売れない脚本家を必死に支える妻のラブストーリー『喜劇 愛妻物語』〜滝藤賢一の映画独り語り座69

役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!【滝藤賢一の映画独り語り座69】

ダメな夫と鬼嫁の笑えて泣ける珍道中

最初、タイトルを見て、ん? 『愛妻物語』って新藤兼人監督のリメイクかな? でも、枕詞に喜劇とあるな。まんまだとアレだからアレしたのか? と半信半疑のまま、なんとなく観始めたら、冒頭からセックスレスあるあるで腹を抱えて笑う面白さ。あまりにリアルな夫婦の会話に「バカやめろ!」「うわ、これわかるわぁ」と、思わず声を出しながら観ていました。

濱田 岳さんと水川あさみさんが喜劇を繰り広げる夫婦もので、年収50万円の売れない脚本家の夫に対する妻の不平不満が止まらない。というか、全編通して罵詈雑言の嵐。それも神髄を突いていて、夫の心臓をぶち抜きすぎる指摘の雨あられ。

夫に問題があるとはいえ、あそこまで罵倒されたら私、メンタルやられるだろうなぁ……。どこまで落ちぶれたら妻をそこまでブチ切れさすことができるのか? それにしても水川さんの芝居が凄まじい(笑)。彼女の突発的に発せられる叫びに爆笑必至。ご本人は新婚さんなのにこの芝居、ノリに乗ってるなぁ(笑)。このご時世、見るに堪えない夫のだらしなさも水川さんの振り切った演技に愛おしくさえなってくる。

この作品は、脚本・監督を務める足立 紳さんの実体験を下地にしているそう。結婚も10年過ぎると妻とのセックスが、妻の機嫌しだいとなり、ものすごくハードルが高くなる。いろいろ赤裸々すぎてめちゃくちゃ面白いが、足立家のことが心配になるレベル。というより奥様のメンタルが……。でも、今は素晴らしい作品を何本も世に送りだし、人気脚本家としてご活躍されているので、きっと夫婦円満なのでしょう。

水川さんが劇中にはき続ける超絶ダサい赤パンに込められた若き日のエピソードもとてもキュートでいじらしい。

映画を観ながら下積み時代のことを思いだしました。まだレンタルビデオ店でアルバイトをしていた時、それこそ、俳優での年収20万円の時ですよ。妻が両親に「この人は絶対大丈夫だから」と説得してくれて結婚できたのです。かけがえのない人です。あ、自分の惚気話で終わっちゃいましたね。てへっ。

©2020『喜劇 愛妻物語』製作委員会​

『喜劇 愛妻物語』
『百円の恋』『お盆の弟』『こどもしょくどう』などヒット作を手がける売れっ子脚本家となった足立 紳の監督二作目。結婚10年目、売れない脚本家の豪太がシナリオハンティングを兼ねた家族旅行で何とか妻とのセックスを目論む喜劇。原作は自らの夫婦生活を赤裸々につづった『喜劇 愛妻物語』(幻冬舎刊)。
2019/日本
監督:足立 紳
出演:濱田 岳、水川あさみ、新津ちせ ほか
配給:キュー・テック/バンダイナムコアーツ
9月11日より、全国公開

Composition=金原由佳

滝藤賢一
滝藤賢一
1976年愛知県生まれ。大河ドラマ『麒麟がくる』に出演中。今秋『ヴィレヴァン!2 ~七人のお侍編~』(名古屋テレビ)もスタート。10月23日には映画も公開予定。
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