世界中のファンを魅了し、華やかな印象のあるK-POPアイドル。しかし最近、彼らの行為が大炎上することがある。ビジネスパーソンとしてキャッチアップしておきたい。連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
スタバのコーヒーを飲んで炎上
世界を股にかけた活躍の陰には、想像を超えた苦難もあるようだ。K-POPアイドルへの“厳しい視線”が絶えない。
2023年末のTBS系『第65回輝く! 日本レコード大賞』で「特別国際音楽賞」を受賞したENHYPEN(エンハイプン)。メンバーのJAKE(ジェイク)が最近、ライブ配信中にスターバックスコーヒーのプラスチックカップに入ったコーヒーを飲んで炎上した。
一部の海外ファンが怒った様子で「スターバックスのコーヒーを飲まないで!」と“お叱り”コメントを連投。批判が殺到したのだ。
そのコメントを見たJAKEはコーヒーをコップに移してから配信を続けたが、その後、「スターバックスのボイコットに参加してほしい」と訴える海外ファンの書き込みで状況を理解。
JAKEは「教えてくれてありがとう。僕がミスをした。二度とこういうことがないようにする。申し訳ない」と謝罪している。
イスラエルとパレスチナのイスラム組織・ハマスの戦争が勃発した後、米スターバックスコーヒーの労働組合はパレスチナへの連帯を表明。ところが、スターバックスコーヒーのラクスマン・ナラシムハン最高経営責任者(CEO)が同社労働組合を提訴したため、世界各地ではスターバックスを“親イスラエル企業”とみなし、ボイコットするよう呼び掛けられている。
このような国際情勢を知らずに何気なくコーヒーを飲んだJAKEを見て、批判が殺到し、なかには悪質なコメントを寄せる人もいた。
一部の海外ネット民はスターバックス・コリアとコラボをしていたBLACKPINKのほか、SEVENTEEN、aespa、Red VelvetらK-POPアイドルたちが過去にスターバックスを利用していたとして非難の声をあげている。
ライブ配信での発言を1年越しに謝罪
ライブ配信中にポロっと言った一言で1年間ずっと悪質コメントに悩まされ、結局謝罪文を掲載したアイドルもいる。『第74回NHK紅白歌合戦』にも出場した、NewJeansのミンジだ。
2023年1月5日、韓国の某人気YouTubeチャンネルのライブ配信で「偏食が激しく、いまだにカルグクスとビビン麺を食べたことがなさそうだ」という話題を振られたミンジは、「カルグクスって何?」と一人つぶやいた。
それをキャッチした視聴者からは「?」というコメントも寄せられたが、司会役の出演者が次の話題を振ったため、その場ではミンジのコメントは拾われなかった。
カルグクスとは、韓国式手打ちうどんのような大衆料理で、起源は朝鮮時代まで遡るとされる。韓国にはカルグクス専門店も多く、学校の給食にも出るほどポピュラーな料理だ。
だからこそ「カルグクスを食べたことがない韓国人」というのは、「うどんを食べたことがない日本人」と等しいほど極稀なケースだと思われるが、好みや生活は人それぞれ。
「食べたことがない、知らない」人もこの世には存在するという多様性を認める時代だが、ネット民たちは容赦しない。
この問題はその後、一部のネット民が「カルグクスって何?」というミンジの姿を切り抜いたショート動画を各種SNSに広めたことで大きくなっていく。
その動画には「韓国人なのにカルグクスを知らないと言うのは絶対嘘だ、ありえない」という意図があったので、動画が広まるとともにミンジをめぐってさまざまな憶測が飛び交ったのだ。
ミンジはカルグクスが巻き起こした“嘘の発言疑惑”に約1年間も苛まれ、2024年1月2日のライブ配信で「私もう、食べたことないっていう発言はやめる。私がカルグクス(の存在)を本当に知らないとでも? よく考えてみてください」と溜まったもどかしさを吐露。
すると、この発言に対しても一部のネット民は「なんて態度だ」と騒ぎ、結局、ライブ配信から2週間経った2024年1月16日、ミンジはカルグクス騒動に終止符を打つと言わんばかりに公式謝罪文を掲載した。
騒動の火種となった「カルグクスって何?」という発言について、ミンジはこう説明している。
「私は偏食が激しく、カルグクスを食べたことがないのでカルグクスの種類と味を考えていたところ、思わず独り言を言ってしまった」
ライブ配信での態度については、「もどかしさを感じて釈明したが、未熟な態度でまた失望させてしまったことを反省している。この件を通じて自分の一言の責任に対して改めて考えさせられ、勉強になった。ミスを繰り返さないようにもっと気をつけ、注意する」と謝った。
華やかなパフォーマンスで世界を魅了しているK-POPアイドル。彼らの一挙一頭足に歓喜するファンがいる一方、隙あらば炎上させようと目を光らせる人も少なくない。
厳しい物差しを突きつけられ、批判を浴び、責められた末にこの世を去ったアイドルもいた。
JAKEやミンジのような出来事があるたびに、K-POPアイドルは気が休まらない職業だなとつくづく思う。頑張って人々を楽しませる彼らを、温かくゆるやかに見守りたい。
■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。
■連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
ドラマ『愛の不時着』、映画『パラサイト』、音楽ではBTSの世界的活躍など、韓国エンタメの評価は高い。かつて「韓流」といえば女性層への影響力が強い印象だったが、今やビジネスパーソンもこの動向を見逃してはならない。本連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」では、仕事でもプライベートでも使える韓国エンタメ情報を紹介する。