日韓通算14勝の記録を誇り、“スマイル・クイーン”と呼ばれ、日本でも多くの選手やファンに愛された美女ゴルファーのキム・ハヌル。2021年限りで現役を引退後、現在はテレビ出演やブランドアンバサダー、YouTubeなど多岐に活躍しており、充実したセカンドキャリアを歩んでいるのは前回紹介した通りだが、そんな彼女が先月17日に韓国で自身初のファンミーティングを開催した。
韓国で開催した、キム・ハヌルの初ファンイベントに参加
イベント名は「いつもファンの方々と思いをともにしたい」という意味を込めて『いつも、ハヌル』。高級ブランドショップや百貨店が並ぶ狎鴎亭(アックジョン)ロデオ通りにある「キャンバスNギャラリー」で行われたイベントには大勢のファンが訪れた。
冒頭、スタイリッシュなダンスでファンミーティングに登場したキム・ハヌル。音楽に合わせて軽快に踊る彼女の姿にファンは釘付けになり、2曲を終えた直後、客席からは大きな拍手と歓声が飛んだ。
ステージで改めてファンに挨拶したキム・ハヌルは、いっぱいに埋め尽くされた客席を一望。そこで語ったのは、ファンミーティング開催に際しての自身の心情とファンへの感謝だった。
「事務所と初めてファンミーティングに関する打ち合わせをしたとき、ファンの方々とお会いできることにワクワクした一方で、不安もあったんです。“本当に私のファンミーティングに来てくださるのかな”って。でも、こうして多くの方にお越しいただいたのを見て本当に幸せですし、私の力になります。ありがとうございます」
引退を後悔したことはなかったのか?
引退後は周囲から「引退を後悔したことはなかったんですか?」と問われることも少なくなかった。ただ、キム・ハヌルはからっとした笑顔を見せながらこう話す。
「私の今の表情を見ればわかると思いますが、引退を後悔したことは一度もありません。これまでたったの一度も、引退を後悔したり、フィールドにまた戻りたいと思ったりしたことは、本当に一度もないんです。引退した今の人生はとても幸せですよ」
キム・ハヌルは2年前、引退発表後に韓国で行った記者会見で自身のゴルフ人生を「よく耐えた」と表現した。
かつて韓国では新人賞や2年連続賞金女王に輝き、日本でもメジャー2勝含む通算6勝を積み重ねた。しかし、プロ生活の終盤はコロナという不測の事態に遭い、日韓の往来も制限され、2020年はわずか4大会のみの出場に。現役ラストシーズンとなった2021年も思うようにパフォーマンスが上がらず、優勝争いからも遠ざかるなかで、最終的に下したのがツアーから退くという決断だった。
「引退してから気が楽になったのは、決してゴルフが上手くできなくても大丈夫だということです。選手の頃は常に上手くプレーしなければならないというプレッシャーがありました。ゴルファーとして活動するからには、日々トップコンディションを維持しなければならない。それをプロになる前、アマチュア時代を含めて20年近く続けていたので、今振り返ると本当に大変だったんだなと思います。今は上手くできなくても、楽しくプレーできれば良いという心持ちで、純粋にゴルフを楽しめています」
日本で一番美味しかった食べ物は?
キム・ハヌルが引退への率直な心境を明かした後には、事前に集計したファンの質問に答えるQ&Aコーナーも行われた。理想のタイプや美肌維持の秘訣、お酒を飲む量など、プライベートに関する質問にも赤裸々に答えていたなか、特に印象的だったのが「日本で一番美味しかった食べ物はなんですか?」という質問への答えだ。
「日本のコンビニの食事が本当に恋しいんです。皆さんもご存じだと思いますが、日本のコンビニはどの食事も美味しいことで有名じゃないですか。特に絶品なのがデザート。もちろん、韓国にも美味しいデザートはたくさんありますが、日本のコンビニだとそれを100円程度の値段で買えちゃうんですよ。それに、コンビニで買うおにぎりも本当に美味しいですし…いつも日本でコンビニに行くと、ついつい色々買っちゃうんですよね」
コンビニ愛を力説するほど、キム・ハヌルにとって日本は思い入れの深い場所らしい。「上田桃子さん、原江里菜オンニ、有村智恵オンニ、柏原明日架……彼女たちだけじゃなく、今も多くの選手とインスタグラムで近況を話し合ったりして、お互いに仲良くやっています」と日本人選手との親交を明かすキム・ハヌルは、将来的には日本での活動計画も立てているという。
「現役時代に7年もプレーして思い入れもあるので、選手の頃に築いた日本のゴルフ界とのかかわりは今後も続けていきたいと思っています。今のところ日本で仕事をするきっかけはまだないですが、いつかまた来日して何かできたら良いなとは思っています」
後輩ゴルファーに伝えたいこと
そんなキム・ハヌルが今、後輩ゴルファーたちに心から伝えたいことは「気負うことなくゴルフを楽しんでもらいたい」というアドバイスだ。
「後輩たちにはただただツアー生活を楽しんでもらいたい。あの頃の私のように、苦しい思いをしてまでゴルフをする必要はないと思っています。なので、限りある現役生活をより意義深いものにして、一緒にプレーする選手と充実した時間を過ごしてほしいと伝えたいです」
最後の日本ツアー出場となった2021年10月の「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」は観客の入場制限が設けられた。そのためキム・ハヌル自身、最後に挨拶できなかったファンが多くいたことに無念さも感じていた。
ファンミーティング会場にははるばる駆け付けたという日本人ファンたちの姿も見られた。ただ、キム・ハヌルが心の底で抱くのは、今回のように日本でもファンといつか再び交流できる機会を設けたいという思いだ。
「日本で私を応援してくださった方々への感謝の気持ちは本当に忘れていません。なぜなら、皆さんは私が日本人でもないのに、本当に大きな愛をもって応援してくれたからです。今後は日本でもファンの方々と交流できる機会を設けたいと思っているので、もし今後イベントを開催することになれば、ぜひ多くの方に来ていただきたいですね」
確かに彼女の言う通り、ファンとの久しぶりの再会は感動的なものになるのは間違いない。実際、今回のファンミーティングでもそんな一幕があった。
それは、キム・ハヌルが現役時代、実際に使用したゴルフクラブやキャディバッグをプレゼントする抽選会でのこと。最後の最後にキャディバッグを当てた人物が、キム・ハヌルのことを長年応援する年配の男性ファンだったのだが、その方はつい最近まで、体を悪くして入院生活を送っていたという。
それでも、男性ファンは自身が応援するキム・ハヌルのためにと病床でチケットを購入し、開催約10日前には退院してファンミーティングに駆け付けた。思わぬ再会で涙を流すキム・ハヌルに、男性ファンは「今はもうすっかり元気ですよ!」と笑顔で言葉を届けていた。
こうして、約2時間近く行われたファンミーティングはキム・ハヌルと参加者全員の集合写真を最後に終了した。帰りには、参加者全員にプレゼントが手渡され、サイン会も行われたが、ファン一人ひとりと笑顔で対話し、グッズ一つひとつに思いを込めてサインを書く姿を見て、なぜ彼女が引退した今も多くのゴルフファンから愛されているのかがわかった。
「いつも私に変わらぬ愛を送ってくださるすべてのファンに感謝しています。ファンの方々とともに過ごせて幸せでしたし、皆さんのおかげで私がむしろ元気と癒しをいただきました」
キム・ハヌルが最後、改めて口にした感謝の言葉からは引退後も固く結ばれたファンとの繋がりを知ることができた。そんな温かい“スマイル”で溢れたファンミーティングが、いずれ日本でも実現してくれることを期待したい。
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