国内旅行の需要が増し、ホテルでの“滞在の質”に重きを置く人が増えた今日において、特に人気が高まっているのがスイートルーム。その今時の楽しみ方を探るべく、この度訪れたのは「東山ニセコビレッジ・リッツ・カールトン・リザーブ」。北海道・ニセコの豊かな緑を臨むスイートルームは、心と身体を癒すリトリートにこそふさわしい場所だった。
リッツ・カールトンの日本国内初ブランド
パウダースノーの聖地として知られる北海道・ニセコ町にある「東山ニセコビレッジ・リッツ・カールトン・リザーブ」。コロナ禍まっただ中の2020年末にオープンしたこともあり、知る人ぞ知るラグジュアリーホテルとして密かに人気を集めている。
ここは、リッツ・カールトンの最上級ホテルブランド「リッツ・カールトン・リザーブ」として世界で5軒目、日本では初となるホテル。選び抜かれた秘境の地に建ち、その自然に溶け込むような隠れ家的空間を提供するブランドであり、東山ニセコビレッジ・リッツ・カールトン・リザーブの場合は、日本古来の「花鳥風月」をコンセプトとしているという。
ホテルに到着し、エントランスを抜けると、眼前にニセコのシンボル・羊蹄山が鎮座する大自然が広がった。聞けば、ありのままの自然を生かすため、ホテル開業に当たって樹木を1本も伐採していないという。インテリアは温もりがありつつも洗練された印象で、暖炉を囲むように配置されたラウンジのソファに腰をかければ、友人の別荘を訪れたような落ち着きに包まれる。全50室と小規模でプライベート感を感じるのも、その要因のひとつではないだろうか。
ニセコの大パノラマを独占する贅沢
こちらのホテルのスイートルームは、窓から羊蹄山を臨む「羊蹄スイート」と、2ベッドルームの「東山スイート」があり、今回泊まったのは前者。部屋に入ると、リビングルームの窓一面にニセコの自然の大パノラマが広がり、富士山よりも富士山らしいシルエットの羊蹄山と対峙する。その絶景は感嘆の声がもれるほどで、ベッドルームに移動しても大パノラマは続き、まるで木々の緑が部屋の中までリフレクションしているような心地よい空間だ。
リビングルームに戻ると、ダイニングテーブルの上に、木箱に収められたウェルカムスイーツが、手書きのメッセージとともに置かれていることに気づく。この石造りのダイニングテーブルは8名がけと大サイズで、窓辺のソファセットも4名は座れる余裕が。「羊蹄スイート」は1ベットルームだが、コネクティングルームを使用することもできるという。パートナーと2人でもいいが、このリビングルームを拠点に、家族やグループで思い思いに滞在するスタイルに最適かもしれない。
ベッドルームには広々としたウォークインクローゼットのほか、これまた絶景の半露天のバスルームが。東山ニセコビレッジ・リッツ・カールトン・リザーブには、温泉の大浴場もあるが、このバスルームだけでも満足できそうだ。
温泉とエステで至福のリラックスタイムを
部屋を楽しんだあとは、露天風呂付きの大浴場温泉やトリートメントスイートを備える「スパ・チャシ・ラ・ソティス」へ。まずは、美肌の湯として温泉ソムリエが太鼓判を押す、ニセコ東山温泉の源泉を引いた貸切温泉(予約制で1組1時間¥3,300)で汗を流す。血の巡りをよくした後は、フランスで80年近い歴史を誇る老舗スキンケアブランド「ソティス」がプロデュースするエステコースを。全身を丁寧に、くまなくほぐし、希少な白樺エキスを配合し植物の力を最大限引き出したオーガニック認証のコスメを取り入れたフェイシャルエステを受ける。すべてが終わったあとは、肌が内側から潤い整ったのが、頬に当てた手触りから伝わってきた。
北海道の豊かさを感じる味覚体験
スイートルームでインルームダイニングを頼む手もあったが、ディナーはレストラン「ゆきばな」へ出向いた。こちらは、北海道の旬の食材をベースに、和のエッセンスを取り入れた創作イタリアン。今回は、アミューズ、前菜、パスタ、メインディッシュに、北海道余市町を拠点にするワイナリー「キャメルファーム」のワイン3種をペアリングするコースをオーダー。
特に印象的だったのは、5月中旬から6月に旬を迎える極太のアスパラガスをメインにした前菜。アスパラガスの甘味に、ニセコ産のモッツァレラチーズと生ハム、トマトサルサと、カナダで限られた時期にしかとれないメイプルシロップという、多様な味を重ねながらも口の中で調和する逸品で、そこに合わせた糖分無添加のスパークリングワイン「レガミ・ブリュット・ナチュレ・ドサージュ・ゼロ」もクリアな味わい。とても爽やかなペアリングだった。せっかくニセコまで来たのだから、北海道の大地が生み出す食とワインのマリアージュは堪能しておくべきだろう。
翌朝は、早起きをして、バスルームの湯船に湯をはり、ただひたすら羊蹄山の山肌を流れていく雲を眺めて過ごす。気づけば1時間近くも湯につかっていた。それでもまだ余裕があるため、窓辺のソファに寝転がり本を読む。特別なことは何もしないこの朝の時間が、実はこのホテルで一番の贅沢タイムだったかもしれない。
おなかがすいたところで、インルームダイニングで洋朝食をオーダーする。クロワッサンなどのパン、ナッツたっぷりのグラノーラ、生ハムやチーズの盛り合わせなど、朝から気分があがるラインナップに加え、シグネチャーメニューである「タラバガニのエッグべネディクト」も。これだけの量をダイニングテーブルに広げても余裕たっぷりなので、優雅な気持ちに浸れる。
ニセコといえば冬がシーズンであるが、日頃の疲れを癒やし、心が充足感に包まれるのは、夏の滞在だと確信できる。東山ニセコビレッジ・リッツ・カールトン・リザーブの羊蹄スイートは、寝ても覚めても、ニセコの自然と一体となれるような特別な時間が流れるサンクチュアリだ。
東山ニセコビレッジ・リッツ・カールトン・リザーブ
住所:北海道虻田郡ニセコ町曽我919-28
TEL:0136-44-3491
料金:羊蹄山スイート¥190,050~(1室1泊3名まで。夏季・朝食付き、税・サービス料込)
客室数:50室(内羊蹄山スイート6室)
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