ファッションこそ、食を楽しむ重要なエッセンス。DDグループの松村厚久氏は「どこへ、何を着て行くのか」。本人私物で登場する連載がスタート!
ドラキュラ伯爵の館には真っ赤なタキシードで参上
ここが銀座の一等地だと誰が想像できるだろう。グッと落とした照明、真紅のカーテン、妖しげに揺れるキャンドル……。そこに颯爽と登場したのが、1店舗ごとに異なる業態の店づくりをコンセプトに、全国に300店舗以上展開しているダイヤモンドダイニング(DD)創業者である松村厚久氏だ。
彼が第1号店となるこの『VAMPIRE CAFE』を手がけたのは2001年。開店から約四半世紀が経とうとしている、記念すべき店だ。
「当時はコンセプチュアルなレストランが流行っていて、なかでもとびきり象徴的な店を出したいと気合いが入っていました。そんな時、アメリカのオーランドにあるお化け屋敷に入ったらすごくよくできていて、一緒に入ったペアが失神してしまったほど。ここまで人を驚かす空間がつくれたらどんなに楽しいだろうと考え、ドラキュラ伯爵の館をイメージしたレストランに決めたんです。
さらに第1号店ならば、マクドナルド然りスターバックス然り、出店地は銀座しかない、と。今でも訪れるたび『人と違うことを究める』という自分の哲学に立ち返ることができる、大切な場所です」
この場にふさわしいファッションとして松村氏が選んだのは、なんと真っ赤なタキシード。ベロアとサテンの美しい光沢が、重厚感のある店のムードと見事にマッチしている。
「原点ともいえるメモリアルな場所だから、フォーマルなムードを演出したくて、この1着をセレクトしました。タキシードは20着ほど持っていて、エレガントに仕立てることもあれば、デニムと合わせてドレスダウンさせることも。同席する人に敬意を払いつつ、個性を出すことも可能だから、意外と便利なアイテムです。
僕は人と同じスタイルを嫌う人間。だからこそファッションも飲食店づくりも、目指すは“唯一無二”。そこだけは譲れないポイントです」