35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第210回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
“匂わせ投稿”を英語で言うとなんだ?
最近、日本語ペラペラのアメリカ人の友人のSNSが、にわかに香ばしくなってきています。
これまでも料理をすると写真に撮って投稿していた彼女ですが、ここ数日は必ず、写真の奥にもう1皿、同じ料理が見切れています。
さらに、「ネイルを新しくした」という投稿には、ネイルよりも派手なダイヤの指輪に目がいくようになっています。これは間違いなく、ボーイフレンドができたはずで、「投稿見たよ、彼氏できたよね? おめでとう!」とメッセージを日本語で送ってみたところ、こう返事が返ってきました。
I am doing a soft launch of our relationship incase it doesn't work out.
直訳すると「私は、うまくいかなかった時にそなえて、私たちの関係をソフトローンチしている」ということになります。
全然意味がわかりません。
正直に日本語で「soft launchって何?」と返すと、こう教えてくれました。
soft launch=匂わせ投稿
「カフェで休憩中」という投稿写真、テーブルを挟んであきらかにもう1名いるとか、「家でパスタ作った! うまくできた♡」という投稿の写真に、パスタの皿が2枚写っているなど、恋人の存在を明言していないまでも「匂わせる」、あの投稿のことです。
本来は、商品やサービスが正式にリリースする前に、数量限定とか、エリア限定などで、こっそり発売やサービスを開始することをいう名詞だそうです。最近は、そこから派生して、「匂わせ投稿」という意味のスラングが登場しているのだそうです。
なんで、hard launchしないの??
しかし、「匂わせ投稿」という言葉は、わりと日本だとネガティブな表現ですが、彼女はなぜ自らI am doing a soft launch.と言ったのでしょうか。
これも聞いてみると、日本よりも、恋愛事情がオープンな地域では、付き合っている相手との2ショットをSNSにガンガン上げてhard launchする人も多いのだそうです。ソフトローンチが「匂わせ」「チラ見せ」ですから、ハードローンチとはそれよりレベルが上の「この人と付き合ってます宣言」「この男性には手を出さないでください宣言」「私彼氏います宣言」となるそうです。関係がオフィシャルになるので、その後、発展しやすかったり、隠し事もしなくていいので、hard launchはとても健全かもしれません。
けれど、彼女は“I am doing a soft launch of our relationship incase it doesn't work out.”と言いました。これは「関係がダメになるかもしれないから、まだSNSで顔出しはできない。匂わせにしているの」ということです。
たしかに、しっかりSNSで彼の顔を出してしまうと、別れた後にいろいろと他の人に説明しないとならないでしょうし、面倒かもしれません。なら投稿しなきゃいいのにとは思いますが、浮かれた気持ちもあるので、ソフトローンチしているのかもしれません。
そういえば、ロンドンで知り合ったブラジル人の英語教師は、SNSにボーイフレンドの写真をめちゃくちゃたくさん上げていました。仲がいいんだな、結婚するのかな、と思っていたら、ある日を境に、彼の写真はまったくなくなりました。
悪趣味とはわかっているのですが、ついつい過去の投稿を振り返ってみたら、彼の投稿は全部消されていました。こういうことにならないために、アメリカ人の彼女はソフトローンチにしているのでしょう。けれど、別れたらその匂わせ投稿だって消すのでしょうけど。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者による英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。