スペイン東部の地中海に浮かぶマヨルカ島。その島のホテルが軒並みハイレベルだと、2024年に始まったホテルの格づけ「ミシュランキー」によって顕著になった。スペイン国内で97軒が“鍵”を獲得し、うち19軒がマヨルカ島に集中していたのだ。【特集 死ぬまでに泊まりたい島ホテル】

ミシュランキーが乱立するスペイン・マヨルカ島へ!
マヨルカ島のリゾートとしての歴史は長い。19世紀にはショパンが恋人と過ごした島として知られ、20世紀にはモナコのレーニエ大公がグレース・ケリーとハネムーンで訪れた。元より英国やドイツからの旅行者が多いが、クルーズ寄港地としても利便がよく米国人気も根強い。背景としては、“ヨーロッパのハワイ”と呼ばれる圧倒的な気候のよさがある。年間300日以上が晴天。ターコイズブルーの澄んだ海は息を呑むほどの美しさ。山の絶景も素晴らしく、トラムンタナ山脈は世界遺産に認定されている。
自ずとホテルは増え続け、高級化も加速。2000年に5つ星ホテルは13軒しかなかったが、2025年には50軒以上に。精鋭が揃い、2024年の「ミシュランキー」では4軒が2キー、15軒が1キーを獲得した。ここでのポイントは、スペイン「ミシュランキー」の調査員はセンスがよい捻くれ者と思われることだ。他国で王道なラグジュアリーホテルが鍵を多く獲得するなか、スペインのラインナップはユニークなホテルが目立つ。2キーにテントが入ったり、3つ〜4つ星ホテルも多かったりする。デザインへの着目度も高く、マヨルカ島も然り。特に歴史ある建物のリノベーションが秀逸で、2キーの4軒も洒脱に蘇っている。
例えば世界中の厳選ホテルが名を連ねる「ベルモンド」に加盟する「ラ レジデンシア」は、今もその土地の趣に溢れている。ホテルがあるのは芸術家の居住地となってきた島北西部の村デイア。オリーブの木が立ち並ぶ村は蜂蜜色の石壁を持つ古い家が印象的だが、ホテルもしっくりなじんでいるのは16〜17世紀に建てられた邸宅を改築した場所だから。なかには地元のアンティークや芸術品が揃い、5つ星ホテルの優雅さに古きよき島の空気感が入り混じる。
同じ改築でも新たなデザイン性をより融合させているのが「キャップ ロカット」だ。パルマ湾に面するその建物は、元は19世紀の要塞。オーナー兼建築家が、狙撃場や監視塔を生かしながらセンスよく改築した。なお、このホテルも含め2キー獲得ホテルのうち「ラ レジデンシア」以外は年齢制限(14〜15歳以上)を設けているのも特徴だ。大人だけが知る贅沢な隠れ家と位置づけられている。
昨今は持続可能な観光への注目が高まり、政府は自然地域を保護し、影響を受けやすい場所でのホテル建設の制限規制を実施。今、美しい景観を望む鍵つきホテルは貴重さを増し、慕われ続けることが予想される。
※現地事情は「ラ レジデンシア」に取材。
1.Cap Rocat|キャップ ロカット

海の絶景と元要塞の迫力が融合する唯一無二の空間
元要塞ホテルの敷地面積は約11万坪。海岸線に沿って客室やレストランが広がり、テラスからの地中海の眺めが抜群だ。プライベートビーチや海水プールを備え、要塞の趣とリゾートの絶妙なコントラストを味わうことができる。スイートルームには元射撃場や洞窟のような部屋があり、非日常感は満点。スペイン富裕層の間ではテラスを貸し切ったパーティも人気。宿泊が15歳以上なのは、ワイルドな造りのため子供が歩くには危ないという理由もありそうだ。

住所:Ctra. d'enderrocat, s/n, 07609 Cala Blava-Llucmajor, Balearic Islands,Spain
TEL:+34 971-74-78-78
客室:30室
2.Hotel Can Ferrereta|ホテル カン フェレレタ

17世紀の豪邸をモダンなアートの館にリノベーション
島南東部のサンタニー村にあった17世紀の豪邸をホテルに改築。白を基調にモダンにデザインした客室には、プールつきスイートや庭つきスイートもあり。メインプールの隣にバーを備え、カクテルや食事を水着で楽しむことができる。白い石に囲まれた屋内温水プールもスタイリッシュ。館内にはスペインの著名アーティストの作品が点在する。同じくマヨルカ島にある5つ星ホテル「サント フランセスク ホテル シングラー」の姉妹ホテル。宿泊は14歳以上から。

住所:Carrer de Can Ferrereta,12,07650 Santanyí, Illes Balears,Spain
TEL:+34 971-90-59-05
客室:32室
3.Hotel Can Cera|ホテル カン セラ

石造りのアーチが映える12室のみの大人の隠れ家
パルマ大聖堂に近い旧市街に立つ17世紀の邸宅をホテルに改築。パルマ旧市街は貴族の居住地であったため美しい建物が残り、この邸宅もそのひとつ。中に入ると重厚な石造りのアーチが印象的で、緑豊かな中庭も備える。17世紀の空気感を残しながら、モダンな照明や陶器、アートを飾り、秀逸なデザイン性を見せる。全12室の隠れ家でありながらスパが充実し、各種トリートメントのほか、フィンランド式サウナやジャグジーを用意。宿泊は14歳以上から。

住所:Sant Francesc,8 07001 Palma de Mallorca,Spain
TEL:+34 971-71-50-12
客室:12室
4.La Residencia, A Belmond Hotel|ラ レジデンシア ベルモンド ホテル

芸術家の村に400年以上佇むマヨルカ島随一の老舗
1984年にマヨルカ島のラグジュアリーホテルの先駆けとして開業。蜂蜜色の石壁や梁のある天井を持つ客室が、16〜17世紀に建てられた邸宅を懐古させる。窓の外に広がるのは、岩肌が見える山や素朴な村の家々。敷地内でロバ(現在は4頭)を飼っているのも、このホテルの伝統だ。ロバはマヨルカ島のかつての農業様式を表し、地元の芸術や民話によく描かれてきた。ゲストの間でも人気で、触れ合って一緒に記念写真を撮るのが滞在のお約束となっている。

住所:Carrer son Canals, 07179 Deià, Illes Balears,Spain
TEL:+34 971-63-90-11
客室:73室
この記事はGOETHE 2025年6月号「総力特集:楽園アイランド・ホテル」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら