どんな家具を置き、どんなアートを配するか。インテリアが、その空間に身を置く者に与える影響は大きい。時に癒やされ、時に鼓舞される、UESHIMA MUSEUM館長・植島幹九郎氏の暮らしを彩るインテリアを考察! 【特集 アートな家具】

アートが主役の自宅のインテリア
「自宅はオフィスビルをリノベーションしたもので、親交のある建築家に内装のプランを依頼。アートを飾る場所も考慮して、設計してもらいました」と語るのは、現代アートのコレクターであり、渋谷に『UESHIMA MUSEUM』をオープンさせた植島幹九郎氏。
「自宅に客人を招く方も多くいらっしゃいますが、私の場合、自宅は完全にプライベート空間。そのため家具は実用性と機能性を第一に考えて、現在はモダンな家具を中心に構成しています。一方でアートは、自分が好きなものをセレクトしています。美術館の場合はキュレーターと相談しながらテーマを決め、それに合った作品を選びますが、自宅にはそういった縛りはありません。今何を飾りたいか、何が生活のなかであったら嬉しいか、そして心地いいか。そういう気持ちでアートを選んでいます」
アートコレクターの自宅は、やはりアートがインテリアの中心となる。吹き抜けが気持ちよいエントランスホールには、中村一美の作品「存在の鳥 323(ツグミ)」を展示している。
「インテリアにアートを取り入れるうえで、どこに何を飾るかをはじめから意識することは大切です。しかしアートの好みは変化しますから、作品を入れ替えることも楽しんでいます」
アートを中心に空間を彩るインスピレーションが湧く時計
植島氏にとって、インテリアとアートは近しい存在なのだ。
「リビングには、ちょっとしたワークスペースがあるのですが、その目の前には異端なアート集団、Chim↑Pom from Smappa! Groupの時計を置いています。これは旧渋谷パルコを建て直す際にでた廃材を利用したアート作品。きちんと動くので、時刻を知るための時計としても使っていますが、渋谷は学生時代から思い出深い街でしたし、この時計には街に積み重ねられた時間が流れているように感じます」

仕事の合間でも、アートを見るだけで、思考のスイッチを切り替えられるという植島氏にとって、アートはかなり大きな存在となっている。
「アートには、この時計のように本来なら価値がないものに対して価値をつくっていくという側面もある。それはビジネスにも共通します。私自身が新しい発想によって価値を生みだせないかと日々考えている。だからアートをインテリアのなかに取り入れることは、大きな刺激になるのです」
インテリアは家具だけが主役ではない。自宅での過ごし方によっては、アートが主役になってもよいのである。
いつか欲しいあの家具
1.NICOLAS PARTYのテーブル
「実はオフィスにはすでに置いているんですが、彼の作品は空間を瞬時にアートなものへと変える力があります」
2.倉俣史朗さんのガラスの椅子
「板ガラスを組み合わせたチェア『硝子の椅子』は、シンプルながら唯一無二。アートとインテリアのまさに中間です」
3.三嶋りつ惠さんのガラスオブジェ
「三嶋さんのガラス作品はギャラリーにいくつか飾っていますが、インテリアの一部として、自宅にも迎えいれたいです」
植島幹九郎/Kankuro Ueshima
UESHIMA MUSEUM館長。1979年千葉県生まれ。事業家・投資家。アートコレクターとしても知られ、2024年6月に母校である渋谷教育学園の敷地内に現代美術のミュージアム「UESHIMA MUSEUM」をオープン。
この記事はGOETHE 2025年4月号「総力特集:惚れ惚れする人生の相棒、アートな家具」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら