今回は地面反力を最大限活用したローリー・マキロイのスイングを紹介する。

キャリアグランドスラムを達成したマキロイ
2025年のマスターズを制したローリー・マキロイは、タイガー・ウッズ以来25年ぶりにキャリアグランドスラムを達成し、史上6人目となる快挙を成し遂げた。
マキロイは10代でプロ入りし、キャリア5年目には全米オープンで優勝。翌年には22歳10ヵ月で世界ランキング1位に到達している。その後、全米プロゴルフ選手権と全英オープンを制し、25歳の時点で残るメジャータイトルはマスターズだけとなった。
20代のうちにキャリアグランドスラムを達成する可能性が高いと見られていたが、2014年の全米プロゴルフ選手権を最後にメジャーのタイトルから遠ざかり、マスターズは何度も優勝争いに絡みながら栄冠に届かずにいた。
そのマスターズを11度目の挑戦で制した今、あらためて国内外でマキロイのスイングに注目が集まっている。マキロイのスイングは美しさと飛距離を兼ね備え、アマチュアだけでなくプロゴルファーにとっても憧れ存在なのだ。
地面反力を活かした加速のメカニズム
マキロイのスイングに憧れ、真似をしたいと考えている人は多いかもしれないが、完全にコピーすることは難しいかもしれない。しかし、エッセンスを取り入れることはアマチュアゴルファーでも十分可能だ。
マキロイのスイングを真似るうえで鍵となるのは、始動と切り返しのタイミングの2つだ。この2つの動きは、地面反力を活用するための重要な動作であり、スイング全体のリズムとエネルギーの流れを形づくる核となっている。
マキロイのスイングの特徴としてまず挙げられるのが、スイング始動時の右足の踏み込みだ。
スイングを始める前に右足で地面を踏み込み、その反動を利用してクラブを素早く上げていく。バックスイングではシャフトがしなるほど速く上げているが、この動きは欧米のドラコン選手などにも見られる、飛距離が出る選手に共通する特徴だ。
このスピーディーなバックスイングによって、トップでシャフトがしなる反動動作が生まれ、インパクトでクラブを効率的に加速することができる。
この動作を練習する際は、始動で右足のかかとを踏み込んでからバックスイングをする練習をしてみてほしい。この動きによって地面反力が上に向かい、それに伴って右股関節が切れ上がりながら、勢いよくクラブを上げることができる。
トップの位置までクラブを上げたら、次は左足で地面を強く踏み込む切り返し動作を行う。このとき、骨盤を前傾させながら重心を下げ、それによって頭の位置もわずかに沈む。
この左足の踏み込みによって生じた地面反力が、肩の縦回転を加速させ、スイングスピードを高める。腕を大きく振るのではなく、下半身を使って地面反力を効率よく活かし、スイングのエネルギーを生み出しているのだ。
特にマキロイの場合、沈み込み動作の速さと正確さが際立っており、スイング中にスクワットをするように骨盤をスムーズに前傾させながら重心を下げる動きを行っている。
アマチュアゴルファーがこの動きを習得する場合、まずはクラブを持たずにスクワット動作から練習を始めるほうが効果的だろう。
手や腕ではなく、下半身を使ってクラブを振り下ろす感覚を体に覚えさせるようにするといいだろう。このとき、膝が前に出ないように気をつけ、股関節から体を前傾させるように気をつけてほしい。
沈み込んで地面を押す「加重」だけでなく、地面から返ってくる力を利用する「抜重」においてはタイミングが重要になる。ダウンスイングで体を沈めたままインパクトを迎えると、ダフリや振り遅れにつながりやすいため、沈み込みの動きは一瞬で終わらせ、すぐに力の方向を上へと切り替える必要がある。
マキロイは左腕が地面と平行になる前に抜重動作が始まり、インパクトでは左サイドが上方向へ伸びた状態になる。これにより、右肩下がりながら目標方向に出る肩の縦回転が促進され、ヘッドスピードを増加させることができるのだ。
まずはシャドースイングで、普段意識しているよりも加重と抜重のタイミングを早くすることに気をつけ、繰り返し練習してほしい。
マキロイのスイングは、地面反力を効率よく利用することで成り立っている。トップやフィニッシュなどの形を真似る前に、力の流れとタイミングを理解することがマキロイのスイングに近づく第一歩となる。
スイングの根幹にある動きを捉えて再現できるようになれば、理想的なスイングに近づくことができるだろう。
地面反力を最大限活用したマキロイのスイング動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。