

佐藤 柳井さんもそうですし、楽天の三木谷(浩史)さん、日清食品の安藤(徳隆(のりたか))さん。安藤さんは創業家の3代目になるんですけど、僕は彼らをクリエイターだと思っています。経営者は「会社を経営する」という絵具を使って、絵を描いている。表現者でもあるわけですね。

内田 形になるわけだ。

佐藤 そうですね。僕はデザインというツールでモノを作り、彼らは企業の活動でモノを作るクリエイターだろう、と思いますね。

内田 なるほど、そうですね。人とは違うかもしれないけど、それも悪いことじゃないんですね。

ーー対談の全容はもちろん、内田篤人さんの最新刊『ウチダメンタル 心の幹を太くする術』では、内田さんが実践し続けるメンタル統制メソッドを公開!

 

ウチダメンタル書影

『ウチダメンタル 心の幹を太くする術』
幻冬舎刊/¥1,650
鹿島アントラーズやサッカー日本代表、そしてドイツで活躍した日本を代表するサイドバック、内田篤人。現役を引退した後も、コーチ業のみならず、報道番組のレギュラーやCM 出演、それに五輪キャスターなど、多方面で活躍している。どんな仕事でも順応し、クライアントの要求に応えられるのは現役時代から培ってきたメンタル術にある。内田氏は心のメーターを常時一定にすることによって、重圧や怪我と長年向き合ってきた。生きづらくストレスがかかる現代社会だからこそ必要な、ウチダ流のメンタル統制メソッドがこの一冊に詰まっている。

PHOTOGRAPH=Yuichi Sugita(POLYVALENT)

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