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2025.10.01

親クルド派でもなく、反クルド派でもない記者が、川口に滞在して気づいたこと

近年、埼玉県川口市においてクルド人をめぐるトラブルが起きている――。そうネットを中心に活発な議論が巻き起こっているが果たして真相は如何なるものなのか。この問題に関して門外漢であり、「反クルド」でも「親クルド」でもない著者が、実際に川口市に滞在。そこで目の当たりにしたおどろくべき実情とは? 『おどろきの「クルド人問題」』(新潮社)の一部を抜粋・再構成して紹介します。【その他の記事はこちら】

新潮新書『おどろきの「クルド人問題」』
Unsplash/Alex Sheldon ※写真はイメージ

問題が解決するには時間がかかりそう

親クルド派でもなく、反クルド派でもない。ニュートラルなスタンスで川口に滞在し取材して書く。それがこの本を手掛けるにあたって与えられたミッションだった。

親クルド派の人たちは、人口が減少し労働力不足がより深刻化するなか、クルド人との共生を希望しているのだろう。反クルド派の人たちは、今起きているクルド人関係のトラブルをまず解決しなくてはならないと考えているのだろう。

市内でさまざまな意見を聞くなか、個人的に納得感が強かったのは奥ノ木信夫市長や奥富精一市議会議員が主張していたことだった。

まず、日本に不法滞在しているクルド人は全員帰ってもらう(これはどの国の人でも同じ)。合法的に日本にいるクルド人とは共生の道を探っていく。その整理ができてから、今後の方向性を協議していくべきだろう。あくまでも、川口市民ではない外部の人間の考えではあるが。

そもそも、在留資格のないクルド人のコメントは苦しいものが多い。「難民として認定してほしい」と言うが、難民の要件を満たしていないために認定されていないのが現状。ジャッジがフェアではないと考えているならば、その根拠を示したほうがいいだろう。

「自分たちは日本にはなくてはならない存在」と主張しているクルド人の解体業経営者もいる。たしかに彼らの多くは人手不足が深刻な産業に従事している。しかし、それとは別の話だろう。

川口に滞在して直接クルド人と接すると、彼らの多くは人懐こくて親切だ。赤芝新田の食堂ではおいしいお茶を入れてくれた。ケバブ店ではアイランをご馳走してくれた。コンビニの駐車場でもたもたしていると、駐車スペースに誘導してくれた。狭い道ですれ違うときには笑顔で挨拶してくる。

そういう態度から察するに、彼らは悪気なくさまざまなトラブルを起こしているという気がしないでもない。故郷での生活をそのまま川口でもやっているのではないだろうか。その行為を日本人にとがめられても、何を指摘されているのかよくわからないのではないだろうか。だから、状況はなかなか改善されない。

これ以上大きな事件が起こらないうちに、状況を一度リセットすることが、奥ノ木市長や奥富市議の主張する「在留資格を持たない外国人は帰す。在留資格を持つ人とは共生を探る」だと感じた。

クルド人の肩を持つわけではないが、第6章にも書いたように、彼らの不幸は圧倒的なリーダーを持たないことだとも思った。川口市内に約3000人のクルド人がいながら、彼らのなかに、日本国内で民族をよりよい方向に統率する人材が見当たらないように感じる。

悪事を働く者を厳しく罰し、法に則って母国へ帰す。

日本の文化や社会に沿った生活を徹底させ、その上で自治体と正々堂々と話し合う場を持つ。

そんなシンプルなことをやる人材がいないことが、川口にいるクルド人たちの立場を悪化させている。

クルド人問題は議会で議論されているが、それは日本人による討論だ。治安悪化の原因であるクルド人との話し合いも必要ではないか(もちろん在留資格を持つクルド人と)。しかし、誰と話し合ったらいいのか? クルド人側に代表的存在はいない。

そして、治安維持対策はクルド人自身でもやってほしい。お互いがお互いを厳しく見張るシステムをつくるだけで、トラブルは減るのではないか。

しかし、リーダーがいない。そのもっとも大きな理由の一つには、クルド人同士の結束がないこともあるかもしれない。

問題が解決するまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。

石神賢介/Kensuke Ishigami
1962年生まれ。大学卒業後、雑誌・書籍の編集者を経てライターに。人物ルポルタージュからスポーツ、音楽、文学まで幅広いジャンルを手がける。三十代のときに一度結婚したが離婚。著書に四十代のときの婚活体験をまとめた『婚活したらすごかった』など。

TEXT=石神賢介

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