今密かにインテリア業界で注目を浴びている特注家具製作会社、MAKE AND SEE。その新ブランドEDITORAの家具づくりとは? 【特集 アートな家具】

巨匠の肩に乗り次のデザインを見つめる
ヴィンテージ家具は超高額で取り引きされ、ユニークピースはオークションでも世界的な注目を集める。家具とアートの融合が進む2024年、EDITORAは始動した。その家具は、ミッドセンチュリーモダンの巨匠たちへの敬意と偏愛によってデザインされ、日本最高峰の職人技術によって製作されている。
例えば写真1枚目右のソファは、ジャン・ロワイエが1947年にデザインした「ポーラベア」へのオマージュだ。彼らはこのように、いわば“インスピレーション元”を明らかにする。
「僕らはミッドセンチュリーが大好きで、敬意を持っています。その点を、敢えて清々(すがすが)しく公表していこうというのが、ブランドのコンセプトのひとつです」と語るのはEDITORAの立ち上げメンバーである松尾真之介氏。ただし、デザインを表象的に取り入れるだけではない。
「素材の使い方や特徴的なフォルム、あるいはその哲学など、どんな影響を受けてデザインに反映させるかは、参照するデザイナーによって異なります」
2024年のローンチ時に発表された家具は19点。巨匠へのオマージュが並ぶが、なかにはほとんど知られていない名前も。その最たる例が中井太一郎だ。
「戦後日本の工業デザインを象徴する存在で、ʼ50年代にイタリアでも活躍しましたが、資料が極端に少ないのです。僕らの家具を通じて、このような“知られざる巨匠”を知ってもらう機会になればと思っています」
特注家具製作で培った工房との信頼関係
誰のどんなところに学び、どう形にしたのか。受け手には、見た目の美しさだけでなく、デザインを読み解く知的な楽しみが与えられる。コンセプトを理解して共鳴し、所有する喜びを味わう。求められる基本姿勢は、現代アートと同一のものだ。
実はEDITORAの主体は、商業施設向けの特注家具のデザインから製作まで一貫して行うMAKE AND SEE。特注家具を製作するなかで、さまざまな高い技術を持つ工房との間に分厚い信頼関係を築いている。その基盤があるからこそデザインが具現化し、技術もまた、磨かれ、継承されていくのだろう。
まだ“知る人ぞ知る”存在のEDITORA。先物買いをするのなら、今がチャンスだ。
カリスマ的に人気上昇中のジャン・ロワイエへのオマージュ
「自由な表現と探究心」を追求し、大胆で独創的な形状を生み出したロワイエの「ポーラベア」ソファに対し、オーバーサイズで丸みを帯びたフォルム、遊び心を含んだデザインアプローチで呼応。木枠を組み上げ、ウレタンを肉づけして彫刻のように削りだすという技法を用い、日本の工房で製作。
マシュー・マテゴに学び、金属加工と溶接の超絶技巧で解答
マテゴはパンチングメタルを開発し、金属加工技術を前進させたデザイナー。代表作「コパカバーナチェア」のオマージュ作は、工房探しがもっとも困難だったモデルでパイプを3次元に曲げる高度な技術が用いられる。
ル・コルビュジエの理念のすべてがEDITORAの原点
コルビュジエの理念を継承したソファは、使いこまれてクタクタになっても愛着が深まる「LC2」や「LC3」から得た着想を、マチのない「ひだ寄せ」という技法で表現している。もちろん座り心地も抜群。
「しなる」脚に挑戦したシャルロット・ペリアンに続く
木材による美しい脚部のしなりが特徴のペリアンの「オンブルチェア」。このテーブルは、そのしなりをプラスに転用。ガラス天板の重量によって脚部を少しだけしならせることで、床面に食いつく構造となっている。
中井太一郎の伝説を現代に再現する壁面シェルフ
1950年代に活躍した中井。金属フレームに木材やガラスを組み合わせた「モジュラーシェルフ」を継承したシェルフは、フレームを木材に換え、無垢削りだしの真鍮のスペーサーを三方留めすることで強度を実現。
EDITORAショールーム
住所:東京都中央区日本橋茅場町2-1-7
TEL:03-6380-9968
※完全予約制
info@editora.jp
この記事はGOETHE 2025年4月号「総力特集:惚れ惚れする人生の相棒、アートな家具」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら