35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」第146回!
旅の新常識。海外で、抗原検査キットを探す!
仕事で、2年半ぶりに、海外に出ました。
ワクチンを3回打って、入国と帰国の際にPCRを受けていれば隔離がない英語圏の国です。
「英語を使うチャンス!」と勇んでいきましたが、すっかり勉強を怠けていたため、なかなか現地の方の英語が聞き取れず苦労をしています。
ちなみに、入国審査からつまずきました。聞かれるのは「渡航の目的」「滞在期間」「宿泊場所」だと思っていましたから「サイトシーン」「7デイズ」「〇〇ホテル」を順番で言うつもりでカウンターに入りました。
……多分、いきなり全然違うことを聞かれた気がします。入国する前からすでに英語が聞き取れず、悲しい気持ちで“sorry?(すいません、もう一度いいですか?)”と聞き返すと、簡単なフレーズに言い直してくれました。
What is your job?
なぜ滞在期間や目的ではなく、いきなり仕事を聞かれたのかわからず、いきなり戸惑いました。とりあえず“editor”と職種を答えても発音がうまくできず、まったく通じません。3回ほど「エディター」と言ってやっと納得してもらい、入国できました。
「通じなかったけど、入国できただけいい」と自分に言い聞かせつつ、2年間英語をみっちり勉強したのに、1年半さぼったことによって、英語力が再び0になってしまったことにしゅん、として入国審査を出ました。英語力は、筋肉と一緒。キープできるのはトレーニングを続けている人だけなのです。
入国したのち、仕事相手に何人かお会いし、聞き取りがうまくできなくても、なるべく自分の言葉で挨拶や仕事の目的を説明したいと、下手な発音、めちゃくちゃな文法で話し続けました。もちろん、ちゃんと通訳してくれる人もいるので、肝心な部分は訳してもらいます。下手な英語で、通じなかったり、不快な顔をする人もなかにはいますが、ほとんどのネイティブの方は、みんな優しく聞いてくれました。
考えてみれば、オンラインの英会話コースをみっちりうけてネイティブ相手に練習することは、国内にいたってできるので、「最近海外に行っていなかったから英語力が下がった」という言い訳はまったく通用しません。
ある日、お会いした仕事相手の方から、連絡が来ました。
「コロナ陽性になってしまったから、一応あなたも検査を受けた方がいい」
マスクはしていましたが、一緒に食事もしたので、いったんホテルに引きこもることに。現地の人に「検査キットが薬局で買えるから、それでチェックすればいいと思う」と言われて薬局にいきました。その方に「検査キットって英語でなんて言うんですか?」と聞いてみると。
「Antigen testでいいと思いますよ」
「アンティジェンテスト」。
「エディター」も通じなかった私に発音できる気がしません。多分、母音の音を発音するのが私は下手なんだと思います。
けれどこればかりは間違ったものを購入しては大変なので、お店の人に絶対聞かないといけません。お店に入っただけで緊張しました。
Could I get an Antigen test kit?
勇気を振り絞りましたが、案の定、通じません。
勇んで“an”もつけたため、「アン アンティジェン」となって母音がかさなり、まったく発音できませんでした。
結局、スマホでスペルを書いて印籠のようにかざして見せて最終的に通じました。
It is behind the counter.
(カウンターの後ろにあるよ)
とお店の人に言われ、「一緒に探してくれないんだ」と思いながらカウンターのあたりをうろうろしましたが、全然見つけられません。5分ほど探してもう一度聞いたら、やっぱり“Behind the counter“と同じことを言われて、しゅん、としてカウンターにもう一度行ったら、カウンターにいる薬剤師さんのような方にオーダーして、バックヤードから持ってきてもらう、というタイプのものでした。
薬剤師さんにも、スマホを見せて「これをくれ」と伝えると、薬剤師さんも不安になったのか、パッケージをしっかり見せて「これでいいな?」と確認してくれました。
検査結果は、幸いなことに陰性でした。翌日から気をつけつつまた仕事に戻っています。
合間時間には、siriにむかって“Antigen”と言い続け、siriが認識してくれるまで発音の練習中です。ちなみにまだ一度も認識されていません。
旅が少しずつ開かれ始め、それでもコロナはまだある世の中。海外で検査キットを探すことが、これからは旅の当たり前になりそうです。早く“Antigen”と言えるようになりたいです。
Illustration=Norio