TRAVEL

2026.03.11

ハワイの旅が変わる、“フリースタイル・クルージング”体験記【前編】

オワフ・ハワイ・マウイ・カウアイ…このハワイ4島を、クルーズ船をベースにたったの7日間で男性美容研究家の藤村岳が遊び尽くしてきた。“プライド オブ アメリカ”で叶える、多忙なリーダーのための“賢い”ハワイ旅とは。【ハワイクルーズ体験記:前編】

海とサップ

米国籍客船で大人のハワイ旅へ

ハワイには何度も通ってきたが、ずっと「まだ奥深さがある」と感じていた。オアフ・ワイキキのきらびやかさやノースショアの美しさを味わったし、ハワイ島・マウイ島・カウアイ島にもそれぞれ行った。でも、それだけではどこか物足りない。そんな思いから選んだのが、7日間で4つの島を巡るクルーズという、少し“大人仕様”のハワイ旅だった。

仕事に追われる日々のなかで、島への移動ごとにスーツケースを開け閉めし、空港の列に並ぶ旅にはどうしても腰が引ける。せっかくまとめて休みが取れたのなら、移動そのものも自分を甘やかす時間に変えたい。そこで白羽の矢を立てたのが、ノルウェージャンクルーズライン(以下、NCL)の米国籍客船“プライド オブ アメリカ”だ。

全長約280メートル、総トン数8万トン超の船体は、従来型のクルーズ船というより、明確なコンセプトのもとに設計された海に浮かぶ戦略拠点とも言うべき存在。船を拠点にハワイ4島を効率よく巡るという発想は、旅好きのビジネスパーソンの感性にこそ、しっくり来るはずだ。

動く“ベースキャンプ”を拠点にハワイ4島へ

乗船してすぐに感じたのは、「クルーズ=堅苦しい」というイメージが拍子抜けするほど軽やかに裏切られたことだ。正装必須のフォーマルナイトもなければ、「この時間にここにいなければならない」というような細かい縛りがほとんどない。

NCLが掲げる“フリースタイル・クルージング”は、服装も食事も過ごし方も、ゲスト自身の裁量に委ねるスタイル。これまで豪華客船に対して抱いていた、良くも悪くも“前時代的な船旅”のイメージが早々にアップデートされた。

日頃スーツという“鎧”をまとっている時間が長い人ほど、ドレスコードが緩やかであることはそれだけで大きな解放だろう。タキシード一式よりも、リネンシャツやアロハシャツを何枚か忍ばせた方が、今の時代の軽やかな旅にはよく似合う。

もちろん、ディナータイムにスーツとドレスでビシッと決めた老夫婦の姿を見かけると、思わず見惚れてしまう。だがそれは「ルールだから着ている」のではなく、「装いたいから装っている」人たちの余裕のある佇まいだ。そうした主体性が尊重される自由さこそ、大人のオフタイムを豊かにしてくれる。

圧倒的な“タイパ”と時間の再配分

さて、久しぶりに1週間超えの旅ということで、クローゼットの奥から94Lのスーツケースを引っ張り出してきた。もしこれが飛行機で島から島へ移動する旅だったら、この大荷物をフライトのたびに詰め直し、空港のターンテーブルを眺めながら待つ時間を何度も過ごすことになる。

しかし、クルーズならその煩わしさが最初の一度で済む。ハンガーにかけたジャケットも、洗面台に整列させたスキンケアアイテムも、下船まで動かさなくていい。寝ているあいだに船は次の島へと進み、朝カーテンを開けると、そこにはもう別の景色が広がっている。

空港で並んでいたはずの時間が、そのままデッキでのシャンパンタイムや、早朝のコーヒータイムに上書きされていく。この“時間の再構築”こそ、クルーズ旅がもたらす本当の贅沢だと感じた。

マウイ島とカウアイ島で用意されている“オーバーナイトステイ(一晩停泊)”も、旅の質を一段引き上げてくれる仕掛けだ。多くのクルーズが夕方に慌ただしく出港してしまう中で、夜の島をゆっくり味わえるこの時間は貴重だ。

話題のレストランを訪れたり、ワインと共に時間を忘れて友人と語り合ったり、地元のバーで隣り合った人と自然に会話が生まれたり、――そんな夜の愉しみを味わえるのは時間に追われない移動手段を選んだからこそだろう。

米国船籍ゆえの「最短ルート」という特権

“プライド オブ アメリカ”のもうひとつの強みは、船の“国籍”にある。通常、外国籍の客船がアメリカ国内の港だけを連続して巡ることは法律で禁じられており、一度メキシコやカナダといった別の国の港に寄らなければならない。となると、“シーデイ(洋上航行だけの日)”が挟まれて、何もしないという優雅だが、やや旅の効率が落ちてしまう日も出てくる。

しかし、この船は名前の通り米国船籍。ハワイ諸島だけをダイレクトに、無駄なく巡ることができる。その独自の強味が、7日間で4島という濃密な旅程を可能にしている。忙しい読者にとって、移動でムダな1日を費やさないというのは、何より重要な条件になってくるはず。そうした意味でもこの船は、現代的で、且つ合理的な洗練された設計といえる。

ペントハウス

旅の序曲を彩る優先チェックイン

エグゼクティブ層なら、キャビンはスイート以上を選びたい。乗船時の体験からして、旅のトーンが変わるからだ。専用ラウンジで軽いランチやコーヒーを楽しみながら、座ったまま淡々とチェックインが進んでいくプロセスは、飛行機のビジネスクラス以上に“旅の序章”らしいゆとりがある。

そこで渡される1枚のカードは、客室のキーであり、船内における唯一の決済手段でもある。これを首から下げるリール付きホルダーに収めた瞬間、今回の旅モードにスイッチが入った。あとは、バトラーとコンシェルジュに細かな段取りを預けてしまえばいい。

「自由がなさそう」という誤解

「クルーズは自由に動けないのでは?」と心配する向きもあるだろう。しかし、今は港に着いた瞬間からUberなどの配車アプリを呼び出せる時代。レンタカーの列に並ばなくとも、自分のペースでどこへでも足を伸ばせる。

ワイン

筆者のように運転が得意でない人や、ディナーでワインをしっかり楽しみたい人にとって、ハンドルを握らなくていいというのは大きな安心につながる。移動のストレスを極力減らしつつ、自分の足で“島の空気”を感じに行ける自由度。そのバランスがちょうどいい。

15以上のダイニング、その時の気分で選び取る自由さ

食事の時間もテーブルも指定されないのが、この船の流儀だ。船内には15を超えるダイニングが点在し、ゲストの「今、これを食べたい」という本能に即座に応えてくれる場所があるのはなんともありがたい。すべてのレストランを回れたわけではなかったが、特に印象に残ったところをご紹介したい。

【キャグニーズ・ステーキハウス】最高級の「認定アンガスビーフ®」と洗練された接客

筆者が毎朝、通ったのがここ。朝食はスイート宿泊者に限られた空間となり、スペシャリティ・レストランとしての閑静な環境は一日の計を立てるに相応しい場所だった。薔薇を象ったスモークサーモンやアボカドと海老のトーストは、特にお気に入り。フレッシュジュースとコーヒーで一日のスタートを切っていたのが懐かしい。

そして、ディナータイムになれば、その空気は一変して重厚な社交場となる。ここで供される“認定アンガスビーフ®”は、噛みしめるたびに肉本来の力強い旨みが溢れ出し、ソースはいくつか選べ、特製のベアネーズソースが絶品。その味わいをさらに高次元へと引き上げる。

そしてここの魅力はレセプションからウェイター、マネージャーまで、彼らのプロフェッショナルなホスピタリティだ。本当は違うレストランも体験すべきだったが、あまりにも居心地がよく、毎朝、通ってしまった。彼らに会うためだけでも通う価値はある。

【キャデラック ダイナー】24時間いつでも、50年代の古き良きアメリカへタイムスリップ

一方で、真夜中にふと小腹が空いた時は、24時間営業の“キャデラック ダイナー”が心強い。50年代のロックンロールが流れるレトロな空間ですする温かいスープや、あふれんばかりのトッピングが施されたジューシーなホットドッグ。これらは高級料理とはまた別の意味で、胃袋と心を同時に満たしてくれる“多幸感”の塊だ。時にはこうしたファストフードに溺れる時間も必要だろう。小さい子どものいる家族と共に参加したなら、ここはかなり重宝する。

【TEPPANYAKI】シェフの妙技が光る、熱狂のダイニング・シアター

さらに、日本人の舌を喜ばせつつエンタテインメント性も兼ね備えているのが“鉄板焼き”だ。イースト ミーツ ウエストと銘打った、アジアフュージョン料理の一角にあるこちら。鉄板焼きとはいうものの、日本のものとはかなり違う。味噌汁が最初に出て、一番先に焼き出すのがなんとガーリックライス。日本人の感覚では、シメに出てくるものがこのタイミングで出てくるのはかなり斬新。目の前で繰り広げられるシェフの軽快な包丁パフォーマンス、始終繰り出される歌と踊り。ジュージューと音を立てるステーキや魚介の香りに、ゲストからは歓声が上がる。鮨もそうだが、グローバル化して“SUSHI”という存在になることで、勝手が変わり、むしろおもしろく感じてしまう。

まじめな食事に飽きたら、このローカライズされたTEPPANYAKIをご賞味あれ。その“熱狂”こそ、旅の愉快なスパイスになるだろう。

【ジェファーソンズ ビストロ】本場パリの雰囲気そのままに、優雅なひとときを

気合を入れたい夜はフレンチの“ジェファーソンズ ビストロ”へ。店内へ一歩足を踏み入れれば、そこには白のリネンが端正に整えられたテーブルが並び、洋上であることを忘れさせる優雅な空間が広がる。濃厚なオマール海老のビスクや伝統的なエスカルゴ。上質なワインと共に楽しむクラシックなフランス料理はハワイの陽気さとはまた別の贅を尽くした安らぎをもたらしてくれた。

こうした多様なダイニングを、自身のその日のコンディションに合わせてポートフォリオのように使い分けること。それこそが、クルーズ・ライフを攻略する醍醐味である。

後編では筆者がいかに各島を楽しんだのかを詳細にレポート。新しくも懐かしい、ハワイ各島の観光についてご紹介しよう。

TEXT=藤村岳(男性美容研究家)

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