近年、埼玉県川口市においてクルド人をめぐるトラブルが起きている――。そうネットを中心に活発な議論が巻き起こっているが果たして真相は如何なるものなのか。この問題に関して門外漢であり、「反クルド」でも「親クルド」でもない著者が、実際に川口市に滞在。そこで目の当たりにしたおどろくべき実情とは? 『おどろきの「クルド人問題」』(新潮社)の一部を抜粋・再構成して紹介します。【その他の記事はこちら】

クルドカーに追われる
(埼玉県川口市の北部にある)伊刈交差点の周囲にはコンビニが多い。その駐車場にクルド人が集まっているとも聞いていた。解体現場から川口に戻ってきた男たちだ。どのコンビニにも10人くらいずつ、仕事上がりのクルド人がいた。駐車場でやはり酒盛りをしている。飲酒運転は大丈夫だろうか。飲んでいない者が運転するのだろうか。
コンビニの駐車場に、いまにも積み荷が落ちそうな巨大なクルドカーが停まっていた。荷台の側から撮影していると、背後から大声で叫ばれた。ふり向くと作業着を着たクルド人だった。そのコンビニの駐車場は暗く、彼の存在に気づかなかった。
何を叫んでいるのかはわからない。でも、怒っていることは間違いない。勝手に撮影したので、こちらに非はある。
トラックの運転席から、別のクルド人も降りてきて怒鳴り始めた。
怖かった。ただただ頭を下げ、手を合わせてごめんなさいの意志を伝え、クルマでその場を去った。
しかし、甘かった。伊刈消防分署の交差点で、ミラー越しに過積載のトラックが接近しているのが見えた。さっき撮影したクルマだ。
車間距離はほぼない。青信号になりアクセルを踏むと、ぴたっとついてくる。“ケツピタ”というあおり運転だ。
次の交差点で右折してみた。トラックも右折してついてくる。次を左折した。トラックも左折する。間違いなく追われている。嫌な汗が出てきた。調子に乗ってクルドカーを撮影したことを反省し後悔した。
中学生のときに観たスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『激突!』を思い出した。スピルバーグが『ジョーズ』で大ブレイクする前に低予算で撮影した映画。主人公のセールスマンは巨大なタンクローリーに追われて戦慄する。トラックに追われる映画の主人公、デニス・ウィーバーの気分になった。ただ、トラックよりも普通乗用車のほうが小回りはきく。信号の度に右へ左へと曲がり、かろうじて振り切った。
日本人でも、誰にでも優しくできる天使のような人もいれば、親を殺すような残虐な犯罪者もいる。いろいろだ。それと同じように、クルド人でも、アイランをご馳走してくれたりチャイをブレンドしてくれたりする親切な人もいれば、巨大なトラックであおってくる怖い人もいる。日本人と結婚して在留資格を持ち日本社会に馴染んでいるクルド人もいれば、無免許運転でひき逃げをするクルド人もいる。
石神賢介/Kensuke Ishigami
1962年生まれ。大学卒業後、雑誌・書籍の編集者を経てライターに。人物ルポルタージュからスポーツ、音楽、文学まで幅広いジャンルを手がける。三十代のときに一度結婚したが離婚。著書に四十代のときの婚活体験をまとめた『婚活したらすごかった』など。