30代になったら意識しておきたい、男性更年期障害の症状と治療方法とは

若い頃と比べ、おなか回りが目立ってきたり、疲れやすくなったり、気力が減退したり。それ、年齢のせいではなく男性更年期障害が原因かも!? 30代になったら意識しておきたい「男性更年期障害」の症状や治療法から病院では何科を受診すればいいのかまで、順天堂大学の辻村晃教授に教えてもらった。

男性更年期障害とは

男らしい体をつくり、生殖機能を促進し、バイタリティを高めるなど、男らしさの源になっている男性ホルモン。男性更年期障害治療の第一人者、辻村晃先生いわく、「個人差はあるものの、分泌は20歳前後をピークに、30代から徐々に減っていきます。その結果引き起こされる心身の不調を、男性更年期障害と総称します」。つまり、閉経前後に急激に女性ホルモンが減少することで起こる女性更年期障害と同じような現象が、男性にも起こるというわけだ。

男性更年期障害と女性更年期障害との違い

女性の更年期障害は古くから認知されていたが、男性更年期障害が注目されるようになったのは2000年代以降。それは、男性ホルモンの減少は緩やかなので、「この年代になったら、こういった症状が出る」という目安が立てづらいためだ。

「30代で症状を自覚する人もいれば、40代になって実感する人や50代以降に不調を訴える人もいるなど、男性更年期は個人差が非常に大きいという特徴があります。男性ホルモンの数値は低いのに症状が出ない人がいる一方、数値は正常なのに不調を訴える人もいますしね。そこが、『閉経前後10年間に症状が出やすい』という目安がある女性更年期との大きな違いです」

男性更年期障害の症状

「男性更年期障害の身体的な症状として、皆さんが真っ先に思い浮かべるのは、勃起障害や性欲の減退、射精障害など男性力にまつわるものでしょう。けれど男性ホルモンは、生殖機能だけでなく、身体のさまざまな臓器に関わっているもの。中年太りや骨粗しょう症、突然のほてりや発汗、だるさ、疲れが抜けないといった症状が出るケースもあります。また、血管の状態や血行にも関係しているため、男性ホルモンの数値が下がると動脈硬化が起こりやすくなるという研究結果もあるんですよ。こうした症状が進行すると、メタボリック症候群や脳梗塞、心筋梗塞、狭心症といった重大な疾病（しっぺい）につながる場合もあります」

精神的症状とうつ病との違い

メンタル面で目立つのが、気分が落ち込む、やる気が出ない、憂鬱になる、気持ちが塞ぐといったネガティブな感情に支配されてしまうこと。逆に、ちょっとしたことでイライラしたり、怒りっぽくなったりなど、攻撃性が増すケースもあるという。

「どんな症状が出るかは人によりますが、ネガティブな精神状態の場合は放っておくと危険。不眠症や鬱、パニック障害を引き起こす可能性もあるので、『年齢のせいだからしかたがない』などと思わず、一度診察を受けてほしいですね」

男性更年期障害の症状のセルフチェック

脳梗塞や心筋梗塞、鬱やパニック障害など、放っておくと深刻な病気につながる危険性もある男性更年期障害。危険を防ぐ最善策は、早めに自覚することだ。そのためにも、まずは、下記のチェックリストを確認してほしい。8項目中4項目以上該当するなら男性更年期障害の可能性がある。

□性欲が減退し、セックスの喜びも低下した
□朝立ちの回数が減ってきた
□筋力が弱くなってきたと感じる
□太りやすくなり、お腹が出てきた
□寝つけない、早く目が覚めるなどの睡眠障害がある
□やる気が低下、気分が沈む日が増えた
□すでに燃え尽きたという感じがする
□突然の発汗やほてりがある

男性更年期障害の治療法・予防法

心身にさまざまな不調をもたらす男性更年期障害を治す方法はあるのだろうか。

「男性更年期障害の原因は男性ホルモンの減少なので、男性ホルモンを補充することで症状の緩和が期待できます。最も効果が高いのは医療的な処置。病院で何科を受診すればよいかわからないという声も聞きますが、男性更年期障害外来や泌尿器科が良いでしょう。海外では服薬も許可されていますが、日本で行えるのは、外用薬や注射によるホルモン補充療法です。どちらも前立腺肥大や肝臓病など病気を抱えている人は受けられないなど注意点があるため、必ず医師に相談してください」

男性ホルモンを大幅に増やすとまではいかないものの、日常生活によって改善したり、予防したりということも可能。

「バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠。健康維持に必要なこれらの要素は、男性ホルモンを増やしたり、減少スピードを遅らせたりといった効果も期待できます。ただし、マラソンやトライアスロンなど、ぐったり疲れるほどの運動はホルモン数値を下げてしまうので、ほどほどに。週2～4回ほどのウォーキングや軽めのランニング、エアロバイクを30分程度など、心地よく疲れる程度がベストです」

睡眠は、自分に合った寝具を使う、寝る前にスマホやPCなど明るい画面を見ないなど環境を整えるのがカギになるが、それ以上に重要なのがメンタルだ。

「不安や心配事があると入眠障害を起こしやすく、気持ちが落ち込んだり塞いでいたりすると早朝覚醒しやすいと言われています。“卵と鶏”でどちらが先とは言い難いですが、ぐっすり眠れないことでホルモン数値が下がり、ホルモン数値が下がることで、さらに眠れなくなるといった悪循環が起こる可能性もあります。

なお、人と交流する、外に出かけて刺激を得るといった“社会活動”も、ホルモンの分泌を促すんですよ。女性と触れ合うなど、心がときめく時間を持つことも有効だと思います」

人生100年時代を有意義に過ごすべく、食事や運動、睡眠に気をつけ、上手にストレスを解消し、時に医療の力を借りて、男性更年期障害と無縁の生活を送りたい。

まとめ

男性更年期障害の改善にはホルモンアップが有効。
 
 

＜監修＞辻村晃 先生
兵庫医科大学卒業。日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医、日本生殖医学会 生殖医療専門医。国立病院機構大阪医療センター勤務後、ニューヨーク大学に留学。大阪大学医学部泌尿器科准教授などを経て、順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科教授に就任。生殖医学や性機能障害のエキスパートとして、Dクリニック東京の男性更年期と男性妊活外来を担当。