35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第64回!
日本独特の概念「しょうがない」は英語でも言えた!?
「しょうがない」「しかたない」、この言葉は、英語にはない概念のひとつです。オンラインで日本語レッスンを受けてくれているイギリス人の生徒さんも「日本に来て『しょうがない』という考え方を覚えた。日本人は本当によく使うね」と言っていました。
「イギリス人はあきらめないから、こういう言葉はない」そうですが、自然災害の多い日本では、「自分ではどうすることもできなかった」「しかたない」と思わないと、立ち直れない局面がたくさんあったのかもしれません。
先日、アメリカのアーティストの方にオンラインで取材する機会がありました。といっても、いつものように勘で話し続けて、めちゃくちゃな記事を作るわけにもいかないので、通訳の方に入ってもらいました。台湾、マレーシア、香港など他のアジアのメディアもこの取材には参加しており、通訳を入れているのは、明らかに日本メディアの私だけで、実に恥ずかしいことでした。少し落ち込みましたが、「たとえ通訳を入れずにこの取材の場を収められたとしても、やっぱり記事を作る時には言葉のニュアンスが大事になるのだから、絶対通訳が必要だ。これはしかたないことだ」と、自分に言い聞かせて取材に挑みました。
質問がコロナの現状について及んだとき、その方はこうおっしゃいました。
That’s not up to us.
おや? と思いました。そして通訳さんもおっしゃいました。
「コロナの問題は、私たちにとってはどうすることもできない、したかないこと」
Up to +人で、「その人次第」という意味になり、例えば こんなふうに使います。
Do you want to stay or go? It’s up to you.(留まるか行くか、それは君次第だよ)
ですので、この“That’s not up to us”の場合は、
「それは私たち次第ではない」という意味になり、イコール「私たちにはどうすることもできない」→「しかたない」とも訳せるのです。
「どうすることもできない、それを受け入れるしかない」という表現は他にもいくつかあるようで、こんなふうにも言えるそうです。
It can"t be helped.
直訳すると「助けられることができない」となりますが、「嫌なことだが避けられず、受け入れるしかない」時に使うそうです。ケンブリッジの英英辞典にはこのように例文があります。
I really didn"t want to go away this weekend but, oh well, it can"t be helped.(本当は、今週末行きたくなかったんだけど、でも、もうしかたない)
他にもシンプルに
I had no choice.
も同じような意味で使えるそうです。直訳通り「選択肢がなかった」=「他にどうすることもできなかった」という意味になるのでしょう。
「しかたない」、英語でも言えないことはないんだなぁ、と勉強になりました。しかし「しかたない」に対して、“not up to us” “it can"t be helped”は「自分のせいではない」というニュアンスが少し強いような気はします。日本語ではビジネスの場で「しかたない」が口癖の人は「あきらめないで、もうちょっとがんばれよ」と思われがちです。英語でも“not up to me”ばかり言っていると「また、人のせいにして」と思われてしまうのかな、とふと思いました。
予習復習で大混乱!?
日本語オンラインクラスに、新しいアメリカ人の生徒さんが来てくれました。彼はイギリスの大学に行っていて、昨年まで日本の大学に交換留学生として通っていたということでした。
「復習はしてきましたか?」
という私の質問に「復習」の意味が一瞬わからず、戸惑っていました。
「英語でいうと、“review”ですよ」
そういうと納得したのですが、彼はこう言いました。
「アメリカ英語で、“review”は『見ておく』ことで、今言った『復習』という意味に近いんです。でもイギリス英語では“review”って言わないんですよ、“revise”って言うからびっくりしちゃった!」
“revise”は「修正する」「改訂する」という意味ですから、イギリス風に“Let’s revise previous lesson”(前回の授業を復習しよう)」というと、アメリカ英語圏では「前回の授業を改訂する!?」となって混乱してしまうそうです。
ちなみに私は、英和辞典通り、復習は、“review”、予習は“preparation”と覚えていたのですが、アメリカ英語ではこういうふうにつかってもOKとのこと。
Review for next lesson
次のレッスンのための“review”、なので、これはもう「予習」ということです。予習復習ということではなく、“review”は教科書を見ておく、というニュアンスで使うようです。
MOMOKO YASUI
編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英、’20年帰国。