35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第79回!
“flip through”とも言う
外国人の友人たちとチャットで「正月休みは何をしていたか」を話していた時のことです。わたしは「正月休み」のことを話し、友人たちは「クリスマス休暇」について喋っている状態ですが、今の世の中休みにどこかへ行けるわけでもないのは同じ、誰もがこういいました。
Just flicked through the channels
「テレビのチャンネル変えてただけだよ」ということです。
flick throughとは、パラパラとなにかをめくったりするような動作をしめす言葉で、新聞や雑誌、テレビのチャンネルなどが当てはまります。“flip through”とも言うようです。
「英語を使う機会が減って、“flick through”の意味さえ思い出すのに時間がかかった」と返信すると、ロンドンでフリーのエンジニアとして働く友人の一人が「いい例文をあげるから、思い出しなさい」とこんな一文を送ってくれました。
I flick through the pages of my appointments diary, which are blank.
(真っ白な予定帳を僕はパラパラめくる)
コロナ禍で仕事が減っているのかと聞くと、あっさり“No as usual(いや、もとからだよ)”と彼は答えていました。
ミッキーをつれてくる?
take the mickeyは日本語でいう「イジる」
日本語のスラングをやたらと覚えたがるイギリス・バース在住の大学院生が、たまに日本語のレッスンにやってきます。先日は「バラエティ番組で芸人がいう、「イジる」の意味がわからない、と質問をしてきました。「からかうとか、笑いものにするとか、そういうことですよ」と曖昧な日本語で回答したところ。
「ああ、take the mickeyに近いな」とおっしゃいました。それが正しいのかまったくわからず、フリーズしていたら、逆に生徒さんが教えてくれました。
Take the mickey out of someone
=おふざけのなかで、誰かを、馬鹿に見せる
ということなのだそうです。「あいつこんなことしてたよ」と言って、その人の真似をしたり、小さな嘘でその人を騙したり。あくまで“in a friendly way”(フレンドリーな方法で)ということで、「いじめではない」と彼は主張しました。
しかしながらケンブリッジの英英辞典にはこのように解説がされていました。
to laugh at someone and make them seem silly, in a funny or unkind way
(意地悪な方法を用いて、誰か馬鹿にみせて笑うこと)。
大学院生が言ったような「あくまでフレンドリーな方法でさ」という説明は含まれていない印象です。
例文には以下のものがありました。
She's always taking the mick - she's got no respect for the managers at all.
(彼女はいつも笑い者にしているーーそれは結局彼女がマネージャーを尊敬していないからだ)
マネージャーのモノマネをしたりして、笑い者にしている様子が浮かびます。しかし「上司のモノマネ」は閉鎖的なオフィスで働く場合、わりと鉄板ネタである気がします。尊敬しているか馬鹿にしているか、ネタにしただけではわからないので、やっぱりこの言葉が日本語の「イジる」同様に「いじめなのか、フレンドリーなのか」とても曖昧な意味なことがわかります。
同じような言葉で“take the piss”というフレーズもあります。
「おしっこをひっかける」ではなくて、これも「笑い者にする」というようなことだそうです。さだかではありませんがスラング辞典によっては“take the mickey”よりも悪意がある、と書かれていることもあります。
愛があろうがなかろうが「イジられた方が嫌だと思ったらそれはいじめ」というのは恐らく世界共通でしょう。
Illustration=Norio