タイガー・ウッズも成し得なかった偉業を達成した20歳の新星ルーク・クラントンのように、反動を使って飛距離を出すためのドリルを紹介する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。
大学生アマの活躍が続く背景とは
最近のPGAツアーでは大学生のアマチュア選手や、大学を卒業してプロ転向したばかりの選手の活躍が目立つ。
2023年は、大学タイトルを総なめしてプロ転向したルドビグ・オーバーグが、プロ入り後にすぐ活躍。ライダーカップの欧州選抜メンバーに選出され、同年のザ・RSMクラシックで優勝するなど話題になった。
2024年は1月に当時アマチュアだった20歳のニック・ダンラップがザ・アメリカンエキスプレスで33年ぶりとなるアマチュア優勝を果たしてプロに転向。7月のバラクーダ選手権でも優勝するなど活躍し、この年の最優秀新人に選ばれた。
大学生や大学を卒業したばかりの選手が活躍する背景には、PGAツアーが優秀な学生選手への門戸を広げたことがある。
PGAツアーでは2020年にPGAツアー・ユニバーシティの制度が発表され、ランキング上位5人に対して、下部ツアーのコーンフェリー・ツアーやマッケンジーツアーなどへの出場権を与えることになった。
2023年からはランキング1位の選手にPGAツアーメンバーの資格が与えられるようになり、その制度の第1号がオーバーグだった。
さらに、PGAツアー・ユニバーシティ・アクセラレーテッドという制度も設けられ、学生から直接PGAツアーに参戦できる新たな道が開かれた。
アクセラレーテッドでは、プロやアマチュアの大会で優秀な成績を収めたり、大学のゴルフ賞を受賞したりするたびにポイントが加算され、3年生終了までに20ポイント獲得するとPGAツアーのメンバーシップが取得できる。
この制度でヴァンダービルト大学のゴードン・サージェントが初めて20ポイントを獲得した。サージェントはダンラップと同年齢で、2025年大学を卒業してからプロ転向する予定だ。
そうしたなか、彼らに続く選手として期待されているのが、ルーク・クラントンだ。
クラントンもPGAツアー・ユニバーシティ・アクセラレーテッドで17ポイントを獲得し、20ポイントまで間近というところまできている。
ジャック・ニクラウス以来の偉業を達成
クラントンは現在21歳でフロリダ州立大学の3年生だが、2024年はアマチュアながら世界ゴルフランキング87位(2024年末時点)になり、アマチュア世界ゴルフランキングも1位になるなど、若手注目選手の一人となった。
2024年6月に行われた全米オープンでは、最終予選会から出場権を獲得し、4日間を戦い抜いて41位で終えた。そして、2週間後のロケット・モーゲージ・クラシックで10位に入ると、翌週のジョン・ディア・クラシックでは2位タイに入った。
この試合では、もう少しで全英オープンの出場権をつかむところだったが、世界ランキング順で涙をのんだ。それでも、アマチュアのPGAツアー2試合連続トップ10入りは66年ぶりの記録で、タイガー・ウッズもできなかった快挙と話題になった。
クラントンの勢いは止まらず、8月のウィンダム選手権でも5位の成績を残す。
アマチュアが年間3度のトップ10入りを果たすのは、1961年のジャック・ニクラウス以来。大きな話題となったが、さらに11月のフェデックスカップ・フォール最終戦、ザ・RSMクラシックで2位タイとなり、4度目のトップ10入りを果たした。
ザ・RSMクラシックは終盤4人が首位で並ぶ展開で、十分優勝のチャンスがあったが、最終18番で痛恨のボギーとし、1.5mのバーディを決めたマーベリック・マクネリに一歩及ばなかった。
クラントンはPGAツアーで戦えることを証明したが、今後はどのルートからPGAツアーで戦うのかも注目だ。
PGAツアー・ユニバーシティ・アクセラレーテッドの資格でPGAツアーに参戦することを視野に入れつつ、ニック・ダンラップのようにアマチュアとして優勝してプロ転向することもあるだろう。
期待の新星がどのように輝きを放つのか注目したい。
クラブをしならせて反動を利用する
クラントンのスイングはバックスイングが速いことが特徴だ。そして、そのスピードを生かしてトップ・オブ・スイングでシャフトをしならせ、反動をうまく使って飛距離を伸ばしている。
今回は反動を使って飛距離を出すためのドリルを紹介しよう。
このドリルは、トップ・オブ・スイングでシャフトを肩や背中に軽くポンと当てるだけのシンプルな練習法だ。釣り竿をしならせるように、適切なタイミングや力感を身につけてシャフトをしならせるコツをマスターできるようになる。
シャフトを肩や背中に軽く当てるには、バックスイングの途中で力を抜いて、惰性でクラブを上げていく必要がある。
左腕が地面と平行になるくらいの位置で、バックスイングを上げるのをやめ、力を抜くといいだろう。惰性でクラブがトップ・オブ・スイングに到達するようにすることで、背中や肩にガツンとクラブが強く当たらずにすむ。
何度か素振りを繰り返して、ポンとシャフトが軽く体に当たるようになったら、次は足の動きを意識してみてほしい。
バックスイングで左足のかかとを上げ、シャフトが体に当たる前に左かかとを踏み込んでダウンスイングを始動する。この下半身主導のダウンスイングの動きによって、トップ・オブ・スイングに向かって上がっているクラブと逆の力が働き、引っ張り合うことよってシャフトがしなる。
トップでクラブをしならせ、反動を意識すれば、打ち急ぎも防げる。シャフトのしなりを使ってスイングスピードを上げ、飛距離を伸ばしてほしい。
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◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。