自らを常にアップデートし、挑戦を続けていかなければゴルフの世界で生き残っていくことはできない。ゴルフアパレルブランドの経営者、女子プロ、ティーチングプロ……。新たなステージで見せる、熱狂ゴルファーたちの三者三様の生き様に迫る。今回は、ゴルフアパレルブランド「アルチビオ」を牽引する中山秀人氏に話を伺った。
楽しいところには人もお金も集まる
日本のファッション界で名を成したひとりの男が今、ゴルフ界で挑戦を続けている。その名は、中山秀人。イタリア発の世界的ブランド、ディーゼルの日本本格上陸から手がけて30年。着実にブランドを成長させ、日本法人のCEOまで務め上げた人物である。その中山氏がディーゼル退社後の2018年より率いているのが、アルチビオというゴルフアパレルブランドだ。
「ディーゼルでの経験は必ず活かせるはずと思い、新たな挑戦をする決意をしたんです」
アルチビオ自体は2009年にスタートしたブランドで、レディスウェアでは既に一定の人気を獲得していたが、中山氏はそこに参画してメンズ領域の開拓に尽力。近年はメンズも好調に売り上げを伸ばしており、その辣腕ぶりを発揮している。
「まずは“いいもの”を作るために、ディテールやクオリティを徹底的に追求しています。それさえできれば、マーケティングやPRでいくらでも広げていけますから」
高い機能性と、ターフ映えするファッション性。ゴルフウェアに必須の条件を満たしながらいかに独自性も出していけるかが、競争の激しいゴルフ業界を生き抜いていくうえでの鍵となる。そのために中山氏は、社員たちに“中山イズム”を注入し、成長を促してきた。
「チェンジ、チャレンジ、エンジョイ。これは本社の壁にも大きく記してある社訓のようなもので、私も常に口にしています。自分を、会社をチェンジすることにチャレンジしながら、そのこと自体をエンジョイする」
ディーゼル時代から貫いてきた中山スタイルが浸透していくことで、社員たちの意識は間違いなく変わったそうだ。
「従業員の皆が、自分が経営者という気持ちを持って仕事に取り組めていると思います。これまでやってきたことを継続していくだけではなくて、課題や問題点に対して自分の頭で考え、アイデアを出し合って改善していく。いい循環ができています」
中山氏の社員への“愛のある無茶振り”も、もはや名物だという。
「とにかく仕事を振る。そうすると、日に日に仕事の効率が上がっていきます。もっとできるのに、自分自身で限界を決めてしまうともったいない。皆、やればできるんですよ(笑)」
仕事を自分ごととして捉え、成長できれば達成感が生まれ、自然と楽しさも湧く。
「僕は社員から上がってきた意見に対してNOを言うことはなくて、まずはやらせてみる。やりたいことをやるのが一番いいし、何より楽しいでしょう」
結果、現場のアイデアはどんどん採用され、事業にも活気が生まれることで新たなアイデアも湧くようになる。また、アルチビオはデジタルネイティブ世代にもSNSやインフルエンサーを活用してリーチし、若者の間でも着実にその人気を伸ばしている。
「働いている自分たち自身が楽しまないと、ユーザーも楽しめないと思うんです。“アルチビオはいつも面白いことをやっている”と認識してもらう。楽しいところには、人もお金も集まってくるんです」
中山氏のハッピーオーラに溢れたアルチビオの快進撃は止まらない。