ゲーテ読者に薦めたいとっておきの1冊をピックアップ! 今回は梅澤さやかの『エグゼクティブはなぜ稽古をするのか』をご紹介。

梅澤さやか 著 クロスメディア・パブリッシング ¥1,848
仕事と人生を整える習慣づくりとは?
新入社員が選ぶ「理想の上司」アンケート調査で、毎年トップ10入りしている芸能人の楽屋へ行くと、写経をしていて驚いたことがある。まるで宝箱の中身を見せるような目をしながら「写経は頭と心の癒やしになるんだよ」と教えてくれた顔が、本書を読んでいると浮かんできた。
茶道、華道、武道、舞踊……。なぜ日本の稽古が今、海外の経営層からも注目を集めているのか? なぜAIが何でも教えてくれる時代に、あえて師に教えを乞うのか?
ブランド戦略のスペシャリストである著者は、日本の稽古の価値を丹念に掘りおこし、AI時代だからこそ再評価されはじめている、稽古がもたらす効能を解明。奥深い日本文化の伝統が凝縮された稽古を体得することで、仕事や人生が豊かになる習慣づくりやブランディングにつながると説いている。
茶道や舞踊の所作は会議やプレゼンの見せ方にも有用だろうし、華道や工芸で得る美的感性は企画力や創造力につながるだろう。読了後、古めかしい文化だと思っていた稽古のイメージがくるんと反転した。本書を読むことそのものが、凝り固まった私の日常をリセットする稽古だったのかもしれない。
桝本壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として数々の人気番組を担当。NSC(タレント養成所・吉本総合芸能学院)の講師も務めており、令和ロマンをはじめ、多くの教え子をM-1に輩出している。