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2025.03.10

名作チェアがずらり! カッシーナ・イクスシーの新オフィスに潜入

フリーアドレスや在宅勤務など働き方の変化に伴い、デザイナーズ家具を使ったラウンジ型のオフィスが増えている。家具ブランドのオフィスから、交流が生まれるインテリアの秘訣に迫る。今回は、カッシーナ・イクスシーのオフィスを紹介する。【特集 アートな家具】

カッシーナ・イクスシーのオフィスにある「アゴラ」
アゴラと名づけられた、中央を取り囲むように円形に家具を配置したスペース。イベントなどを行うことも想定してつくられている。

曲線のモチーフで心がつながり近くなる

コロナ禍を経て、様変わりするオフィスのあり方。リモートワークに代表されるような新たな働き方の浸透も追い風となり、その目的や役割も変化。空間のデザインや家具選びの基準もかつてのオフィスとは大きく異なっている。

そんな時代だからこそ、参考にしたいのが家具ブランドのオフィスだ。そこで使われているのは従来の無機質なオフィス家具ではなく、アートな雰囲気を纏ったデザイナーズ家具。実用性や機能性に加えて、美しさも兼ね備えた仕事空間が続々と誕生しているのだ。

その筆頭が2024年10月に完成したカッシーナ・イクスシーのオフィスだろう。空間デザインを担当したのは、カッシーナのアート・ディレクターであり、家具も多数手がけるスペイン人デザイナーで建築家のパトリシア・ウルキオラだ。曲線を描く建物外部とのつながりを感じられるように、内側の内装は全体的に丸みを帯びたデザイン。壁やテーブルのほか、家具のレイアウトまでも円形や曲線が中心に。

固定席のないフリーアドレスで、フロアはアゴラ、チッタ、アトリエ、フースと名づけられた用途の異なる4つの空間にわかれている。そこに置かれているのは、カッシーナ・イクスシーが誇る名作家具の数々だ。

まずはエントランス。エレベーターを降りた先では、カッシーナ・イクスシーの大きなロゴマークとともに建築家のピエール・ジャンヌレが手がけた「キャピトル コンプレックス アームチェア」と、パトリシア・ウルキオラによる「セングウ」ローテーブルが社員や来客を迎える。往年の名作椅子と現代のローテーブルという異なる時代、異なる背景を持つ家具を組み合わせても違和感がなく、むしろなじむところがデザイナーズ家具の面白さでもある。

カッシーナ・イクスシーのオフィスのエントランス
エレベーターを降りてすぐに目に入るのが大きなロゴマークと名作家具&新作が置かれたエントランス。訪問客はここで迎えを待つ。

名作チェアの数々に座って仕事ができる

多くの社員が集うのはアゴラとチッタ。古代ギリシャ語で集会場を意味するアゴラは、空間全体が円形であり、中央を取り囲むように家具が配置されている。そこにはピエール・ジャンヌレへのオマージュによってデザインされた座面の低い「カンガルー」ラウンジチェアや、パトリシア・ウルキオラによる背もたれがしなやかに動くひとりがけラウンジチェアの「ポピー」、ゆったりと座ることができるソファ「セングウ ボールド」など、座面の高さや形状などが異なるチェアがテーブルとともに並ぶ。まるで自宅のようにリラックスして仕事をすることができる空間だ。

カッシーナ・イクスシーのオフィスのスペース「アゴラ」
色や形、高さや座り心地、さらには作られた時代もさまざまなチェアやテーブルが配置されたオフィス。気分や作業内容に合わせて座る椅子を変えられるから作業効率が向上する。コミュニケーションも円滑に。見た目も華やかになり、オフィスの雰囲気も明るくなど、いいことばかりだ。オフィスに足を運ぶ意味も生まれ、直接顔を合わせる機会も増える。

その一角にはコーヒーメーカーとバーカウンターを設置。コーヒーブレイクの際に近くに座る人と自然にコミュニケーションが生まれることで、気分転換になったり、アイデアがひらめくなど、さまざまな効果をもたらしている。

カッシーナ・イクスシーのオフィスのコーヒースペース
アップサイクル素材によってつくられたタイルカーペットや再生可能素材を使った家具など、サステナビリティにも力を入れている。

その奥に続くのが、イタリア語で街を意味するチッタ。入り口から奥に向かって細長い曲線を描いた、街の通りのような空間が広がり、その動線沿いにテーブルとチェアが配置されている。例えば、インテリア・プロダクトデザイナー高須学によるアームチェア「ラート」や熊野亘がスイス・レマン湖のヨットの美しさから着想を得てデザインした「ラ ベック」チェア、さらにはラウンジチェアのスタイルとタスクチェアの機能性を融合したドイツのブロッドベックデザインによる「ニア」などがゆとりある間隔で並ぶ。

カッシーナ・イクスシーのオフィスのミーティングルーム入り口
カーテンの使い方も特徴的だ。個室スペースやミーティングルームの入り口は、ドアではなくカーテンで隠すことで閉塞感はない。

さらに進むと、プロダクトデザイナー鈴木啓太&プロダクトデザインセンターによる、パーテーションで囲んだような形状の「シンク」ソファを中心としたエグゼクティブラウンジも用意され、人の気配を感じながら集中して執務を行いたい時などに最適なエリアとなっている。

カッシーナ・イクスシーのオフィスのエグゼクティブラウンジ
チッタの奥にあるエグゼクティブラウンジ。「シンク」ソファ&ベンチの存在感は抜群。囲いの中であれば、仕事も捗りそうだ。

また、壁際のカーテンの奥にあるミーティングルームは、それぞれジオ・ポンティの「ジオ」やデヴィッド・チッパーフィールドの「デヴィッド」など、カッシーナ・イクスシーとつながりの深い巨匠のファーストネームで呼ばれ、室内には各デザイナーが手がけたチェアやテーブルのほか、ゆかりの品なども置かれている。まさにブランドの歴史と伝統を物語るスペースだ。

カッシーナ・イクスシーのオフィスのミーティングルーム
カッシーナ・イクスシー創業者の武藤重遠氏の名前を冠したミーティングルーム「SHIGETO」。円テーブルは同社で特注製作されたもの。

曲線で構成された空間とさまざまな形状のチェアとデスクを巧みに配置。社員同士の交流を促すことで、カッシーナ・イクスシーのオフィスは、これまで以上に楽しく仕事ができる空間へと生まれ変わったのだ。

オフィスの新常識

1.オフィス自体を円形に。人々の交流を促す

フリーアドレスに加えて、円形の空間に円形に家具を配置。人々が自由に行き交うことで、コミュニケーションが生まれやすくなる。

2.多種多様な椅子を置き、仕事にも座る楽しさを

ゆったりとしたソファやユニークな形状のチェアなどさまざまな家具を配置することで、仕事のなかに椅子に座る楽しさが加わる。

カッシーナ・イクスシー
住所:東京都港区南青山2-12-14
※法人のみ見学予約可。

【特集 アートな家具】

この記事はGOETHE 2025年4月号「総力特集:惚れ惚れする人生の相棒、アートな家具」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=石川博也

PHOTOGRAPH=永禮賢

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