世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム113回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
アプローチが苦手になる理由とは
先日、一緒にプレーしたアマチュアに「実は、アプローチが怖くてしかたがないんです。イップスだと思います」と打ち明けられた。
確かに「アプローチが苦手だ」というアマチュアは多い。そのようなアマチュアはザックリしたかと思えば、次はトップしてボールは目標をはるか超えていく。毎回、ダフりやホームランでは、アプローチが怖くなるのも当然だろう。そうした恐怖心から、アプローチが上手くいかないのはメンタルが原因だと思っている人が多い。いわゆる、「イップスで手が動かない」状態だというわけだ。
しかし、そのようなアマチュアのアプローチショットをよく見てみると、ほとんどの場合、原因はメンタルではなく技術面にある。
そのアマチュアはクラブヘッドをボールにクリーンに当てることばかり考え、右手を使って打ち込むようにボールを打っていた。そのため、クラブの入射角が鋭角になり、アウトサイドインのカット軌道になっていた。アプローチをダウンブローに打つことは問題ないように思えるが、そのアマチュアの場合はフェースを閉じ気味に使っていたこともあり、リーディングエッジが先行してインパクトを迎えていた。その結果、ボールの手前だとリーディングエッジが地面に刺さってダフリ、ボールにヘッドが直接当たればトップというように、少しの打点の狂いが大きなミスになっていた。
アプローチが苦手なアマチュアは、このように「点」でボールをとらえようとする傾向がある。ダフったり、トップしないように、インパクトでボールをクリーンにとらえようとして、必要以上に上から打ち込んでボールをとらえようとするのだ。更に、インパクトの強弱で距離を合わせようとすると、より一層この傾向が強くなる。インパクトの強弱で距離を合わせると、クラブをボールに当てることばかり考え、入射角が鋭角になったり、カット軌道になりやすい。
ゾーンでボールをとらえればアプローチは安定する
アプローチショットを安定させるには、「点」ではなく、「ゾーン」でボールをとらえる必要がある。加えて、インパクトの強弱ではなく、振り幅で距離感を合わせることが大切になる。軌道の中でボールをとらえる「ゾーンインパクト」のために、利き手ではない左手でスイングを主導するといい。利き手の右手だと「インパクトを作る」動きが入りやすいが、不器用な左手だとボールに当てにいく動作が出にくいので軌道も安定しやすい。その結果、入射角が緩やかになり、トップやザックリも大幅に減っていくはずだ。
軌道が安定してきたら、スイングのスピードや強さを一定にして、振り幅だけを変えるようにすれば、距離のコントロールもできるようになる。
上記を実現するために、私は「アプローチが苦手だ」というアマチュアに3つのアドバイスをした。
1.フェースを開いてバンスを使えるように構える。
2.左手を意識し、フォロースルーを大きくしてインサイドアウトに振り抜く。
3.鋭角に打ち込まず、ボールの手前からバンスを滑らせるイメージで打つ。
その3点を意識すると、最初は慣れない動きに違和感があったようだが、徐々に軌道と打点が安定し、本人も手ごたえを感じていた。その後のラウンドでは、寄せワンを連発し、チップインまで決めてしまった。今までイップスを疑うほどウィークポイントだったアプローチが、これからはスコアに貢献する大きな武器になりそうだと喜んでいた。
苦手だと思っていたプレーも、基本を見直すだけで得意になり、自信をもってプレーできるようになることもある。苦手意識を持つ前に、一度基本に立ち返って練習してみよう。