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2024.04.19

後進ブランドOnが飛躍した秘密。ファンコミュニティの作り方とは

ナイキ、アシックス、アディダス、プーマ、ニューバランス。超レッドオーシャンのスニーカー市場において、ここ数年よく見かけるようになったのがスイスのOn(オン)。今、アメリカでも大ヒット中。それを日本で広めたキーパーソンが、元Onジャパン代表の駒田博紀だ。後進ブランドであるOnが大躍進を遂げている秘密とは? 『なぜ、Onを履くと心にポッと火が灯るのか?』(幻冬舎)より、一部を抜粋して紹介する。【その他の記事はコチラ】

カスタマーでも、ファミリーでもない「OnFriends」

Onジャパンのマーケティングにおいて、最も重要だったと言っても過言ではないのがOnのファンの存在です。その人たちのおかげでブランドが少しずつ広まっていき、Onは世の中に知られる存在になっていきました。

これは他のどのブランドにも見ることができない、Onならではの強みでした。ただ、Onジャパン立ち上げ当初は、それは僕の中だけにある、ふんわりとした概念でしかありませんでした。

この概念に名前を付ければ、もっと多くの人に伝わるだろう。僕はそのように考え始めました。どんな名前が良いのかと考えました。「OnCustomer」ではない、と思いました。そうかと言って、「OnFamily」でもないと思いました。

単に「カスタマー」と呼ぶのは論外でした。あの人たちは、明らかにただのお客さんとは違います。もっと近く、深い何かです。ただ、そうかと言って、「ファミリー」という言葉を使うことにも抵抗感がありました。

それは、僕の個人的な経験が影響していました。僕は、ファミリー作りに一度失敗した人間です。感謝や初心を忘れ、馴れ合ってしまった結果、僕は家族を失いました。だからこそ、「OnFamily」という名前を使う資格が僕にはないと思ったのです。

それでは何なのか。確かに、お客さんではある。でも、同時に友達のような人たち。それなら、「OnFriends」が一番しっくりくると思いました。

普段は遠くにいても、たまに会うときには一緒に楽しく走って飲んで、「じゃあ、またね!」と別れてゆく。その後もフェイスブックやインスタグラムで、お互いの近況を報告し合える。少し大変なときでも、仲間の楽しそうな姿を見て、笑顔に戻って日常を頑張れる。そんな関係性が僕にとってはちょうど良く、心地よく思えました。

こうして、OnFriendsという言葉を使うようになったのでした。2016年夏のことです。

コミュニティの始まり

OnFriendsという言葉を作った僕は、皆さんに「#OnFriendsとハッシュタグをつけてSNSに投稿してみてください」と伝えました。

1人で走っていても、そのハッシュタグを辿って見つけてくれる人がいるかもしれない。繋がることができれば、いつか一緒に走れるようになるかもしれない。その繋がりが増えていけば、人生が少しだけ楽しくなるかもしれない。そんな思いを込めました。こうして、ハッシュタグのついた投稿が増えていきました。

2016年から2017年にかけて、僕の頭の中にだけあった概念を、具体的な形にしようと考えました。毎日のSNS投稿に「#OnFriends」と付けました。SNSで、あるいはイベントで、「ハッシュタグつけてみて」と呼びかけました。

こうして、SNS上でふんわりとしたコミュニティが徐々に形作られるようになっていきました。

2017年になり、僕は次のことを考えました。実際にOnFriendsに会いに行き、一緒に走ろうと思ったのです。そのイベント名は、「Meet OnFriends Tour」にしました。

その年の夏、翌年以降のビジネスプランをスイス本社の役員たちに説明する席で、僕はこのツアーの趣旨を説明しました。そのツアーのために必要なのは、Onのロゴの入った社用車でした。これを購入する予算をつけてほしいとお願いしたのです。

お金が潤沢にあるわけではないのは知っています。中古のバンでも買えたらいいな、くらいに思っていました。ツアーの説明を終えると、車好きの役員の一人がこう言いました。

「中古のバンはダメだ」

そうか、ダメか……一瞬ガッカリしたのですが、次の瞬間、彼は自分のパソコンのモニターをくるりと僕の方に向けたのです。

「どうせやるならこれだ」

そこに映っていたのは、メルセデスベンツのVクラスでした。仰天です。

「これでは不満か?」

彼がニヤリとしながら聞いてきます。

「俺もそれが良いと思っていた」

こうして、ツアーに使う社用車が決まったのでした。ちなみに、この車はキャスパーが「クラウドモビール」と名付けました。

TEXT=駒田博紀

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