TRAVEL

2023.05.09

世界的建築家・坂茂の作品に泊まれる、広島のオーベルジュ「Simose Art Garden Villa」

2023年もホテルの開業ラッシュは続いている。日本初上陸のインターナショナルブランドをはじめ、環境に配慮した最先端機能を持つホテルや新たに誕生するブランドなどを厳選。今回は、広島・大竹の「Simose Art Garden Villa(シモセ アート ガーデン ヴィラ)」を紹介する。【特集 ホテル案内2023】

Simose Art Garden Villa

海辺の建築作品に泊まれる、アート・オーベルジュ

瀬戸内海沿いの自然美と、それに勝るとも劣らない建築やアートなど、造形美を鑑賞できるオーベルジュが広島県大竹市、晴海に誕生した。2023年4月に開業した「Simose Art Garden Villa」は、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞に輝く世界的建築家・坂茂氏が、すべての建物を手がけたことでも注目を集めている。

宮島や阿多田島を望む海岸線に面した4.6haの敷地に、美術館やレストラン、フラワーガーデン、別荘のような10棟のヴィラが点在。敷地内のいたるところに、季節の樹木が植えられ、森のような清々しい空気が満ちる。

「海に続く美術館を併設した西洋的なオーベルジュ、これほどまでの大きな作品と向き合った日々は、私にとっても一大冒険といえる時でした」と、建築内覧会で坂氏。

Simose Art Garden Villaの美術館エントランス

美術館のエントランス。枝を広げた大木のような柱が美しい。カフェスペースもあって憩いの場に。

広島県の実業家・下瀬家が蒐集してきたエミール・ガレやマティスなどの西洋美術、日本人形といったコレクションとともに、坂氏の作品を堪能できる機会はここでしか得られない。例えば、海岸線に建つ美術館。海と平行に3つの棟をミラーガラスの廊下で渡し、その前にはカラーガラスの可動式展示室が水盤の上にまるで浮かぶように配置される。

その他の新作にも、建築の未来を支える実験的な建築構法や最新の建築素材が使われる。なかでも注目されるのが、水辺のヴィラ5棟と「十字壁の家」。十字の壁にカラフルなボリュームを取りつけ、泊まって心躍る建築になっている。

Simose Art Garden Villaの「十字壁の家」

今回新たにデザインされた「十字壁の家」。

Simose Art Garden Villaのカラフルな室内

外壁の色と同系色を室内にも用いてカラフルに。

Simose Art Garden Villaのバスリビング

「十字壁の家」の3階はバスリビング。瀬戸内海を眺めながら檜風呂での入浴を楽しめる。

Simose Art Garden Villaのた「十字壁の家」の室内

ガラスブロックを配した「十字壁の家」の室内には、坂氏が手がけた家具や照明が配される。

さらに面白いのが、坂氏が過去に手がけた代表作も再現されていること。シャープアクオスのCMに登場した「壁のない家」、紙管110本を構造にした「紙の家」、「ダブルルーフの家」、家具を建物の構造にした「家具の家」の4棟。いずれも1990年代に建築界を揺るがした個性的な作品。建築愛好家なら誰もが一度は泊まりたいと願う建物ばかりだ。

Simose Art Garden Villaの「壁のない家」

すべての壁をなくした「壁のない家」。自然に溶けこむ開放感は格別。坂茂モデルの照明「紙のタリアセン」も。

Simose Art Garden Villaの「紙の家」

坂建築を象徴する再生紙の紙管を用いた「紙の家」。夕刻になると、S字状に配された紙管の間からこぼれる光が煌く。坪庭には露天風呂もある。

また、オーベルジュならではの、食の充実もこの施設の大きな魅力だろう。白金台の名店「OZAWA」が監修する料理は、瀬戸内や近郊の港で捕れる魚介類、広島の野菜を用いた優しい味わいのフレンチ。動物性脂肪を極力使わず、素材の香りや持ち味を引き出している。

「瀬戸内の自然とアートを愛で、広島の美味に舌鼓を打つ。そして建築博物館ともいえる施設を楽しんでほしい」と坂氏も薦める。

今回は「家具の家」、次回は「十字壁の家」と毎回違った建築に泊まる旅は、人生をより趣深いものにしてくれるだろう。

「シモセフレンチレストラン」

時間とともに移ろう瀬戸内の海景色を眺めながら食事を味わえる「シモセフレンチレストラン」。

Simose Art Garden Villaの料理

プリフィクススタイルのディナーの一例。前菜の車エビとトマトのゼリー寄せ、白アスパラの蛤ソース。鮮魚で作るメインは、金目鯛のソテーなど季節替わりで。

シモセ アート ガーデン ヴィラ/Simose Art Garden Villa
住所:広島県大竹市晴海2-10-50
TEL:0120-907-090
料金:1泊¥110,000~(2名1室利用時、2食つき、税サ込)
施設:ヴィラ10棟、フレンチレストラン、美術館

▶︎ Focus
アートや建築とともに楽しみたいのが、美術館に隣接する季節の草花が咲き乱れる「エミール・ガレの庭」や海山のパノラマ風景を見渡せる「望洋テラス」。宿泊者は、美術館閉館後もテラスから海辺の夜景を楽しめる。輝く工場地帯や釣り船の灯り、ライトアップされて幻想的な光を放つカラーガラスの展示室が一体となって唯一無二のイルミネーションに。

▶︎ Special
美術館が閉館になってからの幻想的な美術館の光景や建築を目にできるのは宿泊者のみ。

【特集 ホテル案内2023】
 

この記事はGOETHE2023年6月号「総力特集:秘密のホテル案内 未知なるステイ」に掲載。
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TEXT=中井シノブ

PHOTOGRAPH=鞍留清隆

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