オワフ・ハワイ・マウイ・カウアイ…このハワイ4島を、クルーズ船をベースにたったの7日間で男性美容研究家の藤村岳が遊び尽くしてきた。“プライド オブ アメリカ”で叶える、多忙なリーダーのための“賢い”ハワイ旅とは。【ハワイクルーズ体験記:後編】。
100時間の上陸体験で、自分を“再起動”
クルーズ旅の最大の愉しみが、各島でのエクスカーションだ。移動やパッキングのストレスをすべて船に預けてしまえるからこそ、上陸した瞬間から持てるエネルギーを“遊び”に全振りできる。
マウイ島──ハレアカラ山頂で、時間の流れを考える
2日目に到着するマウイ島で筆者が選んだのは、標高3055メートルの聖地・ハレアカラ山でのサンセットツアーだった。ビーチでは容赦なく照りつける日差しも、山頂では一転して凍えるような冷気の中で心を灯す火に変わる。
雲海の向こうへゆっくりと沈んでいく太陽。オレンジから紫、やがて深いネイビーへと光が空へと溶けていく自然のグラデーションは、言葉を探すのをやめてしまうほど静かで、力強い光景だった。
ハワイには、英雄・マウイが太陽を捕まえ、「もっとゆっくり動いてほしい」と頼んだという神話がある。その話を“知識”としては知っていたが、ハレアカラの夕暮れを眺めて、初めてストンと腑に落ちた気がした。
「時間の流れを、自分の身体に引き戻す」という体験は、スマホまみれの日常ではなかなか得られない。この夕日を見ただけでも、マウイに一晩滞在する価値があると感じた。
ハワイ島──火山とクラフトビールと。オンとオフを切り替える
ハワイ島では、ヒロとカイルア・コナの二ヶ所に寄港する。ヒロでは、ユネスコ世界遺産にも登録されているキラウエア火山をめぐる6時間ほどのボルケーノツアーへ。白い蒸気を噴き上げる大地と、どこまでも続く黒い溶岩台地が「地球は生きているんだ」という当たり前の事実を、かなり直接的な形で突きつけてくる。
一方、カイルア・コナではあえてツアーに参加せず、自分の足で街を歩いてみた。部屋のカテゴリーが上のクラスなら優先的に乗船できるタグボートで上陸すると、すぐ目の前にハワイ諸島最古のキリスト教会・モクアイカウア教会と、ハワイ王族の夏の離宮として知られるフリヘエ宮殿が現れる。小さなショッピングモールもあり、コンパクトながら歩いて回るにはちょうどいいスケール感だ。
この日の筆者の最終目的地は、“コナ・ブリューイング”のパブ。地図アプリを頼りに辿り着き、まずはウェイトレスおすすめのココブラウンエールで乾いた喉を潤す。2杯目には、季節限定の“ピンクブーツブレンド”をオーダーした。
松のような香りとシトラスの風味が絶妙に調和した一杯は、まさにハワイの大地と空気を凝縮したような味わい。デッキで潮風に吹かれながら飲む缶ビールもいいが、タップから注がれるフレッシュなクラフトビールを緑に囲まれた空間で味わう時間は、オンとオフをふっと切り替えてくれた。
カウアイ島──“庭園の島”で童心に返るジップライン
「庭園の島」と呼ばれるカウアイ島。ナウィリウィリの港からビーチまでは徒歩10分強で、無料シャトルも出ている。ワイメア渓谷やシダの洞窟などの定番スポットは、その人気ゆえ早めの予約が賢明だ。
ちなみにシダの洞窟は現在、地盤強化の関係で内部へは入れず、遊覧ボートで近くの展望デッキから眺めるスタイルになっているという。そこで筆者が選んだのは、童心に返ることができる“ジップライン”だった。
ハーネスを装着し、熱帯の森を時速数十キロで滑空する。風を切りながら、鳥になったような視点で原生林を見下ろす高揚感は、日々のプレッシャーを一気に洗い流してくれた。合計7本のコースはどれも工夫されていて、単調さを感じない構成だ。驚いたのは、かなり年配のご夫婦が楽しそうに参加していたこと。年齢を理由に、やりたいことを諦めないという姿勢にこちらの方が勇気をもらった。このツアーには最後に天然のわき水スポットに立ち寄るので、ダイブして泳ぐ人は水着で参加するのがいい。
パーソナルな聖域としてのキャビン

クルーズを本気で楽しむなら、キャビン選びには妥協しない方がいい。エグゼクティブ層なら、広いプライベートバルコニーを備えた“オーナーズスイート”や“ペントハウス”を選ぶべきだ。
そこは誰にも邪魔されないワークスペースであり、最高のリカバリー拠点であり、ときに人生やビジネスの次の一手を考えるための“思索の小部屋”にもなる。バルコニーで波の音をBGMにメールを片付け、あとはバトラーに好みのドリンクを頼めばいいという優雅さは何ものにもかえがたい。
また、前述の優先チェックインやタグボートや下船時のファストパス的な扱いなどがあり、旅の質が確実に上がる。
人気の高い上位カテゴリーから順に埋まっていくのがクルーズの常。時間が確保できたらすぐに予約しておくのが賢明だ。
マンダラ・スパで「土台」から整える
美容のプロとして、この船でどうしても見ておきたかった場所がある。数々の賞を受けているスパ“マンダラ・スパ”だ。ここは単なるリラクゼーション施設ではなく、“洋上のリトリートセンター”と呼びたくなる場所だった。
ロミロミで実感する、「強さ」だけではない技術
筆者が選んだのは、ハワイ伝統のロミロミをベースにした100分のコース。担当してくれたのは男性セラピストで、体格こそがっしりしていたが、圧のかけ方は驚くほど繊細だった。
ロミロミはひじや前腕を使い、筋肉の深部にじわじわとアプローチしていくスタイルが特徴的だが、ここで大切なのは“強さ”ではなく“抑揚”だ。圧の入れ方と抜き方、そしてそのリズム。いずれも絶妙で、施術後にありがちな揉み返しがまったくなかった。
男性はつい「強く押してもらえば効く」と思いがちだが、それは半分正解で半分間違いだ。きちんとした技術に裏打ちされた“強さ”には、施術後の体の軽さという結果がついてくる。これがちゃんとできないと、揉み返しという地獄が待っている。
顔つきが変わる「土台美容」
施術後、鏡の中の自分を見てまず感じたのは、「顔の厚みが一枚剝がれた」ような軽さだった。血行が良くなったことで肌色はワントーン明るくなり、むくみもすっきり。
しかし、それ以上に印象的だったのは、肩や首の可動域が広がったことだ。巻き気味だった肩が自然と開き、首が少し長く見える。その結果、顔つき全体がシャープに。これは高価なクリームや美容液でも作れない変化だ。
スキンケアやメイクが“表面”からのアプローチだとすれば、ロミロミのようなトリートメントは“骨格や筋肉という土台”へのアプローチ。土台が歪んだままでは、どんなに上質なコスメを重ねても、出せる結果には限界がある。旅のスパを贅沢ではなくメンテナンスとして捉えると、その立ち位置が一段変わって見えるだろう。
海の上という“非日常”がもたらす効き方
また、海上というロケーションもトリートメントの効き方を後押ししている。ゆっくりと流れていく海面、船のかすかな揺れ、ほのかに漂う潮の匂い。いずれも現実から距離を置かせてくれる要素だが、不思議と心は静かに落ち着いていく。
美容の現場では、自律神経が整うと肌の調子が上向くという話をよくする。マンダラ・スパでの体験は、それをそのまま体感したような時間だった。過緊張気味の現代のリーダーにこそ、「たかがマッサージ」と切り捨てず、一度きちんと体験してみてほしい。
旅の進化系としてのハワイクルーズ
さて、楽しかった旅もこれにておしまい。ハワイの海を何度見てきたかもう数えきれないのに「この旅の終わり方は、ちょっと特別だな」と今回、ふと感じた。
ホノルルに戻る最終日の朝、早起きして陽が低いうちにバルコニーに出ると、静かな港にゆっくり滑り込んでいく船。遠くにダイヤモンドヘッドのシルエット、これからにぎやかになるであろうホノルルの街。見慣れたはずの景色なのに、ほんの1週間前のことなのに、4つの島を巡って戻ってくると、“再会”したかのような感覚になった。
マウイの夕陽に時の流れを改めて教えられ、ビッグアイランドの火山に地球の鼓動を見せつけられ、カウアイの森を子どものように無邪気に滑空した。そのどれもが、ただの観光スポット巡りではなく、自分の中のどこかを少しずつ揺さぶる体験だった。
キャビンに戻れば、そこにはいつものバルコニーがあり、決まった場所に整然と並べた服とスキンケアアイテムが待っている。浮き足だった“旅”というより、洋上の“アジト”に帰ってくる感覚だった。移動のストレスは極限まで削ぎ落とされ、代わりに積み上がっていくのは、深く濃く刻まれた記憶ばかり。
この“プライド オブ アメリカ”は、一年を通してホノルル発着でハワイ4島と5つの港を巡る、唯一無二の存在だという。それは単にスケジュール的な“便利さ”の話ではなく、「いつでも、思い立ったときに、自分のテンポでハワイの奥行きに触れられる」という心強さでもある。
次の休暇には、ただワイキキのビーチチェアに身を沈めるだけでなく、自分だけの“動くベースキャンプ”を持ってみるのも悪くない。お気に入りのリネンシャツを数枚と仕事用のラップトップをスーツケースに詰め込んで、船に乗り込んでみてほしい。

戻ってくる頃には、同じ景色のはずのホノルルが、ほんの少し違って見えるはずだ。その小さな変化こそ、大人の旅がもたらすいちばん贅沢なおみやげだと、筆者は思っている。
このクルーズは、単なる観光旅行ではなく、移動のストレスを極限まで削ぎ落とし、体験の純度を高めた“ハワイ旅の進化系”だと感じた。重いスーツケースは船に預け、時間の主導権を取り戻す。次の休暇には新しいハワイを試してみてはいかがだろうか。
【Ship Data】 プライド オブ アメリカ(Pride of America)
総トン数:8万439トン、全長:280.6m、全幅:32.2m、乗客定員:2180名(1室2名利用時)、乗組員数:927名
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ノルウェージャンクルーズライン




















