Apple社でApple MusicとBeatsなどを統括するシュッサー氏。トップアスリートがなぜBeatsを愛用し、厚い信頼を寄せるのか。Appleの哲学を継承し、独自のカルチャーを築き上げた彼の信条に迫る。

ドイツ出身。Apple在籍22年以上のキャリアを持ち、現在はApple Music、Sports、Beats担当バイスプレジデントを務める。入社時はロンドンを拠点に国際的なサービスビジネスを統括し、iTunes Music StoreやApple TVなど主要サービスの立ち上げを主導。製品作りへの強いこだわりとグローバルな視点で、Beatsを世界的なブランドへと導いている。
カルチャーを築く不変の美学。情熱が「本物」を生む
「ビジネスはスプリントではない。マラソンなのだ」
Apple MusicとBeatsを統括するオリバー・シュッサー氏は、自らの経営哲学をそう定義する。Apple在籍22年。iTunes Music Storeの立ち上げをはじめ、Apple Podcast、Apple TV、Apple One、Fitness+など、主要サービスのローンチを世界各地で主導してきた。その長いキャリアで一貫してきたのは、流行に乗るのではなく、極限まで製品の質を高め、長く愛されるものを届けるという姿勢だ。
「私たちは自身のビジネスを、スプリント(短距離走)ではなくマラソンだと捉えています。製品が完璧でない限り、たとえそれがどれほどの短期的な利益を生むとしても、私たちはローンチすることはありません。それは決して妥協できない一線なのです」
シュッサー氏が語るこの“製品至上主義”こそが、巨大なAppleという組織のなかにありながらBeatsが独自の個性を鮮明に保ち続けている理由だ。その執着は、細部にこそ宿る。
例えば、最新のヘッドフォンのウィングチップひとつの形状を決定するために、何千もの耳でテストを繰り返し、あらゆる耳の形にフィットする安定性と快適性を追求する。
RedditやAmazonなどのレビューも徹底的に読みこみ、サウンド、装着感、バッテリー寿命にいたるまで迅速に改善を重ねる。
「製品が完璧であれば、顧客は自ずと愛してくれ、友人にもそのよさを広めてくれます。利益や数字は、その後についてくる必然の結果に過ぎないのです」
このように世界中で普遍的な“最高”を追求しながら、同時に各地の市場が持つ微細な文化の差異を汲み取る。この視点を支えているのが、彼自身が語る「グローバル・シチズン(世界市民)」としての背景だ。
移民の多いドイツで育ち、クルマで多くの隣国を巡りながら多様な文化に触れてきた経験が、現在の多様性を尊重する経営の礎となっている。
12回以上も来日する知日家でもある彼は、日本を「文化、卓越性、そして美について多くを学べる場所」と評し、日本のクリエイターとの仕事が、Beatsをよりよくすると確信している。
「Apple Musicのヒットチャートは文化の鏡です。日本やドイツにおいて国内アーティストの楽曲が圧倒的な支持を得ている事実は、ビジネスの本質がいかにローカルにあるかを物語っています。真にグローバルな企業であるためには、各地の伝統を尊重し、その多様性を深く理解しなければなりません。それこそが、私たちの強みです」
「本物」の絆だけがトップアスリートを動かす
世界規模でブランドを浸透させるシュッサー氏の哲学が、最も純粋な形で表れるのがアスリートとの関係性だ。なかでも彼が「プロフェッショナリズムの極致にいる完璧主義者」と絶賛するのが、アンバサダーの大谷翔平選手である。
「大谷選手において際立っているのは、世界の見え方が私たちと一致している点です。彼は完璧主義者であり、私たちはブランドとしてまったく同じ姿勢で製品に向き合っています。幸運なことに、彼のほうからもぜひ一緒に仕事をしたいと言ってくれました」
大谷選手が自ら製品を愛用し、チームメイトへのギフトに選ぶという自発的な行動こそが、シュッサー氏の言う“オーセンティック(本物)”の証だ。
「本物であることは、広告ではつくれません。時間をかけて築かれるものです」
そう彼は強調する。短期的な話題性よりも、信頼の積み重ねを選ぶ。その姿勢こそが、ブランドの芯を形づくる。

Beatsは、有名だからという理由で多額の契約金を払い、宣伝のためだけに製品を身につけさせるような取引は行わない。レブロン・ジェームズやリオネル・メッシもそうだが、製品を心から愛し、自らのパフォーマンスを支える生活の一部として使ってくれる関係を大切にしている。顧客は、その真実味のある絆にこそ共鳴するのである。
取材の最後、シュッサー氏は12歳の時に新聞配達をして貯めたお金で、最初のレコードを買ったという少年時代の原体験を語ってくれた。それは今も彼のなかで鮮烈に生き続けている。
「新しい従業員にはいつもこう言っています。自分の情熱を見つけ、それを仕事にしなさい、と。仕事のなかに情熱がなければ、本当の意味で成功することは難しいでしょう。私の場合、仕事とプライベートの興味は完璧に重なっています。それが日々のプレッシャーを乗り越え、クリエイティヴな決断を下すための力になるのです」
その情熱が結実した最新の成果が、Nikeとの歴史的なコラボレーションだ。
「Nikeとついに理想的な製品を創り上げることができました。Beatsのロゴの代わりにNikeのスウッシュを配置したスペシャルエディションの『Powerbeats Pro 2』の誕生は、Beatsの歴史においても極めて特別な瞬間です。初めて自分たちのスペースを他のブランドに譲ったのですから。お互いにスポーツへの深い情熱があるからこそ実現したこのプロジェクトは、私たちに新たな学びを与えてくれました」
完璧を追求するアスリートのように、シュッサー氏とBeatsは「最高」の先を見据えている。

Beats史上初、象徴的な「b」ロゴのスペースを他のブランドに譲り、Nikeの「スウッシュ」をイヤーバッドに配置したコラボレーションモデル「Powerbeats Pro 2 - Nike Special Edition」。スポーツと音楽の融合を極限まで追求する両ブランドの魂が共鳴した本製品は、2026年3月20日より発売中。デザインと機能、そして両社の誇りが高度に融合したモデルだ。¥39,800
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