自らを常にアップデートし、挑戦を続けていかなければゴルフの世界で生き残っていくことはできない。ゴルフアパレルブランドの経営者、女子プロ、ティーチングプロ……。新たなステージで見せる、熱狂ゴルファーたちの三者三様の生き様に迫る。今回は、ティーチングプロの三浦桃香氏に話を伺った。
ティーチングプロという選択は、好きなゴルフを続けるため
逸材揃いの1998年度生まれの選手を女子ゴルフ界では黄金世代と呼ぶが、三浦桃香もそのひとり。そんな三浦がツアーで戦うことを断念したのは、2021年4月のことだった。最も大きな要因になったのが紫外線アレルギーで、プロゴルファーにとっては致命的ともいえるもの。とはいえプロとして戦う夢を簡単に諦められるものではなく、葛藤し、苦しみ、考え抜いて出した三浦の答えが、ティーチングプロになるという選択だった。
「もちろんプロゴルファーになることを目指してやってきたし、自分に期待していた部分もありました。プロの試合で60台を出した時は、行けるんじゃないかって。でも、夏になるとやっぱり無理でした。ジュニアの頃からゴルフを続けてきたけれど、身体がついてこなくなるとゴルフをしている自分を嫌いになっちゃいそうで。でもやっぱりゴルフが好きだし、それで選んだ道がティーチングプロです」
まず三浦が目指したのは、JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)が管轄するティーチングプロフェッショナル資格の取得だ。資格を持っていなくとも仕事としてティーチングを行うことはできるが、三浦は自らの発言に説得力を持たせるために資格にこだわった。「トーナメントで活躍した実力があれば、ティーチングの資格なんて簡単に取れる」と思われがちだが、そう簡単なことではなかった。
「私がこれまで培ってきたゴルフの基本は、あくまでも“私にとっての基本”なので、一度頭の中を全部ゼロにして学び直す必要があったんです。『自分はこれからゴルフを始める初心者なんだ!』という気持ちで勉強しました。あと、JLPGAの試験では教本の内容を50ページくらい暗記しなければいけない箇所もあって、それはとても大変でしたね。一字一句間違えられないから。自分で暗唱した声を録音して、クルマの中で流したりしてました(笑)」
そんな努力の甲斐もあって2022年度のテストに見事合格、晴れてJLPGAの会員になった。
三浦が思う、自身のティーチングプロとしての強みとは。
「まずは、データに強いことだと思います。私は高校生の頃から弾道計測器を使って練習をしてきて、球数をひたすら打って感覚を摑むというよりは、いろんなデータをもとにスイングをつくってきたタイプ。データをベースにスイングを効率よくつくる作業ができるのは、教える立場としても大きな武器になっていくと思います。
もうひとつの強みとしては、多くの練習法やドリルを私自身が経験してきたこと。学生の時、練習場に行けば大山志保さんや片山晋呉さんといった超一流のプロがいて、いろんなことを教えてくれました。この練習をするとどんな結果が出るとか頭の中に入っているので、それは教える立場として間違いなく活きます」
プロとしての活躍が期待される実力がありながら、24歳という若さで一旦ツアーを断念し、ティーチングプロになるという大きな選択を下した三浦。だが、それは言い換えればツアーを知り、プレイヤーとの距離が近い稀有なティーチングプロということでもある。
「最近は選手だった頃とは違う視点でゴルフを見るようになって、前にも増してゴルフが好きになっているんです。やっぱりゴルフ、面白いなって。私のレッスンがきっかけでゴルフを始めたり、ゴルフが好きになってくれたりする人がひとりでも増えたら、とても嬉しいです」
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