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GOLF

2023.07.12

ゴルフ史上最高の鉄人・65歳ランガー、パワーのないアマチュアが盗むべきパットと戦略

偉業を成し遂げた65歳のプロゴルファー、ベルンハルト・ランガーに学ぶパッティングとゴルフ戦略をティーチングプロ・吉田洋一郎が解説する。

写真:AP/アフロ

全米シニアツアー最多の46勝を達成したベルンハルト・ランガー

ゴルフ史上最高の鉄人と言ってもいいだろう。

65歳のベルンハルト・ランガーが2023年7月2日、米チャンピオンズツアー(シニアツアー)のメジャー大会「全米シニアオープン選手権」で優勝し、米シニアツアー歴代最多勝利記録を更新する46勝目を挙げた。

シニアメジャー12勝目は歴代最多となり、自身が持つツアー優勝の最年長記録も65歳10ヵ月5日に更新。全米シニアオープンの最年長優勝記録も大幅に更新した。ここ数年の年齢を感じさせない活躍から、いずれ歴代最多勝利記録を更新するだろうとは思っていたが、まさか難易度の高いメジャー大会で優勝するとは思わなかった。

私はCSゴルフ専門チャンネル「ゴルフネットワーク」で全米シニアオープンの初日、2日目の解説を行い、初日に独自のパワーランキングを発表したのだが、その際にランガーをランキングに入れるか迷った。最近ランガーが勝利した試合は、距離の短いコースで開催されたものが多く、距離が長くラフが深いメジャーのタフなセッティングでは65歳のランガーが結果を出すのは厳しいと考えたためだ。だが、メジャーの舞台で新記録の46勝目が見たいという期待枠で最下位の10位に名前を入れた。百戦錬磨の鉄人は見事に事前の予想を裏切り、タフなセッティングを味方につけるクレバーな試合運びで勝利を手繰り寄せた。

パワーがないアマチュアにも参考になる戦い方

今回全米シニアオープンが開催されたセントリーワールド(米ウィスコンシン州・7218ヤード・パー71)のコースセッティングは、450ヤード以上のパー4が5つと距離が長く、ボールがスッポリ埋まるほどの深いラフと、13フィートの速いグリーンによって選手たちはスコアメイクに苦しんだ。この大会で今シーズンのメジャー3連勝を目指していたスティーブ・ストリッカーも深いラフにつかまり、グリーンを狙った150ヤードのショットが50ヤードしか飛ばず、珍しく怒りをあらわにする場面もあった。初日の平均スコアが77で、カットラインが9オーバーと言えば、その難しさが伝わるだろう。

多くの選手が苦戦する中で、ランガーは飛距離を捨て、徹底してフェアウェイをキープする戦略に徹した。長い450ヤード以上のパー4でも3番ウッドで打つなど、絶対にラフには入れないことだけを考えてプレーしていたのだ。その分、セカンドでは長い距離が残るが、年齢的に飛距離が出なくなったため、普段のトーナメントでも直ドラやフェアウェイウッドで2打目を打っていたことが功を奏した。飛距離が出る選手がドライバーを手にしてラフにつかまり苦戦するなか、ランガーは200ヤード以上セカンドショットを確実にグリーンにのせ続けた。

実際、ランガーは試合を振り返って「鍵はフェアウェイに打つことだった。ティーショットで3番ウッドを選ぶことが多く、セカンドショットでも3番ウッドなどの長いクラブでグリーンを狙わなければならなかった。しかし、ラフからウェッジで出すだけのショットになるよりははるかにいい」と語った。

結局、長いパー4でパーをセーブし、短いパー4とパー5でバーディーを狙う戦略を取ったことで、経験と技が生きる展開となった。最終日には、パーで十分と計算していた1番460ヤードと2番506ヤードの長いパー4で連続バーディーを奪取し、序盤にボーナスを獲得して後続との差を広げた。中盤では一時7打差の大量リードとなり、上がりは3連続ボギーとなったものの危なげなく勝利をつかんだ。ランガーの今大会の戦いぶりは、パワーがなくても、戦略と正確さでコースを攻略したという点で、アマチュアにも大いに参考になる戦いぶりではなかっただろうか。

ストイックな姿勢が長く活躍する秘訣

ランガーは15歳でプロに転向した後、主に欧州ツアーで活躍した。1985年のマスターズではドイツ人として初のメジャー優勝を果たし、’93年のマスターズでも2度目の優勝を果たした。’86年から始まった世界ランキングでは初代1位にもなっている。

50歳となり、シニアツアーに参戦した後は別格の強さを見せて優勝を重ね、2023年2月の「チャブクラシック」で、ついにヘール・アーウィンが持っていたシニア最多勝記録の45勝に並んだ。

ランガーの強さの理由はストイックにゴルフに取り組む姿勢だ。他の選手が休む月曜日にも練習のためにコースにあらわれ、ゴルフ場にいないときはジムで体を動かしているという。65歳の今も体は引き締まり、若い頃と体型は変わらない。その取り組みは数字にも表れており、今シーズンはパーオン率約79%で2位と、ショットの精度が非常に高い。このショット力が全米シニアオープンの難コースを制した原動力となったのは間違いない。

長きにわたり心技体をトップコンディションで保つことは想像以上に難しい。シニア入りしてから約16年間毎年勝ち星を重ね、46勝という大記録を打ち立てたランガーの偉業には脱帽するばかりだ。

ちなみに、チャンピオンズの試合を実況しているCSゴルフ専門チャンネル「ゴルフネットワーク」で、ランガーの最多勝の瞬間を実況した横山和正さんは、ランガーのシニア1勝目も担当していたという。日本のゴルフ実況のレジェンドである横山さんがランガーの節目の試合を担当したのも何かの縁。横山さんも感慨深かったことだろう。

ランガーから学ぶ長尺パターのメリット

ランガーは長尺パターを愛用していることで知られている。体の一部を支点にするアンカリングが禁止された後も変わらず長尺パターを使用している。

長尺パターにはストロークをする際、振り子の動きを再現しやすいというメリットがある。アンカリングの禁止によって、胸にグリップエンドを押し当ててストロークの支点にすることはできなくなったが、胸に押し当てずに支点を作ればストロークの再現性を高められる。

普段、長尺パターを使っていない人も、長尺パターを使って練習をすると、支点を作って振り子のようにパターを動かす感覚が身につけられるので練習に取り入れてみてほしい。

長尺パターを使った練習に関しては、長尺パターを持っている人はそのまま使うことができるが、持っていない人はかわりにドライバーでも練習することができる。

長尺パターの持ち方は、まず左手でグリップエンド付近を持ち、胸の前あたりでグリップエンドを固定してストロークの支点にする。このとき、胸に押し当てると「アンカリング」の違反になるので、グリップエンドや手を体に当てて固定してはいけないが、練習では胸に押し当ててもかまわない。

左手でグリップエンドを固定したら、右手はシャフトの真ん中あたりに軽く添えるようにセットする。ストローク中に気を付けてほしいのは、右手でパターを動かすわけではないということだ。胸を中心とする上半身の動きに合わせてパターが振り子のように左右に動くようにストロークをしてほしい。胸の支点から伸びたパターが、上半身の動きとともに動くイメージでパターを動かすようにしよう。

上半身を使ってパターを振り子のように動かせるようになれば、パッティングの再現性が高まるようになる。ランガーの長尺を参考にしてパッティングを改善してほしい。

【動画レッスン】

TEXT=吉田洋一郎

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