今回はノールックアプローチでゾーンでインパクトする感覚をマスターする練習法を紹介する。

ボールを凝視すると体が止まりやすい
アプローチでミスショットをしたとき、「もっとボールをよく見て」「頭を残して」と言われた経験はないだろうか。
だが、アドバイスどおりにボールをじっと見ても、うまく打てるとは限らない。むしろ、ボールを凝視することで、体の動きが止まってしまいミスにつながることがある。
たとえば、バスケットボールのノールックパスを思い出してほしい。
相手にパスのルートを読まれないために視線とは違う方向にパスを出すが、これはボールの位置を見ていなくても、体の感覚で的確にボールをコントロールできるからこそ成り立っている。
ゴルフの場合、ノールックスイングというと、女子ゴルフ界のレジェンド、アニカ・ソレンスタムのスイングを思い出す人もいるだろう。ソレンスタムはインパクトの瞬間に顔が目標方向に向いており、ボールを見ずにスイングをする。スイング動作が適切であれば、ボールを見ることはそれほど重要な要素ではないのだ。
ゴルフのアプローチも同様で、視覚に頼ってボールを「点」でとらえるのではなく、一連のスイング動作の中で「ゾーン」でボールをとらえるという感覚を養うことで再現性の高い動作が可能になる。
ノールックアプローチで「当てにいかない感覚」を養う
今回おすすめしたいのが、ボールを見ずに打つノールックアプローチの練習だ。
この練習では、腰から下の振り幅のアプローチショットを行う際に、ダウンスイングで顔を目標方向へ回転させながらボールを打つ。ダウンスイングで視線を先行させていくことで、スムーズな回転運動をすることが可能になる。
それに加え、インパクト前に意図的にボールから視線を外すことで、結果的に「ボールを見ながら打つ」という行為から自分を切り離すことができる。
その際に、インパクトで前傾姿勢のまま体が起き上がらないように気をつけ、顔だけを目標方向へ回していくようにしてほしい。フォロースルーでは、おへそを目標に向けるようにして体全体を回転させ、フィニッシュでは体が垂直になるようにする。
最初のうちは空振りをしたり、トップやダフリが出るかもしれないが、それはむしろ自然なことなので気にする必要はない。
それよりも大切なことは、どのようにボールを打つかではなく、体の回転とスイング軌道のなかでボールをとらえる感覚をつかむことにある。
ノールックアプローチの練習は、視覚に頼りすぎないスイング感覚を構築していくための手段だ。
たとえば、バスケットボールのノールックパスや、サッカーのノールックシュートでも、選手たちは視線を送らない対象に対して正確な操作を行う。それは、動きのなかで空間を感じ、ボールや対象の位置を頭のなかに描いているからこそ可能になる。
ゴルフでも同じように、ボールの位置を「見る」のではなく、「感じる」ようになると、視覚に縛られなくなり、再現性の高いスイングができるようになる。この練習を繰り返すことで、スイング軌道のなかでボールをとらえるゾーンインパクトの感覚が得られるようになるはずだ。
実際にコースでアプローチを打つ際は、ボールをぼやっと見るようにし、練習で養った感覚で打つようにしてほしい。
ボールを見ずにボールを打つ練習は、一見すると突飛で、常識に反しているように映るかもしれない。だが、あえて視覚という情報源をシャットアウトすることで、他の感覚が研ぎ澄まされていく。
まずは一球、目を閉じて打ってみよう。その一球が、自分のアプローチショットを根本から変えるかもしれない。
ゾーンでインパクトする感覚を身につける動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。