京都には知られざる歴史を有する寺や庭も多い。普段はなかなか拝観できない名庭を巡り、奥深い京都の魅力をまとめてご紹介! ※GOETHE2022年11月号掲載記事を再編。
1.秀吉の出世はこの石から。開運を秘めた京都のパワースポット「慈受院門跡」
庭を愛で、自分を見つめなおす静かな時間が力をもたらす
正長元年(1428年)、室町4 代将軍足利義持の正室、日野栄子が創建。その後は宮家、摂関家の子女を迎え尼門跡寺院として継がれてきた。
「慈しみの庭と呼ばれるこの庭は、樹齢数百年の楠木がご神木。その楠木の下にある大きな石は、秀吉が座って瞑想したことで知られています。秀吉が、その後どんどん出世して、太政大臣にまで上りつめたことから、出世石とも言われています。そういう意味ではパワーをいただけるスポットですね」(烏賀陽さん)
2.ひと筋の光明を感じる、京都の名庭「大徳寺 瑞峯院/独坐庭・閑眠庭」
穏やかな自分に目覚める。静謐の時間を洛北の禅寺で
室町時代のキリシタン大名、大友宗麟(そうりん)公が菩提寺(ぼだいじ)として建立。方丈は天文4年(1535年)に建造された。
「この寺院では方丈南側の蓬萊式庭園・独坐庭、方丈北側にある閑眠庭のふたつのお庭にじっくり対峙していただければ。いずれの庭も開祖400年遠忌を記念して1961年に重森三玲が作庭したものです」(烏賀陽さん)
3.秀吉の野望が垣間見える、千利休が作庭した露地の庭「大徳寺 黄梅院 直中庭」
信長、秀吉、利休など歴史人物にも縁が深い戦国時代の寺
永禄5年(1562年)に、当時28歳だった織田信長が初めて上洛し、父・信秀の菩提を弔うために建立した黄梅庵。信長急逝後は秀吉が改築し、「黄梅院」と名づけた。
「秀吉はこのお寺を自分のものにすることで、信長の後継者は自分であることを示したかったのでしょうね。千利休に依頼して直中庭(じきちゅうてい)をつくるのですが、そこにシンボルマークである瓢簞の形の池をつくらせます。池にかかる石橋は伏見城の遺構です。日本庭園文化が華やかな時代だったことが読み取れます」(烏賀陽さん)
4.神宿る二ノ瀬の地に広がる、絶景の紅葉庭園「白龍園」
昭和の実業家が自ら作庭した鞍馬の隠れ庭
神々が宿ると伝わる鞍馬の手前、二ノ瀬の里・安養寺山麓に広がる庭園。1962年に京都の実業家・青野正一がこの地を手に入れ、整地開発して白龍園の原型を完成させた。作庭には当時の社員や青野の家族、地方の手伝い衆が携わり、造園会社など専門家には頼らなかったという。
「古い祠の跡が見つかった場所に白龍神社を興し、その後、庭をつくられたそうです。当時は一般には公開されていなかったのですが、現当主が美しい庭を多くの方に見ていただきたいと、春と秋のみ公開されています」(烏賀陽さん)