今回はピッチショットについて。連載【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】とは……
コンパクトトップで正確なショットを放つ
2023年のマスターズを制したジョン・ラームの特徴は、コンパクトなトップ・オブ・スイングだ。身長188センチ、99キロの大柄な体とは対照的に、小さなスイングから放つ正確なショットを武器にしている。
アイアンショットは特にコンパクトで、左腕が地面と平行になるあたりまでクラブを上げると、切り返しを行ってダウンスイング動作に入る。恵まれた体格を生かしてダイナミックなスイングをすれば、ドライバーショットで軽く350ヤードは飛ぶと思うが、生まれつきの体の特徴で大きなスイングができないという。
数年前に本人がインタビューで語ったところによると、ラームは生まれたとき、右脚が内側を向いていたため、生後すぐに足首を矯正する処置を受け、ギブスで足首を固定しなければならなかった。
この影響で、右脚が左脚よりやや短く、右足首の可動域も狭いという。このため、子供の頃から体に合ったスイングを続け、今のようにコンパクトながら、効率的で力強いスイングを完成させた。ラームがコンパクトなスイングから300ヤードのドライバーショットを打てるのは、恵まれた体格もさることながら、長年の努力の賜物だといえるだろう。
こうした背景のあるジョン・ラームのスイングだが、コンパクトなスイングは正確性を高めるという点で、アマチュアも参考になるはずだ。飛距離は出るが正確性を重視したいという人であれば、ドライバーもコンパクトなスイングにするといいだろう。
一方で飛距離に自信がないという人がコンパクトなスイングをすると、飛距離が落ちてしまう可能性があるのでお勧めできない。
しかし、短い距離を打つピッチショットであれば、どのようなタイプのゴルファーでもラームのスイングエッセンスを取り入れることが可能だ。実際にラームのアイアンショットのスイングは、非常にトップがコンパクトなため、アマチュアゴルファーのピッチショットと振り幅が大きく変わらない。
100ヤード以内の距離で正確なショットを打ちたいと思っている人は、ラームのスイングを真似してみてほしい。
ピッチショットは軸とタイミングに気をつける
最近はやや中心軸で構えるようになってきたが、ラームはフルスイングのアドレスで左足に体重をかけて左軸で構える傾向がある。左足に体重をかけることで、バックスイングをコンパクトにすることができ、切り返し動作を素早く行うことができる。
ピッチショットはフルスイングが小さくなっただけと思っている人もいるが、軸と切り返しのタイミングがフルスイングと異なる。ラームのように左軸で構え、適切なタイミングで切り返すことが重要になる。
ピッチショットでラームのようにコンパクトにスイングするには、左足に7割程度の体重をかけ、左サイドを中心にしてスイングをするようにしてほしい。左足に体重をかけ続けることで、バックスイングで上がるクラブと左サイドが拮抗してトップの位置がコンパクトになる。
さらに、ダウンスイングで右から左への体重移動をする必要がないため、スムーズに左足に加重が可能となり再現性が高まる。
ピッチショットはフルスイングと異なりクラブを振り上げる位置を自分で決めなければいけないため、切り返しのタイミングが難しい。ラームは速いテンポでスイングするが、コンパクトトップのスイングではトップで間を作る時間がないため、素早く切り返し動作を行わなければいけない。
ピッチショットを打つ場合も振り幅が小さいため、バックスイングを上げ始めたらすぐに切り返し動作を行って左足に加重する必要がある。バックスイングを左腕が地面と平行の位置まで上げるピッチショットは、腰あたりまでクラブを上げたら、切り返し動作に入るようにするとちょうどいいタイミングになるだろう。
フルスイングと同じようにゆっくりスイングをしていると、バックスイングが大きくなりすぎてしまうので気を付けてほしい。
バックスイングが大きくなりすぎると、減速しながらクラブを下ろすこととなり、緩んだインパクトになる可能性がある。バックスイングの途中で切り返し動作を行うのは慣れないうちは難しいかもしれないが、しっかり練習して振り幅をコンパクトにする感覚を身に付けよう。
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連載【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】とは……
世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子によるゴルフレッスン。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。