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FASHION

2024.06.26

誕生100周年「ペンドルトン」のウールシャツが愛され続ける理由

1924年の誕生より、100周年を迎えたペンドルトンのウールシャツ。その歴史的傑作にして超ロングセラーはいかにして生み出されたのか。来日した経営陣に、時代の変化を捉えたモノづくりについて語ってもらった。

現代でこそ際立つ100年目の存在感

情報化社会の発展により、モノが生まれては消えるサイクルが日増しに早まっているように感じる現在。その象徴がファッションだが、そんな流行があっという間に消費される分野にあって、100年間つくり続けられているモノがある。そのごく稀なモノのひとつが、米国オレゴン州にて1863年に創業したペンドルトンが、1924年から現代まで製造し続けているウールシャツである。

未脱脂のままの原毛により、保温性や撥水性、抗菌・防臭性といったウールが本来備える機能を最大限に引き出せるヴァージンウールのみを厳選。鮮やかな色柄に染め上げた、自社製ウール生地で仕立てるペンドルトンのウールシャツ。誕生以来、デザインもほぼ変わることなく、1世紀にもわたりつくり続けられてきたのはなぜなのか。ウールシャツ誕生100周年を機に来日した、ジョン・ビショップCEOとバイスプレジデントのボブ・クリストノックに訊いた。

「品質はカスタマーとの信頼を築くためにあるのです」

―― 2024年でペンドルトンのウールシャツは誕生100周年を迎えました。この偉業をどう捉えていますか?

ジョン この100年間製造し続けてきたことによって、弊社は「ウールシャツ」という衣料を世界に定義付けられたのではないかと自負しています。それはスタイルだけでなく、着心地やクラフツマンシップにおいてもいえることです。だからこそ、多くの方に“マスターピース”と称賛していただき、今日までつくり続けてこられたのでしょう。

ボブ 弊社のウールシャツは、これまで購入していただいた方々の人生の一部になってきました。いまでは祖父や曽祖父の時代から受け継いだシャツを着ている方もおり、ファミリーに代々受け継がれるものにもなっています。また、1960年代の西海岸で流行したサーフカルチャーのユニフォームとなり、現在も南カリフォルニアのローライダーカルチャーに欠かせない服となっているように、さまざまなカルチャーを体現するアイテムにもなってきました。このようにウールシャツが人々の人生や歴史、カルチャーの一部となれたことは、とても喜ばしく誇りに思っています。

ペンドルトンの7代目CEOであるジョン・ビショップ。創業ファミリーの一員であり、幼少の頃よりファクトリーで家業を手伝ってきたそう。

―― ペンドルトンがウールシャツを100年つくり続けられた秘訣はなんでしょうか?

ジョン カスタマーと真摯に向き合い、そのニーズに応えてきたからでしょう。

ボブ その通り。私たちは100年間、高品質なヴァージンウールにこだわってきたことをはじめ、これまで品質に妥協することはありませんでした。それはカスタマーとの信頼を築くために他なりません。私たちが掲げるスローガン“WARRANT TO BE A PENDLETON(ペンドルトンであることを保証します)”は、そんな私たちのカスタマーに対する責任の表明でもあるのです。また、ペンドルトンは創業から今日までずっと小規模なファミリー企業ですが、それもウールシャツをつくり続けられた要因のひとつでしょう。大きな営利企業のように、売れなければやめるとはならず、ファミリーのなかで受け継がれてきたから続いたのです。

バイスプレジデントのボブ・クリストノックは、ジョンCEOの右腕的な存在。多くの社員を統率し、カスタマーとの最終的な接点も担っているという。

「弊社のウールシャツは他と一線を画すユニークな存在」

―― 現在でもコットン製に比べ、ウール製のシャツは珍しいですが、ペンドルトンはウールシャツをどう定義付けたのでしょうか?

ジョン 簡単にいうと、耐久性や保温性、手入れのしやすさなど、ウールが備える高い機能性をファッションアイテムへ落とし込んだものが弊社のウールシャツです。デザイン面においても、ウールは染めやすく多彩な色を表現できるのも特徴であり、カラフルな合成繊維の製品が溢れている現在でも、けっして見劣りすることはありません。とにかく他とは一線を画す、ユニークな存在だと思っています。

―― ヴィンテージショップに陳列されているペンドルトンのウールシャツを見るにつけ、どんな時代も変わらないクオリティを維持してきたことが分かりますが、逆に変えてきたことはありますか?

ジョン ウールシャツの製法は100年間ほとんど変わっていませんが、技術は着実に進化してきました。例えばスワッチ(生地見本の小片)ひとつをつくるにしても、かつてはすべてが手づくりでしたが、現在はコンピュータで簡単につくれ、配色のシミュレーションなども行えます。ウールを染める染料なども進化しており、より美しく染まるようになっただけでなく、環境にも優しくなりました。ウール生地の生産に関しても、原毛から紡績、染め、織りといった工程は変わりませんが、それぞれに用いる機械は最新のものを導入しているのです。

ボブ そうした新しい機器や最新技術により、生産効率が高まっただけでなく、ひと昔前に比べたら環境への負荷が格段に少なくなっています。とくに製造工程で不可欠な水や電力の消費量も、1970年代とは隔世の感があるほど減っており、サステナブルな面も向上したといえるのではないでしょうか。

時代毎のベストが生んだロングセラー

アウトドアでの活動にもへこたれないクオリティを備え、多少の雨なら弾き返してくれる。そして薄手で軽量ながらも抜群に暖かく、柔軟で動きやすい。しかも鮮やかな色柄とベーシックなデザインは、着る人の性別や年齢を選ばず、あらゆるスタイルに溶け込む。どんなに時代が変わろうとも、こうした高い機能と普遍的なデザインを実直に追求し続けてきたからこそ、ペンドルトンのウールシャツは100年もの長きにわたり、世界中の人々に愛されてきたのだ。

だが、それは時代の変化に無縁というわけではないことは、ふたりの言葉からも明らかである。クオリティや生産性を高めるべく、最新設備を積極的に導入し、むしろ時代の変化を敏感に捉えてきたからこそ、ファッションという移ろいやすい分野にありながらも、次の100年に備えた持続可能性をも携えた、超ロングセラーアイテムを生み出せたに違いない。

ペンドルトンを支えるジョンCEOとボブバイスプレジデント。ふたりのフランクで気さくな人柄は、ペンドルトンの親しみやすいイメージにも繋がる。

問い合わせ
美濃屋 TEL:03-6804-2176

TEXT=竹石安宏 EDIT=大内康行

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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