師匠か、恩師か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ「相師相愛」ともいえるふたりの姿をご紹介。連載「相師相愛」第51回は、ファミリービジネスを率いるふたり。
保科 卓氏（右）、植田友宏氏（左）
アルフレックス ジャパン代表取締役社長 保科 卓が語る、植田友宏
もともと弟同士が親友で、よく名前はお聞きしていたんです。30代からは共通の友人と食事に行ったりするようになったんですが、親しくなったのは12年前に僕がイギリス留学から戻ってからです。家が偶然、隣だったんです。それから引っ越しするまでの4年間、それぞれの家でホームパーティをしたり、お互いのパーティに呼び合ったり、食事に行ったり、家族みんなで温泉旅行にも一緒に行きました。
僕も父から商売を継いでファミリービジネスをしていますが、友宏くんも同じ。しかも、お互い普通の商売とはちょっと違っている。お客様は主に富裕層で、文化やライフスタイルにも強く根づいている。こういう家業を継いでいく難しさを語り合える間柄というのは、なかなかないことなんです。奥さまも素敵な方で、本当にお洒落なご夫婦なんですよね。
丁寧な仕事の進め方、新しいチャレンジ、周囲への気配り、目上の方への配慮……。尊敬すべき点がたくさんあります。
今も忘れられないのは、お正月明けに帝国ホテルのお店のお客さまをひとりひとりご挨拶に訪問されている、というお話を聞いた時のことです。都内近郊だけではありません。全国を回るんです。空港や駅からレンタカーを使い、一軒一軒、訪ねていく。すごいなぁ、と思いました。
コロナ後は、ジュエリーに対する見方が変わってきているという話も印象的でした。身を飾るものから、自分の身を護ってもらうものへ。もともと太古の時代は、そういうものだったのだそうです。コロナで原点回帰しているのだ、と。またいろんな話を聞かせてください。
ウエダジュエラー代表取締役社長 植田友宏が語る、保科 卓
卓さんとは、不思議なご縁でつながっています。偶然にも家が隣同士になった時は、本当に驚きました。あの頃はまだ若かったので、夜更けまでよく飲んで語り合いましたね。4人でリレーする神宮マラソンに一緒に出たのもいい思い出です。ご夫婦の仲がよくて、それこそ相思相愛。とても素敵なカップルなんです。実は結婚指輪を私が入社する前のウエダジュエラーで作ってくださっているんですが、毎年1pcずつダイヤモンドを足していかれるオーダーをされていて。ロマンティックですし、形に残りますよね。
私たちはビジネスというより文化を継承しているんだと思っています。ビジネスができるだけではダメで、伝統のよきDNAをしっかり継承していかないといけない。人付き合いから美意識、哲学的なもの、すべてが問われます。このあたりが、よく似ているんです。
そして卓さんは、世界も見ておられる。その視野の広さと感性には、いつも勉強させていただいています。
私は学生時代、画家を目指していた時期があるんですが、家に飾っていた私の絵に気づかれて、2013年に特別にアルフレックスのショールームで個展を開いていただいたことがあります。300名もの方がお見えになり、本当にありがたい経験になりました。
私もモノを作るのが好きですが、卓さんも商品に対する愛情が本当に深いです。お互い、大切に扱って、代々使っていただけるものを作っています。美しいものは、人を幸せにします。より多くの人に幸せになってもらえるよう、これからもお互い切磋琢磨していきたいです。
Taku Hoshina（右）
1965年生まれ。慶應義塾大学卒業。’88年アルフレックス ジャパン入社。輸入部門、経営企画部門などを経て、2008年イギリスでMBAを取得。’13年より現職。
Tomohiro Uyeda（左）
1970年生まれ。慶應義塾大学大学院修了。1884年創業の帝国ホテルにある老舗宝飾店ウエダジュエラーに、1994年入社。2005年より4代目社長に就任。
