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2025.03.04

アルフレックスの社長が愛用するインテリアとは。自宅に潜入

どんな家具を置き、どんなアートを配するか。インテリアが、その空間に身を置く者に与える影響は大きい。時に癒やされ、時に鼓舞される、アルフレックス ジャパン代表取締役社長・保科卓氏の暮らしを彩るインテリアを考察! 【特集 アートな家具】

保科邸のダイニングテーブル
カウリのテーブルで毎朝お茶を点てるのが日課。ダイニングチェアはアルフレックスの「アルカ」、アートは杉本圭助の「マネキン」。

過ごし方で選ぶ家具。お茶を点てるテーブル

都心に佇むヴィンテージマンションの最上階、窓から公園の木々と都会の摩天楼が見渡せるダイニングで、ひときわ存在感を放つのが、氷河期末期の大洪水で森林ごと地中深くに埋まっていたニュージーランド原産の巨木、カウリを天板に用いたリーヴァのダイニングテーブル。

「4万8000年も前の素材ですから、悠久のロマンを感じますよね。家具の使命は、長く使い続けられること。そう定義づけている“家具屋”としては、いつかはカウリのテーブルをと思っていました」

そう話すのは、この邸宅の主、アルフレックス ジャパン代表取締役社長の保科卓氏だ。

サイズや木材の柄、亀裂の入り方など理想のカウリを探し求め、見つかった後は、イタリアにあるリーヴァ本社で何度も打ち合わせを重ねた。ようやく手元に届いたのは、木材との出会いから1年以上を経た2015年のこと。以来、保科家の顔となっている。天然木ならではの節や柄、亀裂。それらを生かしつつ、スタイリッシュに仕立てられたテーブルは、“実用的アート”とも呼ぶべき美しさだ。

「実は、手前にある池のようなレジン(樹脂)は、打ち合わせ時にはまったく話していなかった仕様で届き、始めは驚きましたが、これもイタリア人らしさを感じる仕上げで気に入っています」

家具選びでまず考えるのは、「そこでどう過ごしたいか」

無垢材削りだしの優美なフォルムを持つアルフレックスのダイニングチェアに、玄関に設置された無垢材をプリミティブに仕上げたリーヴァのベンチ、エントランスホールを彩る、独特な形状の脚が印象的なモルテーニのテーブル。機能とデザインが両立した“才色兼備な家具”が並ぶ保科邸だが、家具選びでまず考えるのは、「その空間で、どのように過ごしたいか」と、保科氏。

「2023年11月、以前の住まいと同じマンション内のこの部屋に引っ越したのを機に、ダイニングテーブルや収納棚を除き、ほぼすべての家具を入れ替えました。当社のインテリア・コーディネーターに相談しながらでしたが、リビングとダイニングについて、私たち家族がリクエストしたのは、“集う人が心地よく過ごせ、会話が弾む空間”でした」

仕事関係からプライベートまで来客が多く、一度に10人以上集まることもあるという保科邸。今回、リビングの一角をバーコーナーに見立て、バーテーブルとハイチェアの横に、ラウンジチェアを設置。リビングスペースには、革張りのソファを向かい合わせに置き、奥にラウンジチェアをふたつ並べた。さらに、ハイチェア、ラウンジチェア、ソファの順に、座面を低くすることで、各コーナーに独立性を持たせつつ、リビング全体の一体感も演出するなど、巧みなゾーニングを実現している。

保科邸のキャビネット
重厚感漂うキャビネットはリーヴァの「カンブサ ワイン グラス」。ハイスツールの「クレド」と「ルイラウンジ」(ともにアルフレックス)の座面の高さの違いが、心地よさを演出。

前の住まいの頃から、来客時は、まずゲストにリビングでアペリティーボを楽しんでもらい、ダイニングで食事の後、食後酒で寛いでもらうというパターンが多かったそうだが、バーコーナーを新たに設けたことで、この一連の流れが、実にスムーズになったという。

「会話もより弾むようになりましたが、それは家具の力が大きいと思います。以前の家では、座面の奥行があるソファをL字形に置いていたので、まったりしがちで(笑)。ソファの奥行きを少し狭くし、相手の顔が正面に見えるように向かい合わせにしたことで、コミュニケーションがとりやすくなりました」

アートが日々の暮らしを豊かに彩ってくれる

保科邸では、家具と並んでアートも大切なピース。アートも、“その空間でどう過ごすか”という視点で選ぶため、飾る部屋とスペースによって、理想とするテイストやカラー、サイズは変わってくる。

「家具と照明、ラグをセッティングし、最後にアートを入れるのですが、それらが、パズルのようにビシッとはまると、すごく贅沢な空間が生まれます。以前、自宅のアートをほぼすべて、アルフレックスのイベントに2週間ほど貸しだしたことがあるんですが、あの時は、なんとなく寂しかったですね。“アートのある暮らし”の素晴らしさが、身に沁みました」

アートは難しいと二の足を踏みがちだ。特に“最初の一点”はハードルが高いが、保科氏いわく、「惹かれる作品に出会い、予算やスペースが許すなら、思い切って手に入れ、飾ってみては? 日常が豊かになることを実感できると思います」。

理想の暮らしをかなえる機能的で美しい家具と、心を揺さぶるアート。インテリアは人生を彩るスパイスになる。

今注目しているデザイナー

1.ジオ・ポンティ
1920〜1970年代に活躍した、イタリアンデザインの父。「過去の名作を未来に継承する意味でも、注目しています」

2.ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセン
「シンプルでミニマルだが、温かみとブルジョア的な豊かさがある。シャープすぎず、コテコテでもないのも魅力」

3.ヤブ・プッシェルバーグ
建物からインテリアまで担う建築家ユニット。「彼らが手がけた麻布台の『アマンレジデンス』は素晴らしい」

保科卓/Taku Hoshina
アルフレックス ジャパン代表取締役社長。1965年京都府生まれ。慶應義塾大学卒業後、1988年にアルフレックス ジャパンに入社、2013年より現職。2017年からアートを飾る楽しみを提案する「LIFE with ART project」を開催。

【特集 アートな家具】

この記事はGOETHE 2025年4月号「総力特集:惚れ惚れする人生の相棒、アートな家具」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=筒井義昭

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