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2024.08.09

役所広司『PERFECT DAYS』、名探偵コナン…韓国で話題になる日本映画のマーケティング法とは

今、韓国で『PERFECT DAYS』や『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』など、日本の映画がヒットしているという。ビジネスパーソンとしてキャッチアップしておきたい。

映画『PERFECT DAYS』

韓国で注目される日本映画

ディズニー&ピクサー最新作『インサイド・ヘッド2』に、「怪盗グルー」シリーズ7年ぶりの新作『怪盗グルーのミニオン超変身』、マーベルの人気シリーズ『デッドプール3』…。

夏休みの到来に合わせて封切られた洋画たちが劇場を賑わせている。

それはお隣の韓国も同じ。前出の洋画たちが映画ランキング上位にずらりと並び、夏の繁忙期真っ只中という感じだが、なかでも、映画ファンから熱視線を浴びている日本発の作品がある。

今、韓国で上映中の『PERFECT DAYS』と、劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』がそれだ。

ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースと役所広司がタッグを組んだ『PERFECT DAYS』は、韓国で2024年7月3日に公開され、自主・芸術映画部門のランキングで1位をキープしている。

公開29日目となる7月31日時点で観客動員7.2万人、興行収益6億7541万ウォン(約6,754万円)を突破した。

注目したいのは観客層だ。

輸入・配給会社のt.castによると、前売り券を購入した年齢層は20代から50代まで満遍なく分散しており、男女比もほぼ均等という。

韓国の最大手ポータルサイト「NAVER」が集計した『PERFECT DAYS』の観客の性別分析を見ても、男性58%、女性42%とほぼ半々。

観客からは10点中8.67と評価が高く、レビュー欄には「今年入って最も感情を揺さぶられた映画」「エンディングの平山の複雑な表情、それこそが人生」「孤独で見窄らしく見える私の人生も美しく照らしてくれた映画」といった称賛が寄せられている。

2024年7月20日には、劇中で主人公のトイレ清掃員・平山を演じた役所広司が訪韓した。なんと2009年の釜山国際映画祭以来15年ぶりという。

その役所広司を迎えて開催された『PERFECT DAYS』の上映会&トークイベントには、韓国俳優ソン・ガンホも登壇した。

是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』で第75回カンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を受賞したソン・ガンホと、その翌年のカンヌで最優秀男優賞に輝いた役所広司。

外国人監督との作品で“カンヌ俳優”になったという共通点を持つ彼らは、ユーモアを交えながら互いに賛辞を送り合い、『PERFECT DAYS』への愛情を語った。

この『PERFECT DAYS』が日本から来た最旬の実力派インディーズバンドのような存在だとすれば、劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は確固たるファン層が存在する人気の長寿アイドルといったところだろう。

7月17日の公開から15日目(7月31日時点)にして観客動員60万人、興行収益59億3200万ウォン(約5億9320万円)を突破している。

期待の劇場版「名探偵コナン」シリーズの新作

毎年恒例になっている劇場版『名探偵コナン』の最新作だが、今回の劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』には特に期待と注目が注がれていた。

というのも、興行収入150.5億円を記録し、邦画史上10本目となる150億円突破という日本での快挙があるうえに、2023年公開された劇場版シリーズの第26作目『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が韓国では観客動員80万1511人、興行収入77億突破の大ヒットを記録しているからだ。

そもそも、韓国では約40〜50万人という固定ファンがいると言われる『名探偵コナン』シリーズ。しかし、コロナ禍の2021年に公開された劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』は観客動員数が23万人と半分以下に減少してしまった。

そこで、韓国で配給を担当するCJ ENMは「ツートラック(Two Tracks)戦略」を展開し始める。従来のファンはもちろんのこと、ファンではない観客を呼び込むための、より大胆で積極的なマーケティングを行った。

その努力が実り、2023年の劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影』は80万1,511人の観客を動員することができたのだ。

それゆえに今年もファンや業界の期待に応えるべく、「第26回富川アニメーション国際映画祭」とのコラボによる劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』のポップアップストアや、地下鉄駅のLED広告、30周年記念展示会、コラボカフェなどコナン絡みで数多くのイベントが実施されている。

ファンの間では、まさに人気アイドルが来韓したかのような盛り上がり具合だ。

ハリウッド・ムービーや韓国映画が威勢を振るうなか、ニッチ層に刺さっている日本発の映画作品。もしかしたらそこにも、新たなビジネスチャンスが潜んでいるかもしれない。

■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。

TEXT=李ハナ(ピッチコミュニケーションズ)

PHOTOGRAPH=スポーツコリア/アフロ

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