最先端医療を8年以上取材し続けている堀江貴文氏が、現代人が知っておくべき健康投資についてまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。 ⽼化のリスクを圧倒的に下げる知識・習慣・考え⽅』が発売された。今回は、この書籍でも取り上げている睡眠時無呼吸症候群の治療法「CPAP」がもたらす、ビジネスパーソン必見の効果について紹介する。※過去掲載記事を再編
堀江貴文「CPAPは睡眠をよくし、病気予防までもかなえる」
堀江貴文(以下堀江) 「堀江さんはたぶん睡眠時無呼吸症候群。睡眠の質が上がるから、専用の治療器具であるCPAPを使ったほうがいいよ」と知人に勧められ、最近、田中俊一先生のクリニックで扱っているCPAPを使い始めました。
田中俊一(以下田中) CPAPは保険適用されている医療機器で、鼻を覆うマスクを装着して圧をかけた空気をエアチューブから送りこむので、睡眠時に気道が塞がれないんです。堀江さんが使っているCPAPはマスクのフィット性が高くて、加湿した空気を気道に送りこむタイプのものです。マスクは苦痛じゃなかったですか?
堀江 違和感はありますが、苦痛ではなかったです。
田中 よかった。実は僕も使っています。僕自身の“無呼吸”はたいしたことないから、時々使うくらいだけど、「苦しくて使えない」という患者さんがいるくらい、合う・合わないの違いは大きいです。
堀江 先生が使うのは治療ではなく、健康のためですか?
田中 はい。程度の差はありますが、日本人の8割以上は睡眠時無呼吸症候群ではないかと思っています。CPAPは受診して診断基準に合えば保険治療ができますし、自費の自由診療なら診断基準を満たさなくても使えます。とはいえ、寝ている間のことだから自分じゃ気がつかない。同室で寝ている人に「いびきがうるさい」って言われるのが初期段階だけど、それはまだいいんです。呼吸ができているってことだから。呼吸が止まると、音がしないので。ひどくなると1回呼吸した後、60秒間くらい無呼吸になる。静かなので、同室の人も気づかない。
堀江 僕の場合は、お酒を飲んで帰った翌朝に疲れが残る感覚があるので、“無呼吸”かもしれないと感じましたね。
田中 飲酒すると筋肉が弛緩するので、無呼吸になりやすいですね。ひどくなると低酸素血症になって、苦しくてうなされて目が覚めたり、悪夢を見たり。その段階でネットや本で調べて「無呼吸症候群かも?」と気づいて受診する方も多いです。
堀江 けっこう進んでからなんですね。
田中 CPAPの治療を始めると、加圧された空気が鼻から入るので、誰でもその日から呼吸が通るようになります。マスクに慣れれば呼吸が楽になって快適だし、逆につけないと、次の日に疲れが残ることもわかる。僕も使わないと、なんとなく調子が悪いですね。僕の仕事は患者さんの話を理解して、説明や提案のために喋ることが多いから、頭が回っていないと話の内容が入ってこない。だから頭を使う人にとってCPAPは必須だと思っています。自費診療のビジネスパーソンやハイクラスの方々は、海外出張にも持っていきますよ。事前確認は必要ですが、機内に持ちこめるので。機内で快適に眠れ、現地に着いたらすぐに仕事ができます。
堀江 機内であれをつけて眠るんですか?
田中 そう。ノイズキャンセラーのイヤホンをして、CPAPをつけて寝ちゃう。
堀江 サイボーグですね。ビジネスクラスなら、スペースがセパレートされているから使いやすいかも。僕が使っているCPAPは鼻につける部分がシリコンでフィット感がいいけど、エアチューブの部分はもう少し改善されるといいですね。
佐久間宣行「1晩で100回以上無呼吸。CPAPで格段に睡眠の質が向上した」
人気バラエティ番組を数々手がけるテレビプロデューサーの佐久間宣行氏。日々の企画だしや撮影に加え、毎週水曜日は深夜ラジオの生放送に出演、入眠時間は毎日どうしてもバラバラになるが、睡眠は5時間以上を死守しているという。
「睡眠時間とともに質も意識するようになったのは4年前から。当時大好きな舞台を見ている時に、眠くなってしまうことが多かったんです。集中できないのは年齢のせいかと思ったのですが、おぎやはぎの矢作兼さんに『夜ちゃんと寝られてないんじゃない?』と言われ睡眠クリニックを受診しました」
その結果、1晩で100回以上無呼吸になっていたことが判明。睡眠時の呼吸を補佐する機器CPAPをつけながら寝るようにしたところ格段に睡眠の質が向上した。
「眠るってこういうことだったんだと。良質に5〜6時間眠れたら、日中眠くならず、集中力も続くようになりました」
CPAP療法のメリットとは?
CPAPを装着すると、睡眠時に呼吸が止まることがなくなるため「呼吸がとおる」「いびきをかかない」。鼻から呼吸するようになるため「口呼吸の改善」「のどが乾燥しないのでインフルエンザの予防になる」。深く眠れるようになるため「疲れがとれやすい」「ライフスタイルがアップグレードする」などといった感想が治療経験者から得られている。
酸素の取り込み不足が改善されるため、低酸素血症のリスクも減り、「高かった血圧が下がる」「頻脈が起きなくなる」「高血圧の薬が減った」というメリットも期待できるし、その治療にかかっていた費用も軽減される。
CPAP療法がもたらす多くのメリットのなかには、「増加していた食欲が落ち着く」「肥満の改善」も含まれる。その理由について、医療法人みなとみらい理事長・田中医師はこう語る。
「睡眠時無呼吸症候群の人は深い睡眠が取れないから昼間は眠くなりそうなものだけど、睡眠リズムに関わるオレキシンという覚醒物質の分泌が日中に高まるため眠気を抑え、日中も眠らずに活動ができるのです。しかしオレキシンには別の作用もあって、食欲が増す。その結果、たくさん食べて脂肪が増え、さらに気道が狭くなって無呼吸になる。するとオレキシンの作用が強まり……という悪循環になるのです」
睡眠時無呼吸症候群では、オレキシンが過剰に分泌されるという指摘もある。CPAPを使うとよく眠れてすっきり目覚めるから、オレキシンの大量分泌がなくなり、食欲が落ち着いて肥満度が改善、という効果が得られるわけだ。
CPAPの費用は?
睡眠時無呼吸症候群の検査・診断には、睡眠状態の精密測定のためのPSG検査を行う。これが13,000~30,000円程度。中等症以上と診断されてCPAP治療を行うなら、機器をレンタルする場合で、診療費、指導管理料を含めて月5,000円程度(健康保険3割負担時)。2ヵ月に1度の受診でCPAPの調整と、悪化してないかどうかの検査も行う。
CPAPは自費で購入することも可能で「現在5種類くらいありますが、CPAPはマスク内に風が出てくるだけではなくて人工呼吸器に近いものです。安くて機能もよいというものはありませんから、よく説明を聞いて、自分に合うものを選んでください」と医療法人みなとみらい理事長・田中俊一医師。
機種によるが、料金は30~40万円くらいが目安とのこと。