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2022.06.19

絵画のような絶景と京文化に包まれる「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」──実は使えるスイートルーム案内

国内旅行の需要が増し、ホテルでの“滞在の質”に重きを置く人が増えた今日において、特に人気が高まっているのがスイートルーム。今回、訪れたのは「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」。京都の喧騒とは無縁の大人のためのスモールラグジュアリーホテルで、その楽しみ方を探る。「実は使えるスイートルーム案内」Vol.3。

別邸スイートには縁側をイメージしたエリアがあるタイプも。四季折々の景色に心を奪われる。

2022年にオープンした、オークラ初のスモールラグジュアリーホテル

水景の心地よい水音に誘われ、美しい回廊を進む。ホテルに一歩足を踏み入れると、日本庭園が目の前に現れ、時間の流れが変わるのを感じた。突如訪れた静寂とでもいうのか。京都の東西をつなぐ、丸太町通り沿いに面していることを一瞬忘れてしまうほどの没入感にどっぷりと浸れる、それが2022年1月20日に誕生した「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」だ。

京都・岡崎は京都市の都市部と東山山麓の間に位置し、平安神宮や南禅寺といった有名な神社仏閣をはじめ、京都国立近代美術館や京都市京セラ美術館などの文化施設が集まった文化的なエリア。また、琵琶湖疎水沿いの桜や紅葉など四季折々の風景などを楽しむことができるエリアでもある。

銀閣寺に代表される「わび・さび」、「風合い」、「調和」などの美意識や、「書院造り」「庭園」「水墨画」といった東山文化の概念が、ホテルの随所に散りばめられているので、そこに注目するとさらに滞在が奥深いものとなるはず。

水景と和紙を使った壁面が続く回廊が、旅への高揚感を高める夜のエントランス。

五山送り火の3つが見られる別邸スイート

「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」の総客室数は60室で、テーマは「東山に佇む山荘」。うち、8室が「別邸スイート」となる。北側に位置するスイートに足を踏み入れると、自動でカーテンが開き、金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)の境内や、東山に広がる自然が目に飛び込んでくる。大きな窓に面した縁側に座ると、その美しい光景に時が経つのも忘れるほど。親鸞聖人草庵跡と伝わる寺院「真宗大谷派岡崎別院(東本願寺岡崎別院)」の隣地に位置するため、借景は格別だ。

「別邸スイート」はツインとダブルがそれぞれ2階と4階にある。

お盆に帰ってきた先祖の精霊を再び送るという言い伝えで、京都を囲む5つの山に「大文字」、「左大文字」、「船形」、「鳥居形」、「妙法」をかたどった火を灯す五山送り火。実は「大文字」、「舟形」、「左大文字」の3つが見える位置にあるのがこの別邸スイートだった。朝は空気が澄んでいるため、はっきりとその3つを見ることができた。8月16日に行われる五山送り火では幻想的な雰囲気を味わえることだろう。

約70平米とコンパクトながらバルコニーを備えているので、客室に備えられた1860年創業、京都祇園の宇治茶専門店「祇園辻利」の宇治かぶせ茶をいただくもよし、ミニバー(無料)の飲み物をいただくもよし、ルームサービスを頼むもよし、1日をホテルの中で過ごすという大人の贅沢もいい。

インテリアデザインは乃村工藝社 RENSによるもので、杉やウォールナットなど木材は表情豊かな素材が使われ、周囲の豊かな景観と調和する絶妙な心地よさがある。圧巻なのは、ヘッドボードと天井に施された「HOSOO」による西陣織だ。通常の客室よりも贅沢にあしらわれ、見る角度はもちろん、時間帯によっても光の加減で見え方が変化する織りの豊かな表情を楽しめる。

そのほか、書家・川尾朋子氏の書や、中川木工芸中川周士氏の作品の大盆などの作品が。部屋ごとに異なるアートピースが配置されているので、再訪する楽しみにもなる。ホテル全体が小さなアートミュージアムのような趣きだ。

山荘から眺めた湖畔に映る水面を、独自の割り技で立体的表現した「HOSOO」による西陣織を施したヘッドボード。

こちらは4階のスイートルームの縁側。目の前に佇むのは金戒光明寺。そのほか、床の間をイメージしたエリアも。

リビングとガラス越しに繋がる開放的なバスルーム。アメニティはイギリス貴族御用達の英国ブランド「バンフォード」。オーガニック認定成分にこだわって作られたもの。また、低刺激・乾燥肌用スキンケアコスメ「プラスイ」のクレンジングや洗顔料、化粧水、ジェルも用意されている。手洗いは入り口とバスルームに2つ。

伝統工芸を担う後継者6人のプロジェクトユニット「GO ON(ゴオン)」とコラボ

ホテルのロビー、レセプションから、客室、そしてレストランの至るところで感じる上質な京都・東山の文化の空気の秘密。それはホテルのためだけに作られた工芸品の存在に他ならない。滞在するからこそ、その雰囲気に包まれる感触を味わえる。

伝統工芸を担う後継者6人によるプロジェクトユニット「ゴオン」は、細尾真孝氏(細尾 代表取締役社長)、八木隆裕氏(開花堂6代目)、中川周士氏(中川木工芸 主宰)、小菅達之氏(公長斎小菅5代目)、辻徹氏(金網つじ 職人兼代表取締役社長)、松林豊斎氏(朝日焼十六世)で構成され、今回ホテルと初のコラボレーションとなる。

伝統を受け継ぎ、新しい価値を生み出す、現代的な京の美や手仕事に注目すれば、ホテルを存分に愉しめる。別邸スイートは、中でもその妙を味わい尽くせる部屋といえる。

別邸スイートの一角を飾るのは、伝統的な木桶の製作技法を用いて、味わい豊かな木製品を数多く制作している「中川木工芸」の中川周士氏の作品。「柾(まさ)合わせ」という木の正目を合わせる桶指物の技法を用いた大盆は、美しい木の年輪の模様に見惚れてしまうほど。

エントランスホールにある書を手がけた書家・川尾朋子氏の作品がリビングに躍動感を与える。

客室の入り口に配されたルームナンバーが記された照明。長年伝承されてきた開花堂の茶筒の製法によって作られ、経年美化を楽しむこともできる。別邸スイートは漆が塗られた特別仕様。

京都ならではのひと皿を創造する「ヌーヴェル・エポック」

オークラ初となる「別邸」ブランドが指し示すのは、スモールラグジュアリー。ゆえに、レストランは日本のフランス料理を牽引してきたオークラフレンチの系譜を受け継ぐ「ヌーヴェル・エポック」一択に勝負をかける。The Okura Tokyoでのオープンに続き、2店目。

腕を振るうのは、ホテルオークラ東京(現:The Okura Tokyo)のフレンチで研鑽を積んだ山下亮一シェフ。京都・岡崎の地では、地物である加賀茄子、万願寺とうがらしなど、季節の京野菜をふんだんに取り入れつつ、和と洋の融合をはかる。移ろう京都の四季を表現したひと皿ひと皿に心躍る。

料理を引き立てる空間にも目を凝らしてほしい。季節ごとにさまざまな表情を見せる庭園はまさに最たるところ。春夏秋冬を味わうにうってつけの場所だ。また、老舗の創作竹芸品メーカー「公長齋小菅(こうちょうさい小菅)」の竹細工による仕切りのある棚は店内に温かみを与え、アートシェルフに置かれた木工、漆、ガラスなどを用いた京都を中心とした気鋭の作家の作品は目にも麗しい。

1階のロビーラウンジの奥に位置するレストラン。窓一面に広がるのは、ホテルの庭園と、美しい岡崎別院(2023年6月まで工事中)の庭園、そしてそれに連なる風景。また、レストラン内最奥の壁を彩るのは、日本画家小島徳朗氏による1点ものの抽象絵画。

「アメリカン・ブレックファスト」(¥6,050)には、彩り菜園風サラダ(写真左)、焼きたてベーカリーバスケット、美山のヨーグルトとグラノーラ、そして卵料理など。ホテルの庭園をイメージしたサラダはシャキシャキで乾いた朝の体を潤してくれる。また、「きょうと・ブレックファスト」(¥7,865)では、エッグベネディクトか、オークラ名物のフレンチトースト(写真右)を味わえる。フレンチトーストは外せない。朝食は宿泊者以外も予約可能。

「Lunch B」(¥14,520/8月31日まで)の「和牛“熟”サーロイン〜塩釜焼きビーツと緑豆」。庭園を眺めながら、ワインペアリングを。

フルスペックではないからこその愉悦

隣接する真宗大谷派岡崎別院の工事が終了する2023年6月までの間、茶室や新本堂もできるので、この地ならではのプランも作られる予定だ。

オークラ初となる別邸ブランド「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」は、フルスペックではないからこそ、その名の通り、こじんまりとした上質な時が流れている。借景という絶景、工芸品が織りなす空間の絶景。中心地にはない、岡崎ならではの文化的な雰囲気に包まれたいなら、「別邸スイート」が正解だ。

新選組発祥の寺、本陣を置いた事でも有名な金戒光明寺の山門。ホテルから数分で到着でき、京都の街を一望できる。

ホテルオークラ京都 岡崎別邸
住所:京都市左京区岡崎天王町26番6(地番)
TEL:075-252-5201(ホテルオークラ京都 岡崎別邸 予約センター、9:00〜18:00)
料金:別邸スイート¥127,476~(1室1泊2名。料金は消費税・サービス料を含む)
客室数:60室(内別邸スイート8室)

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TEXT=谷内田美香(ゲーテ編集部)

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