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2023.09.10

主流になりつつある投資の⺠主化とは――アフターコロナのお金論

今回は投資の民主化について。連載「アフターコロナのお金論」とは

©️rupixen.com/Unsplash

新NISAスタートまであと少し

今週Fintech業界のイベントにて、「新NISA」を軸とした講演とトークセッションをしてきました。メディア記者の⽅、⾦融機関にお勤めの⽅、これから⾦融事業に参⼊を検討している事業会社の⽅など、本当に多くの⽅にご参加いただきました。数年前と⽐較すると参加数や会場の熱気も違い、「貯蓄から投資へ」が注⽬されていて、投資の⺠主化もいよいよ本格化してきているということを肌で感じました。

数年前までは投資というと、お⾦持ちだけがやるイメージだったり、退職⾦をもらった⾼齢者がやるイメージだったり、またギャンブルのひとつのようなイメージもあったと思います。私が学⽣の時にも、株式投資をしている友⼈は圧倒的少数派で、ちょっと普通ではない危険なことをしているくらいの印象を持たれていました。

ただ、今では学⽣も⾦融リテラシーを⾝につけ、学⽣のうちから投資を始める⼈も⼀般的になってきました。それはNISAの効果によるものが⾮常に⼤きいと思っています。「NISAやってる?」という⽇常会話が⾃分の周りでも増えてきたのではないでしょうか。

では、お⾦のトレーニングです。NISAは海外の制度を模倣して始めた税制優遇制度ですが、それはどこの国の制度でしょうか?

答えはイギリスです。イギリスのISAという制度ですが、ISAとはIndividual Saving Accountの略で、1999年に個⼈の貯蓄や投資を促進する⽬的で導⼊されました。イギリス居住者対象の税制の優遇措置のついた個⼈貯蓄⼝座、その制度のことをいいます。⾮課税期間は無期限。その⽇本版=NIPPONということで、NISAとなりました。

そのNISAが⽇本でも徐々に普及して、コロナ禍もあり急速に若者の間で加速してきています。さらに政府としても、資産運⽤⽴国を国家戦略として打ち出していますので、ますます貯蓄から投資を加速させる狙いがあり、より一層NISAを浸透・拡充させる⽬的で発表されたのが新NISAです。

新NISAのポイントを簡単にまとめると、「⾮課税保有期間の無期限化」「年間投資枠が最⼤年間360万円までに拡⼤」「⾮課税保有限度額が全体で1,800万円までに拡⼤」の3つです。無期限化も素晴らしいのですが、枠の増加も国の本気度が伝わる⼤改正となります。ここまでの優遇が受けられる⾦融制度は、世界を見ても数少ないのではないでしょうか。

それではお⾦のトレーニングです。NISA⼝座数は増え続けていますが、現在の⼝座数はどのくらいでしょうか?

答えは、NISA総⼝座数は1,237万⼝座(2023年3⽉末)です。およそ⽇本⼈の10⼈に1⼈がNISA⼝座を持っている形となります。2022年末と⽐較して5.0%も増加しているのです。そこには若年層の⼝座開設数の増加も貢献しています。

⾦融教育を提供してきたなかで、世の中の変化をダイレクトに感じたのはユーザーからの質問内容でした。近年では、「資産形成には株と債権とどちらがいいのか迷っています、それぞれのメリットデメリットを教えてください」「NISA⼝座は開設しているのですが商品の選び⽅がわかりません。⻑期分散で⽼後に備えられる選び⽅はなんですか?」という質問が⽬⽴ちます。⻑期、分散は資産形成の基本ですが、そのような概念を理解した上で、もっと詳しい⾦融リテラシーを⾝につけようとする⽅が増えてきているのです。

「YouTubeでお⾦の動画を⾒て、NISAをやらないと損していると思いました」というような声も多く、⾦融教育YouTuberの社会インパクトも⽇に⽇に⼤きくなっています。

ただ、⾦融教育を提供開始した5年前あたりだと、「ビットコインはやっぱり儲かりますか?」「 億り⼈に私もなれますか?」「1週間で2倍になる株を教えてください!」のような質問も多くあり、この5年間で世の中の⾦融リテラシーが底上げされたと強く思います。若年層もスマートフォンやYouTubeなどで基礎知識を⾝につけられる時代になっているのです。

その反⾯、懸念されるのが若年層を狙った投資詐欺の増加です。警視庁の発表でもコロナ前後で20-30代の投資詐欺被害割合は増加しています。基礎的な⾦融リテラシーさえあれば防げたかもしれないことも、知らないがゆえに騙される被害にあう⼈も多くいます。成⼈年齢の引き下げもありましたので、ますます若いうちから⾦融リテラシーを⾝につけることが重要になりますし、⼀度⾝につけると⾃転⾞の運転と同じで、基本的なことは忘れることはありません。リテラシーは⾃分の⼈⽣の武器になるのです。

そして投資が⾃転⾞の運転と同じなのは、知っていることと、実践できることは違うということです。どうやってブレーキをかけるのか、どうやってペダルを踏んでいくのか、交通ルールはどうなっているのか。まずは学習することが⼤事ですが、次に⼤事なのは少しでもいいから実践してみることです。最初は数メートルくらいで転んでしまいますが、次第に距離が伸びていき、そのうち公道もスムーズに運転できるようになります。

投資も同じで、ある程度学習できたら少額から投資をしてみることをおすすめします。いきなり⼤きな⾦額を投資することはおすすめしません。それは⾃転⾞に乗りたてなのにいきなり公道に出るような危険な状況です。少額からでも投資を始めると、貯⾦の世界とは違った世界が⾒えてきます。そうしてある程度慣れてきたら少しづつ額を増やして、リスクをとっていくことができるようになります。

ただ⾃転⾞と同じで、投資も慣れた頃に事故リスクが上がります。⻑期分散という基本ルールを守ること、⾃分のリスク許容度を決めておくこと、相場のわからないものに⼿を出さないことなど、投資に慣れてきた時ほど基本原則を忘れないように注意しましょう。

■連載「アフターコロナのお金論」とは
新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」ファウンダーの児玉隆洋が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

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児玉隆洋/Takahiro Kodama
ABCashファウンダー。1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。著書に『未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる』がある。

TEXT=児玉隆洋

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