人口減少と高齢化が大きな社会問題になっている現代。なぜ東川町は、若い世代を中心に移住希望者が増加しているのか? 【特集 北海道LOVE!】
1. 人口は約8,600人。30年で1,600人増加!
人口減少に悩む地方自治体が多いなか、東川町は移住希望者を着々と増やし続けている。以前は東川町でも人口が減少する時期が続き、1994年には約7,000人と「底」を迎えた。だが、その後、増加傾向に転じ、今では8,603人を数える(2023年6月末現在)。
外国人の受け入れにも積極的で、2015年に日本初の公立日本語学校となる「東川町立東川日本語学校」を開校。今では、町内に子供から高齢者、留学生が集い、町に活気をもたらしている。
2. 旭川空港からクルマで約10分という利便性
地方都市では交通の便の悪さが移住のマイナス要素になることもあるが、東川町の利便性は申し分ない。東川町は人口規模で北海道第2の都市である旭川市に隣接。旭川空港まではクルマで約10分。
町から30分圏内には大型のショッピングセンターや総合病院もあり、毎日の生活はもちろん、ケガや病気を患った時にも対策をとりやすい。インターネット上に通販サイトも充実している現代では、快適な生活を見込める環境といえる。
3. 新旧の東川小学校がすごい! 織田コレクションは必見
壁がないオープンスタイルの教室や総延長270mの廊下など、規格外のスケールで注目を集める「東川小学校」。同時に、1961年建設の「旧東川小学校」の校舎も有効に活用されている。建物は複合交流施設「せんとぴゅあ」として生まれ変わり、ギャラリーやラウンジ、約5万冊を所蔵する図書スペースなどを開設。
優れたデザインの家具や日用品を集めた「織田コレクション」を展示する家具デザインアーカイブスも見ごたえあり。
4. 町おこしは文化づくりから。「写真の町」でブランド化
東川町では日本各地で地域おこしがブームになる前から、独自の町づくりを進めてきた。そのひとつが1985年にスタートした「写真の町」事業。同年に始まった「東川町国際写真フェスティバル」は町最大のイベントで、メインプログラム「写真の町東川賞」は国内有数の名誉ある写真賞となった。会期中には写真展や写真ワークショップ、写真による自然観察講座などを開催。
また「写真甲子園」も2023年で30回を迎え、町に根づいた。町民と町を訪れる人々が交流する文化発展の場になっている。
5. 大雪山の雪解け水で美味しいお米を炊く
東川町は北海道で唯一、全国的にも珍しい上水道のない町。人々は生活用水のすべてを地下水で賄っている。この天然水は大雪山の大自然が蓄えた雪解け水が長い年月をかけて地中深くにしみ込み、ゆっくりと東川町へ運ばれてきたもの。ミネラルが豊富に含まれ、味も美味しく感じられる。
さらに、この天然水で育てた米や野菜がまた美味しい。豆腐や味噌、酒などにも天然水が用いられ、東川町の土産品として人気を集める。
6. 隈研吾と連携した温浴施設&サテライトオフィス
東川町とタッグを組み若手家具デザイナーを発掘するコンペを開催するなど、町と強い協力体制を築く、建築家・隈研吾さん。2022年5月には隈研吾さんが設計したサテライトオフィス「KAGUの家」が完成した。アフターコロナの時代に合った新たなワーク・ライフ・バランスを提示し、新産業の創出を目指すという。
2023年7月20日、キトウシの森に隈研吾さんデザイン監修の温浴施設「キトウシの森きとろん」が開業。町の新名所として注目を集めている。
7. 「旭川家具」の産地として産業を成長させる
町は日本五大家具「旭川家具」の産地。1954年、洞爺丸台風によって町に散乱した倒木を有効に活用しようと始まった家具の製造が、今では町を代表する産業に成長。1921年には4月14日を「椅子の日」に制定し、椅子に感謝する文化の浸透を目指す。
東川町では、新生児に「生まれてくれてありがとう」の気持ちをこめて“君の椅子”をプレゼント。中学校の卒業時には3年間使った“学びの椅子”を記念に持ち帰ることができる。
8. 10年前から2倍以上に増加! 東川の家具を体感する場
若い移住者が多く、活性化が続く東川町。10年前に約35店だった飲食店や小売店などのお店は約80店以上に増加した。そのなかには東川町のデザインや家具を体感できるカフェが多い。
北海道産広葉樹の無垢材を使ったシンプルでモダンな家具が人気の「北の住まい設計社」が運営するカフェ&ベーカリーや、東川町の木工事業所17社が制作した椅子やテーブルを利用できる「higashikawa style cafe Zen」なども。実際の使い勝手を確かめられるのが嬉しい。
9. インスピレーションを求めてアーティストが移住する
北海道ならではの豊かな大自然だけでなく、家具を中心にしたものづくりや写真文化など、多様な個性が融合する東川町。複合的で独自性の高いカルチャーに惹かれて、移住を決めたアーティストも多い。
写真家、漫画作家、デザイン編集者、家具の職人、はたまた音楽ユニットらが、地域やその暮らしに寄り添うように活動をしている。町外からもたらされる新しい文化によって、東川のカルチャーはさらに奥深いものになっていく。
この記事はGOETHE2023年9月号「総力特集:北海道LOVE!」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら